研究課題/領域番号 |
22K08515
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54010:血液および腫瘍内科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
李 ヨキン 日本大学, 医学部, 准教授 (30599048)
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研究分担者 |
三角 浩司 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (00442682)
野地 智法 東北大学, 農学研究科, 教授 (10708001)
大西 彰 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (30414890)
板野 理 国際医療福祉大学, 医学部, 主任教授 (90265827)
淵本 大一郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, グループ長補佐 (10343998)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 大動物実験 / ヒト化動物 / 造血幹細胞 / Humanized Pig |
研究開始時の研究の概要 |
ブタ体内にヒト細胞を生着させ、部分的にヒトの生体機能を模倣するHumanized pigの技術が確立すれば、重要な医学研究ツールとなることが期待できる。本研究は、胎児の肝臓にヒト臍帯血細胞を移植した重度免疫不全であるIL2rg欠損ブタの骨髄や末梢血中に検出されるヒト血液細胞のフェノタイプや免疫組織の発達の程度を経時的に解析する。そして移植条件等を最適化することにより、ヒト血液細胞が高いキメラ率で長期間生着・分化し、ヒトの造血機能や免疫機能を有するHumanized pigの作出を試みる。これらの検討を基に医学研究ツールとして利用可能な造血・免疫系Humanized pig作出法の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
2ヶ月齢の雌IL2rgヘテロノックアウトブタの農研機構から医学部に搬入し飼育した。8ヶ月齢から毎日外陰部から発情状況を観察し、初めての発情を確認した後、2回目また3回目の発情期に合わせて野生型ブタの精子を用い、連続3日から5日間人工授精を実施した。人工授精後約30日で超音波を用いて妊娠の有無を確認し、妊娠6週齢に深麻酔下で開腹し、子宮の上から超音波を用いて胎児を観察しながら、すべての胎児の肝臓に解凍した3x10^5/100ul/頭のヒト臍帯血細胞を注入した。誕生した仔ブタの遺伝子型を確認後、免疫不全ブタ群(IL2rg欠損仔ブタ)と野生型ブタ群に分け、経時的に血液を採取した。解剖の際には、血液、骨髄、肝臓、脾臓、回腸末端、胸腺、リンパ節などの組織を採取し、フローサイトメトリーを用いてヒト由来細胞を検出した。さらに、各内臓を固定し、免疫染色を用いてヒト由来細胞の分布などを観察した。 FACSの解析では、末梢血と骨髄細胞においてヒト由来細胞の割合は多く見られなかった。一方、1ヶ月齢の脾臓にはヒト由来細胞のキメラ率が高く見られたものの、2ヶ月齢になるとキメラ率が減少した。2ヶ月齢の免疫不全ブタの胸腺においてヒト由来細胞のキメラ率は高く、特にCD45 +細胞の約36%はヒト由来細胞であることが判明した。組織学的には、特に肝臓、脾臓、肺臓において、ヒト由来細胞はリンパ濾胞のようなクラスター形成していることが観察された。また胸腺組織には数多くのヒト由来細胞が散在し、またクラスターとして生着・増殖していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、研究分担者から譲り受けた2から3ヶ月齢のIL2rgヘテロノックアウトメスブタを当施設で飼育した。生殖器の変化、食欲の変化などの発情兆候が確認されると、野生型ブタの精子を用いて3から5日間の期間にわたり連続して人工授精を施行した。その後、超音波検査により30日目にすべてのブタの妊娠が確認された。妊娠6週目には、麻酔を導入後に開腹し、子宮の上から超音波検査で観察しながら、すべての胎児の肝臓へヒト臍帯血単核細胞を移植する処置を実施した。この一連の手術と臍帯血細胞の準備はすべて順調に進み、成功を収めた。また、1頭の雌ブタは妊娠116日に至っても分娩兆候が見られなかったため、プラネート(PGF2αの類縁体)2mlを連続2日間にわたって筋肉内注射し、その後無事に分娩が行われた。分娩後、生まれた仔豚の遺伝子型判定で免疫不全仔豚が確認された。これらの仔豚に対し経時的に血液採取を行い、また解剖の際、骨髄や内臓などを採取し、FACSおよび組織学的な解析を実施した。この一連のブタの飼育、人工授精、妊娠検定、細胞の準備、細胞移植手術、そして出産までのプロセスは計画通りに進行し、全体的に概ね順調に進捗していた。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度にヒト臍帯血単核細胞(3x10^5/頭、ヒト臍帯血単核細胞移植群)、または臍帯血単核細胞から分離したCD34陽性細胞(3x10^5/頭、ヒトCD34陽性細胞移植群)を用いて胎児の肝臓に移植した。わずか600個(推定)の造血幹細胞を含むヒト臍帯血単核細胞移植群は、免疫不全ブタの免疫組織においてヒト由来細胞の定着と増殖著しく、高いキメラ率が観察された。この結果は、多様なストローマ細胞を含む臍帯単核細胞を移植したほうが単離したCD34陽性細胞を移植するよりも効率的にキメラ率を高める可能性があることを示唆している。しかし、CD34陽性細胞移植群の実験頭数が少なく決定的な結論には至っていないため、引き続き実験を続ける予定である。 さらに、造血幹細胞の少ないヒト臍帯血単核細胞移植によって高いキメラ率が得られたにも関わらず、そのメカニズムやヒト由来細胞の増殖と分化についてより詳細な解析が必要である。特に、仔豚の胸腺とリンパ節に多数のヒト由来細胞が検出されたことから、免疫組織におけるヒト由来細胞の分布、分化、そして機能の解析が重要である。
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