研究課題/領域番号 |
22K08533
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54020:膠原病およびアレルギー内科学関連
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
波多野 紀行 愛知学院大学, 薬学部, 講師 (50454319)
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研究分担者 |
鈴木 裕可 愛知学院大学, 薬学部, 講師 (00581026)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 滑膜線維芽細胞 / 機械刺激受容分子 / Piezo1 |
研究開始時の研究の概要 |
変形性関節症(OA)は慢性の関節炎を伴う関節疾患であり、軟骨の破壊と骨・軟骨の増殖性変化を来たす疾患である。高齢者のQOLを維持するためには、対症療法だけではなく、OA病態の憎悪を抑制する、あるいは緩解できる新たな治療法が求められている。OA発症の発端は軟骨細胞に対する過剰な機械刺激であるが、その後の病態形成の中心は滑膜線維芽細胞による滑膜炎の惹起にある。申請者は「OA病態における滑膜炎の憎悪は過剰な機械刺激による滑膜線維芽細胞の活性化が原因である」と想定した。滑膜線維芽細胞が機械刺激を受容し、滑膜炎を惹起するメカニズムを明らかにし、新たなOA治療法の開発につなげることが本研究の目標である。
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研究実績の概要 |
2022年度は主に「滑膜線維芽細胞における機械刺激による細胞機能変化の解明」という研究目標の達成に向けて研究に取り組んだ。ヒト初代培養滑膜線維芽細胞(hSyno)において機械刺激受容チャネルPiezo1および浸透圧感受性チャネルTRPV4が機能的に発現していることを明らかにし、流圧刺激誘発細胞内Ca2+濃度上昇にPiezo1チャネルが寄与することを見出した。また、培養細胞伸展装置ShellPa Proを用いて機械刺激負荷を行い、培養上清中に分泌された炎症性サイトカインや神経液性因子の測定を行った。その結果、hSynoに機械刺激(伸展率20%)を短時間負荷することによりATP分泌が増加することを明らかにし、このATP分泌は機械刺激負の荷時間に依存することを見出した。また、専用チャンバーにて機械刺激を負荷した細胞からサンプルを回収し、これらのサンプル解析を定量的RT-PCR法およびWestern Blotting法により検討中である。ShellPa Pro専用チャンバーを用いた細胞免疫染色も実施し、ヒト滑膜肉腫細胞株SW982に長期間機械刺激を負荷することにより細胞形態変化が引き起こされることも明らかにした。今後は、この細胞形態変化の原因分子を探索する予定である。 2023年度の研究目標である「伸展刺激活性化滑膜線維芽細胞が軟骨細胞リモデリングに及ぼす影響」については、今年度から準備を始めている。ゴンドラ型インサートに軟骨細胞(OUMS-27)を播種し、底面に播種したhSynoとの共培養系を構築し、底面のhSynoからのサンプル作成に成功した。しかし、このゴンドラ型インサートに播種したOUMS-27からのサンプル回収が難航している。今後、安定的にサンプルを回収できる系の確立を目指す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請した研究計画に従い、2022年度は主に「滑膜線維芽細胞における機械刺激による細胞機能変化の解明」という目標の達成に向けて研究に取り組んだ。まず、ヒト初代培養滑膜線維芽細胞(hSyno)における機械刺激受容メカニズムの解明に取り組んだ。その結果、hSynoにおいて機械刺激受容チャネルPiezo1および浸透圧感受性チャネルTRPV4が機能的に発現していることを明らかにし、水流圧刺激誘発細胞内Ca2+濃度上昇にPiezo1チャネルが寄与することを見出した。次に、専用チャンバーにhSynoを播種し、培養細胞伸展装置ShellPa Proを用いて各種機械刺激を負荷した。機械刺激負荷後に培養上清を回収し、培養上清中に分泌された炎症性サイトカインや神経液性因子の測定を行った。その結果、機械刺激(伸展率20%)を短時間負荷することにより細胞外へのATP分泌が増加することを明らかにし、このATP分泌は機械刺激の負荷時間に依存することを見出した。しかし、このATP分泌量の増加は細胞死に由来する可能性もあるため、今後LDH assayを用いて、この可能性について確認する予定である。 ShellPa Pro専用チャンバーを用いた細胞免疫染色も実施し、機械刺激がhSynoおよびヒト滑膜肉腫細胞株SW982の細胞形態変化に対して及ぼす影響についても検討を行った。SW982に長期間機械刺激を与えると著明な細胞形態が観察された。現在、この細胞形態変化の原因となる分子の探索に注力している。さらに、この専用チャンバーに播種した細胞からmRNAおよびタンパク質の抽出にも成功しており、これらのサンプル解析を定量的RT-PCR法およびWestern Blotting法により検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
申請した研究計画に従い、2023年度は主に「伸展刺激活性化滑膜線維芽細胞が軟骨細胞リモデリングに及ぼす影響」について取り組む予定である。2022年度、ゴンドラ型インサートに軟骨細胞(OUMS-27)を播種し、底面に播種したhSynoとの共培養系を構築し、底面のhSynoからのサンプル作成までは実施できた。しかし、このゴンドラ型インサートに播種したOUMS-27からのサンプル回収が難航している。2023年度は、より表面積が大きいタイプのゴンドラ型インサートを採用し、安定的にサンプルを回収できる系の確立を目指す予定である。また、OUMS-27とhSynoの共培養系だけでなく、OUMS-27とSW982、OUMS-27とヒト不死化滑膜線維芽細胞株MH7Aの共培養系も構築する予定である。 2022年度に実施した「滑膜線維芽細胞における機械刺激による細胞機能変化の解明」については、2023年度も研究を継続する予定である。現在遅延している「機械刺激による滑膜線維芽細胞(hSyno, SW982)における発現量変化」についてさらに検討を進める。サンプルは既に回収しており、2023年度は、このサンプルを用いた発現量解析に注力する予定である。また2022年度の研究結果より、機械刺激の強度、頻度、負荷時間を変化させると細胞外へのATP分泌量が変化することを見出しており、このような刺激条件変化による発現量変化についても検討を行う。SW982における機械刺激誘発細胞形態変化についても研究を継続する予定ではあるが、この細胞形態変化の原因と成り得る候補分子は多く、2024年度にずれ込む可能性も視野に入れている。
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