研究課題/領域番号 |
22K08536
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54020:膠原病およびアレルギー内科学関連
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
山形 薫 産業医科大学, 医学部, 講師 (80533786)
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研究分担者 |
田中 良哉 産業医科大学, 医学部, 教授 (30248562)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 関節リウマチ / CD20陽性B細胞 / スーパーエンハンサー / P2RY10 / ChIP / plasmocyte / CD20陽性B細胞 / B細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
公開データベースを駆使して自己免疫疾患・関節リウマチ(RA)の遺伝学と関連し、B細胞で強い転写活性を示し高発現する遺伝子としてP2RY10 [活性化リン脂質・リゾフォスファチジルセリン (LysoPS)の細胞膜受容体をコードする遺伝子]に着目した。①健常人とRA患者のrs6619397-T/Aの遺伝子型を決定し、P2RY10発現との関連を調べる。②P2RY10遺伝子近傍のヒストンH3K27acピークから発現する各eRNAをノックダウン後、P2RY10の発現を担うeRNA種を見出す。③LysoPSでP2RY10を刺激後、メモリーB細胞から抗体を産生するプラズマB細胞への分化制御について検討する。
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研究実績の概要 |
GWASにより、関節リウマチ(RA)疾患に感受性のある多数の遺伝子群が特定された。我々はin silico解析により、CD20陽性B細胞でスーパーエンハンサー(SE; 複数のエンハンサーから構成される巨大な転写活性化領域)による制御を受け、B細胞膜上で高い発現を示し、リウマチ遺伝学と関連するP2RY10 (P2Y Receptor Family Member 10) 遺伝子を見出した。しかしながら、その発現制御機構、B細胞における機能、そしてRA病態形成における役割は依然として不詳である。 令和4年度、1)まず末梢血単核球細胞を用いた大規模解析において健常人に比してRA患者のP2RY10 のmRNAとタンパク質の発現量は有意に低値であった。2)そしてP2RY10 mRNAの発現においてRA患者間に性差は検出されなかった。3)またRA患者のCD19陽性B細胞のP2RY10遺伝子および近傍のRA感受性SNP領域(rs6619397)において、AA遺伝子型ではTTに比してSE形成因子Rad21およびSMC3のリクルートがそれぞれ減弱した。以上より、AA遺伝子型を有することでP2RY10遺伝子の近傍においてSE形成が弱まり、P2RY10遺伝子の発現が低下する分子メカニズムの実態が予想された。 令和5年度、1)検体数を増やして前年度のChIPアッセイを行った。その結果、RA感受性SNP領域(rs6619397)において、AA遺伝子型ではTTに比してRad21およびSMC3のリクルートが抑制されており、再現性をとった。2)ヒトPBMCからPan CD19陽性B細胞を分離し、CpG-B(TLR9-L) 、BCR (IgM+IgG)、IFNαの存在下、LysoPSの刺激の有無で培養した。その結果、Pan B細胞はLysoPSの濃度に依存した刺激によりPlasmocyteの分化を誘導した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度:健常人に比して関節リウマチ(RA)患者の末梢血単核球において、P2RY10の発現が低下することを見出した。RA患者由来B細胞においてRAに感受性のあるSNP(rs6619397)を有するAA遺伝子型ではTTに比して、スーパーエンハンサー形成を弱める可能性が示唆され、P2RY10遺伝子発現制御に関するメカニズムの一端を明らかにした。 次年度:初年度の結果の再現性をとることに成功した。また、P2RY10を中心とするシグナルの活性化により、Plasmocyte分化を促進した。つまり、P2RY10の発現低下により、P2RY10シグナルが弱まり、Plasmocyte分化が抑制されると考えられた。しかし、RAの病態形成の基盤を担う本質的な発見とはいえないため、RAにおけるP2RY10の新たな機能を追究する必要がある。 従って、進捗状況は少し遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1) 健常人とRA患者由来の各B細胞で活性化するSEの近傍に位置するP2RY10遺伝子領域において、ChIPアッセイを駆使してSE活性を制御するさらなる転写制御因子およびエンハンサーRNA (eRNA) 分子を見出す。以上の解析を通して、RA患者由来B細胞のP2RY10遺伝子の発現制御を担うクロマチン構造変換機構について詳細に解明し、SEの役割を評価することが可能である。 2) ナイーブB細胞からPlasmocyte(抗体産生細胞)への分化誘導系においてP2RY10のリガンドであるLysophosphatidylserine (LysoPS)で刺激して、B細胞の表面に局在する種々の抗原プロファイルを見出し、P2RY10シグナルの役割を解明する。 3) 一方、PlasmocyteをLysoPSで刺激してIgMとIgGの各産生について定量することで、LysoPSがPlasmocyteの活性に及ぼす影響を評価する。 上記3点を踏まえRA病態形成を担うと考えられるP2RY10の機能的役割について解明する。
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