研究課題/領域番号 |
22K08564
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54020:膠原病およびアレルギー内科学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
茂木 正樹 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (20363236)
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研究分担者 |
劉 爽 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (60403812)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | SARS-CoV-2 / マスト細胞 / ケルセチン / プレドニゾロン / 投与期間 / MCP2 / キマーゼ / 複合体 / サイトカインストーム / ACE2 |
研究開始時の研究の概要 |
マスト細胞はアレルギー反応への関与だけでなく、自然免疫にも関わる重要な細胞である。「重症化機序にマスト細胞が関連しているのではないか?」と仮説を立て、SARS-CoV-2感染がマスト細胞に及ぼす影響と自然免疫応答の惹起に伴うサイトカインストーム発生機序にマスト細胞が果たす役割、さらにマスト細胞の活性化により遊離されるケミカルメディエーターがSARS-CoV-2の臓器感染の進展に与える影響を検証し、COVID-19の重症化を防ぐ新規メカニズムを解明する。また、SARS-CoV-2の臓器によるACE2非依存性の感染様式について、シュードビリオンとACE2欠損マウスを用いることで明らかにする。
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研究実績の概要 |
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス 2 (SARS-CoV-2) の重症化を引き起こす複数の炎症誘発性サイトカインの放出起因に関連し、マスト細胞のホスト細胞へのウイルス侵入に対する影響についての検討を進め、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質が組み込まれたシュードビリオンはマスト細胞の活性化を引き起こし、マスト細胞由来のキマーゼであるMCP2がスパイクタンパク質と複合体を形成し、プロテアーゼ依存性のウイルス侵入を促進することを見出し報告した。その中で、ウイルス侵入を定量化した結果から、マスト細胞安定剤であるケルセチンが、非処理細胞と比較して、潜在的にウイルス侵入の 41.3% を阻害する作用を示したことを受けてケルセチンのマスト細胞への効果について詳細に検討を進めたところ、ケルセチンはマスト細胞への1時間程度の短時間投与ではヒスタミンの放出を抑制する抗アレルギー効果を有するが、24時間刺激後ではヒスタミンの放出効果が認められないことがわかってきた。このことは、抗アレルギー作用を持つ薬剤の中には、長期的投与により薬効が減弱するものがあり、SARS-CoV-2の感染においても、薬剤の使用期間や容量により、影響が異なることが見出された。そこで、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン)においても同様の投与期間による影響がないかを検討したところ、網羅的なトランスクリプトーム解析により、短期間でプレドニゾロンが投与されたマスト細胞では、細胞内へのウイルス侵入リスクが増加し、ウイルスによるサイトカインの放出も促進されるが、細胞内ウイルスの増殖は一時的に抑制される可能性が示唆された。一方で、長期間にわたってプレドニゾロンが投与された場合、ウイルスの侵入や細胞内増殖は促進されるが、病原体によるサイトカインの放出が顕著に抑制されることが予測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マスト細胞によるSARS-CoV-2への影響について多面的に証明する実験が進み、第一弾の論文を報告した。現在、抗アレルギー薬の投与期間の違いによる感染への影響について興味深い結果が見出されてきており、順調に研究は進んでいると考える。
【公表論文】 Shuang Liu, Yasuyuki Suzuki, Erika Takemasa, Ryusuke Watanabe, Masaki Mogi. Mast cells promote viral entry of SARS-CoV-2 via formation of chymase/spike protein complex. Eur J Pharmacol. 930:175169, 2022.
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今後の研究の推進方策 |
ケルセチンなどのマスト細胞安定剤やキマーゼ阻害薬、副腎皮質ホルモンなど、マスト細胞からのヒスタミン遊離に影響を与える薬剤の投与期間によるヒスタミン遊離作用についての検討をさらに進める。トランスクリプトーム解析に加え、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質が組み込まれたシュードビリオンを用いて、ウイルス侵入とその後の感染に抗アレルギー薬が与える影響についての動物実験を用いた検討を進めていく。さらに、薬剤投与に伴ってマスト細胞で生じる遺伝子変化についてプレドニゾロンで得られた結果から、SARS-CoV-2感染後、短期間の副腎皮質ステロイド投与では体内ウイルスの増殖を抑制する効果があるが、サイトカインストームの回避効果は期待できない可能性があるものの、長期間副腎皮質ステロイドを使用している患者は、逆にSARS-CoV-2感染リスクが高くなるが、感染後のサイトカインストームによる重症化リスクは軽減される可能性が高いことが予測されており、今後さらに、抗アレルギー薬を服用する基礎疾患を有する患者において、SARS-CoV-2の感染に与える空間的・時間的な影響についての探索を進める予定である。
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