研究課題
基盤研究(C)
膠原病疾患の主因は自己免疫反応による炎症であるとされるが,その発症機序は不明である.本研究では,膠原病疾患におけるオートファジー関連分子の発現プロファイル,オートファジー活性化とTRIMファミリー発現量の関連,TRIM21によるオートファジー制御の分子機構,オートファジー制御薬による病態の変化の4点を調べることにより,オートファジー制御作用の膠原病病態での役割と治療標的としての可能性を検討する.
膠原病疾患の主因は自己免疫反応による炎症であると推測されるが,その発症機序は不明である.TRIMファミリータンパクのひとつであるTRIM21は膠原病疾患でみられるI型インターフェロンの過剰産生やB細胞の分化亢進に対して抑制作用をもつ.そこで本研究では,膠原病疾患における①オートファジー関連分子の発現プロファイル,② オートファジー活性化とTRIMファミリー発現量の関連,③ TRIM21によるオートファジー制御の分子機構,の3点を調べ,TRIMファミリーによるオートファジー制御作用の膠原病病態での役割を解明するとともに,④ オートファジー制御薬による病態の変化を調べることによって,オートファジー制御薬の膠原病治療への応用の可能性を検討している.その成果は,膠原病病態の知見にオートファジーという新たな視点を生むだけでなく,オートファジーを治療標的とする新規薬剤の開発の足掛かりとなることも期待される.まず,オートファジー活性化とTRIMファミリー発現量の関連を調べるために,ヒト単球系細胞株THP-1に発現ベクターやsiRNAを導入してTRIMファミリーの発現を変化させ,蛍光免疫染色法によってLC3の輝点数を,ウェスタンブロット法によってLC3-Ⅱ量をそれぞれ測定し,オートファジー活性の変化を調べ,実験系を構築した.現在,全身性エリテマトーデス,シェーグレン症候群,全身性強皮症,皮膚筋炎の各疾患においてオートファジー関連分子の発現を網羅的に調べるために,各疾患および健常コントールの各5名ずつより得られた血液検体より単球,CD4+ T細胞,CD8+ T細胞,B細胞を magnetic cell sorting 法で分離し,各血球細胞よりcDNAを作成しているところである.
2: おおむね順調に進展している
初年度は本研究に必要な実験系の確立を目標としているが,その目標が達成できている.
全身性エリテマトーデス,シェーグレン症候群,全身性強皮症,皮膚筋炎の各疾患患者由来の各血球細胞よりcDNAを作成したら,RT2 Profiler PCR Array System(SABiosciences社)を用いてオートファジー関連分子の発現を網羅的に測定する.また,作製したcDNAを用いてTRIMファミリーの発現をPCR Array によって網羅的に測定し,オートファジー関連分子とTRIMファミリーの発現量の関連性を調べる.各疾患で健常者と比べて発現量に変化がみられたTRIM分子について,ヒト単球系細胞株THP-1およびB細胞系細胞株NALM-6に発現ベクターやsiRNAを導入して発現量を増減させ,オートファジー関連分子の発現量が影響を受けるかをRT-PCR法やウェスタンブロット法で調べる.さらに,これらの細胞において蛍光免疫染色法によってLC3の輝点数を,ウェスタンブロット法によってLC3-Ⅱ量をそれぞれ測定し,オートファジー活性の変化を調べる.Trim21欠失MRL/lprおよび野生型MRL/lprの脾臓からB細胞を精製し,オートファジー関連分子の発現量やオートファジーの活性化の程度を測定する.さらに,TRIM21との相互作用が報告されているp62,LC3などのオートファジー関連分子について,発現量やタンパク間相互作用の変化をウェスタンブロット法や免疫沈降法で解析する.最後にTrim21欠失MRL/lprおよび野生型MRL/lprの両マウスにオートファジーを活性化するmTORC1阻害剤ラパマイシンやオートファジーを阻害しうるリソソーム抑制薬ヒドロキシクロロキンを投与し,各薬剤がループス病態へ与える影響を観察する予定である.
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Journal of Infection and Chemotherapy
巻: 29 号: 3 ページ: 347-352
10.1016/j.jiac.2022.11.002