研究課題/領域番号 |
22K08581
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54030:感染症内科学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
高橋 健介 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (40567294)
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研究分担者 |
久保 嘉直 長崎大学, 熱帯医学研究所, 准教授 (30273527)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ジフテリア / GILT / インターフェロンγ / 細菌毒素 / コレラ |
研究開始時の研究の概要 |
ジフテリア菌とコレラ菌は毒素産生によって生じる致死的感染症であり、発展途上国では未だ重大な公衆衛生的課題である。しかし毒素産生細菌感染における宿主因子の関与には不明な点が多い。これらの細菌毒素はS-S結合の切断により細胞内に侵入し、毒性を発揮する。我々は以前にウイルス糖蛋白質のS-S結合を切断することにより感染を抑制する宿主防御因子GILTを発見した。本研究課題では、宿主因子GILTがジフテリアおよびコレラの毒素蛋白質の活性化に必須であるかどうか、そしてGILT遺伝子多型とこれらの細菌感染症の重症度が相関するかどうか解明する。
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研究実績の概要 |
我々は以前に、ジフテリ毒素による培養細胞の死に、GILTによるジフテリア毒素のS-S結合の切断が必要であることを突き止めた。よって、GILTの発現レベルがジフテリアの重症度と相関している可能性が考えられる。しかし、GILTの発現調節機構はまだ解明されていない。GILT蛋白質はインターフェロンγ(IFNγ)によって上昇するので、まずIFNγによるGILT蛋白質誘導の分子メカニズムの解明を行った。一般的にIFNγ誘導性遺伝子のほとんどは転写活性化によって起こる。そこでGILT mRNAレベルをdroplet digital PCRにより定量した。興味あることにGILT mRNAレベルは変化しなかった。GILTプロモーター領域をPCRにより単離し、ルシフェラーゼと連結したプラスミドを作製し、HeLa細胞に導入、その細胞をIFNγ処理した。mRNAの結果と一致して、IFNγ処理によりGILTプロモーターは活性化されなかった。次にGILT mRNAの非翻訳領域(UTR)を持つ、ルシフェラーゼ発現プラスミドを構築した。IFNγ未処理細胞において、GILT 3'UTRはルシフェラーゼ活性を低下させた。IFNγ処理細胞において、3'UTRの阻害活性が消失した。これらの結果は、GILT 3'UTRがGILT蛋白質の翻訳を調節していることを示している。
GILT発現レベルがシフテリアの重症度と相関していることを解析するため、年間約10名のジフテリア死亡者がいるフィリピン・サンラザロ病院と共同研究契約を締結し、倫理委員会の承認を得た。現在、ジフテリア患者の偽膜を収集している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GILT発現はIFNγによって誘導される。一般的にIFNγによって誘導される遺伝子は、転写活性化を介して起こる。すなわち、ほとんどのIFNγ誘導性遺伝子はIFNγ刺激がない時、発現しない。一方、癌や自己免疫疾患においてGILT発現レベルが大きく変化し、それらの疾患の重症度と相関していることが既に報告されている。上述したように我々はGILTがジフテリアの重症度にも相関していると考えている。このようにGILT発現レベルは様々な疾患に関与するが、その発現機構は不明である。我々は、GILT mRNAの3'UTRがGILTの翻訳を調節していることを突き止めた。International Journal of Molecular Scienceに投稿し、現在revised中である。 GILT発現レベルとジフテリアの重症度が相関していることを調べるため、ジフテリア患者の多いフィリピンのサンラザロ病院と共同研究契約を終結し、倫理委員会の承認を既に得た。現在ジフテリア患者をリクルートし、偽膜を採取しており、研究は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
細胞培養におけるジフテリア毒素、コレラ毒素による細胞死の誘導にGILTが必須であることを証明するための確認実験を行う。GILTノックダウン細胞では毒素による細胞死の誘導が低下することを既に発見した。またGILTノックアウトマウスはコレラ毒素に耐性であることを既に突き止めた。今後、毒素蛋白質のS-S結合がGILTによって切断されることを直接証明するための実験を行う。毒素蛋白質とGILT蛋白質を混合し37℃1時間保温し、非還元ゲルで電気泳動した後、ウエスタンブロッティングを行う。GILT存在下でのみS-S結合が切断された蛋白質が検出されることを確認する。
採取した偽膜におけるGILT蛋白質発現レベルをウエスタンブロッティンにより半定量する。ウエスタンブロッティングのイメージにおけるGILT蛋白質バンドの濃さを測定する。死亡例と回復例においてGILT蛋白質レベルを比較し、統計学的に有意差があることを証明することを目指す。
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