研究課題/領域番号 |
22K08595
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54030:感染症内科学関連
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
吉河 智城 国立感染症研究所, ウイルス第一部, 主任研究官 (20399463)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ワクチン / ワクシニアウイルス / LC16m8 / 組換え法 / ウイルス / ワクシニア |
研究開始時の研究の概要 |
日本で高度弱毒化痘そう生ワクチンとして承認されているワクシニアウイルス LC16m8株(m8)について、安全性の更なる向上と、m8内に複数の外来遺伝子を挿入した多価ワクチンとして利用する時の増殖能低下の改善は重要である。そこで本研究はm8の増殖能とワクチンとしての免疫原性に必須な遺伝子と必須で無い遺伝子を網羅的に同定することを目的とする。同定した非必須遺伝子はm8から除去可能であり、予期せぬ副反応の予防、つまり安全性の向上に繋がる。更に非必須遺伝子は外来遺伝子への置換が可能となり、外来遺伝子を複数挿入した際に生じる増殖能への影響を最小にすることが期待できる。
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研究実績の概要 |
ワクシニアウイルスLC16m8のゲノムに人為的に変異を導入してゲノム内の遺伝子をノックアウトした変異ウイルスライブラリーを作製する。そしてノックアウトされた遺伝子と、ウイルスの病原性、毒性の関係性をマッピングすることが本研究目的である。今年度は、LC16m8の全ゲノムを保持し、そこから感染性を持つLC16m8をリカバリーできるプラスミドpLC16m8-BACにアトランダムに変異を導入した、変異pLC16m8-BACライブラリーの作製を試みた。変異の導入にはトランスポゾンを用いた。まず昨年度に作製したプラスミド、pAmp-9mScarletが保持するアンピシリン耐性遺伝子と蛍光遺伝子mScarletが隣接している発現カセット部分をTn5 transposaseの認識配列(モザイクエンド配列)を末端に付加したプライマーで増幅、PCR産物を精製しこれを導入するトランスポゾンとした。次に作製したアンピシリン耐性遺伝子と蛍光遺伝子を保持するトランスポゾンと精製したプラスミドpLC16m8-BAC、そしてTn5 transposaseを反応させてBACプラスミドへのトランスポゾン挿入を行った。pLC16m8-BACとトランスポゾンはそれぞれクロラムフェニコールとアンピシリンに対する耐性遺伝子を保持していることから、反応後のプラスミドを大腸菌にエレクトロポレーションした後にクロラムフェニコールとアンピシリンを含む培地で培養を行った。結果として、現時点でアンピシリンに耐性を持つコロニーを得ることが出来ておらず、変異ウイルスライブラリーを作製出来ていない状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現時点の最大の問題はプラスミドpLC16m8-BACへのトランスポゾン挿入が上手く行っていないことである。精製したプラスミドpLC16m8-BACはこれ自身を単純に大腸菌にエレクトロポレーションした後にクロラムフェニコールを含む培地で培養するとコロニーが出現することから、その品質に問題は無いと判断した。昨年度作製したプラスミドpAmp-9mScarletが保持するアンピシリン耐性遺伝子と蛍光遺伝子mScarletが隣接している発現カセットを、トランスポゾンとは異なる方法を用いてpLC16m8-BACに導入する事は問題なく成功しており、実際に発現カセットが導入されたpLC16m8-BACを保持する大腸菌はアンピシリン耐性となり、またそのコロニーは蛍光遺伝子mScarletの発現による蛍光を発する。つまりpLC16m8-BACと使用しているトランスポゾンの性状や品質自体に問題がある可能性は低い。一方私自身がトランスポゾンのシステムを用いるのは今回初めてである事等も鑑みて、問題はトランスポゾン挿入の系にあると推測している。
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今後の研究の推進方策 |
今回使用したTn5 transposaseは購入後数年が経過しており、その活性が低下している可能性があるため、Tn5 transposaseを再度購入してそれを用いることにする。また、既報の文献などを詳細に調査したところ、トランスポゾンはそのDNAの両5‘末端がリン酸化される事により他のプラスミド等への挿入効率が大きく上昇することが判った。そこでトランスポゾンをPCRで作製する際には使用するプライマーの5‘末端をリン酸化したものを使用する。今回はpLC16m8-BACへのトランスポゾン挿入をin vitroで試みたが、これをin vivo(大腸菌内)で試みる。具体的にはまず、in vitroでトランスポゾンとTn5 transposaseの複合体(transposome)を作りこれをpLC16m8-BACを保持する大腸菌へエレクトロポレーションして菌内でトランスポゾン挿入を行う方法を検討する。さらにin vivoでのトランスポゾン挿入の別法として30℃では大腸菌内で増幅するが42℃では増幅せず大腸菌内から排除される温度感受性プラスミドを用いた方法も検討する。これは、まず温度感受性プラスミドをベースに上述のトランスポゾンとTn5 transposaseの発現カセットを保持するものを用意し、pLC16m8-BACを保持する大腸菌へエレクトロポレーションする。30℃で培養を行いプラスミドから発現するTn5 transposaseによるpLC16m8-BACへのトランスポゾン挿入を促進後に、培養温度を42℃にシフトして温度感受性プラスミドを除去し、トランスポゾンが挿入されたpLC16m8-BACを保持する大腸菌をセレクションする方法である。以上の方策を用いて引き続き変異ウイルスライブラリーの作製を推進していく。
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