研究課題/領域番号 |
22K08620
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
桜井 賛孝 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70748376)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | インスリン分泌 / 糖尿病関連遺伝子 / ユビキチン / 膵β細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
近年のヒトゲノムワイド関連解析の結果、様々な人種・地域における2 型糖尿病の疾患感受性遺伝子が同定されている中で、2010年に東アジア人でのみ有意な2型糖尿病遺伝子としてUBE2E2が報告された。UBE2E2はユビキチン修飾系においてユビキチンのキャリアー蛋白として機能する種々のE2の中の一つであるが、その機能に関しては明らかでない点が多く、特に糖代謝制御における役割は全く不明である。そこで、膵β細胞特異的UBE2E2トランスジェニックマウスとUBE2E2全身ノックアウトマウスを作製し表現型を解析することで、膵β細胞や各組織でのUBE2E2の役割や糖尿病との関連を解明する。
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研究実績の概要 |
【背景と目的】 近年のヒトゲノムワイド関連解析(GWAS)の結果、様々な人種・地域における2 型糖尿病の疾患感受性遺伝子が同定されている。そのような中で、2010年に日本人や東アジア人でのみ有意な2型糖尿病遺伝子としてUBE2E2が報告された。UBE2E2はユビキチン修飾系においてユビキチンのキャリアー蛋白として機能する種々のE2の中の一つであるが、その機能に関しては明らかでない点が多く、特に糖代謝制御における役割は全く不明である。そこで、発生工学的手法を用いて膵β細胞特異的UBE2E2トランスジェニックマウス(TGマウス)とUBE2E2全身ノックアウトマウス(KOマウス)を作製し、その表現型を解析することで膵β細胞や各組織でのUBE2E2の役割や、ひいてはユビキチン修飾系と糖尿病の関連を解明することを目的とした。【方法】マウス膵島のmRNA由来のcDNAをもとにUBE2E2蛋白をコードするexon2-6の領域をクローニングし、RIPプロモーター下に配置したコンストラクトを構築しTGマウスを作製した。またexon2の領域にsgRNAを設計してCRISPR-Cas9システムを用いてKOマウスを作製した。【結果】TGマウスは若週齢時よりβ細胞量の低下に伴うインスリン分泌低下の表現型を呈した。また、細胞周期関連因子のp21遺伝子の発現高値と若週齢時や高脂肪食負荷時のβ細胞の増殖能の低下も認めた。プロテアソーム阻害剤処理後のプロテオーム解析では種々のポリユビキチン鎖形成の有意な増加を認め、さらに、阻害剤あり/なしのいずれの条件のプロテオーム解析においても有意に発現増加していたE3リガーゼとしてNedd4が検出された。KOマウスに関しては、数匹のF0世代のマウスを作出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
このTGマウスは、経口/腹腔内糖負荷試験ではインスリン分泌低下を伴う高血糖を呈した。単離膵島において、インスリン含量で補正したグルコース応答性のインスリン分泌は保たれていたが、免疫組織染色による膵組織像の評価では、TGマウスの膵島は平均径が有意に小さく、全体としてβ細胞量の有意な低下を認めた。これら一連の表現型は若週齢でも認め、高脂肪食負荷によりさらに顕在化した。TGマウスの単離膵島におけるインスリン遺伝子や、β細胞の分化に関与する遺伝子の発現は対照群と同等だったが、細胞周期関連因子のp21遺伝子の発現が有意に高かった。この所見は離乳期以前や高脂肪食負荷後の膵島でも見られ、これらの条件下でのBrdU陽性β細胞数の低下も認めたため、β細胞の増殖能が低下していると考えられた。網羅的解析として、単離膵島を用いたプロテオーム解析を行ったが、現時点では基質を同定するに至っていない。また、プロテアソーム阻害剤存在下でもプロテオーム解析を行い、全体としてのユビキチン蛋白の有意な増加と、種々のポリユビキチン鎖の形成亢進が明らかになったが、やはり基質を同定できていないのが現状である。ただ、いずれの解析においても共通して有意に発現増加していたE3リガーゼとしてNedd4が検出され、UBE2E2と関連のあるE3リガーゼである可能性が示唆された。また、UBE2E2KOマウスに関しては、既にF0世代のマウスを作出しておりgermline transmissionの確認を現在行っている。その他、TGマウスにおける膵β細胞量の低下の機序を検討する実験系に関して予備検討も進めており、予定通りに進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
UBE2E2との関連が示唆されたNedd4に関して、各々のリコンビナント蛋白を用いた無生物系のユビキチンアッセイを行いUBE2E2-Nedd4がユビキチン修飾系において機能的に連携し得るのかを検討する。また、Nedd4は細胞増殖やDNA修復も含め多くのシグナル経路に関与していることが報告されているので、膵β細胞におけるNedd4の役割についてin vitroの系を中心に検討を行い、TGマウスの表現型におけるNedd4の寄与を検証する。さらに、TGマウスの膵島で認められたp21遺伝子の発現高値の意義について、Nedd4との関連も含めて明らかにする。UBE2E2KOマウスに関しては、germline transmissionの確認のための交配を進めた後にKOマウスとしてのvalidationを行う。目的マウスが確保出来次第、耐糖能の評価を中心に表現型の解析を行う予定である。
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