研究課題
基盤研究(C)
本研究では様々な環境因子によってベージュ脂肪細胞に起きるエピゲノム修飾の変化を解析し、薬剤投与などによりこのエピゲノム修飾に介入することで、ベージュ脂肪細胞の機能維持を可能とすることを目的とする。さらにはベージュ脂肪細胞の機能維持を通じて全身の代謝機能の低下を防ぎ 、糖尿病や脂質異常症といった様々な代謝疾患の予防および治療へとつなげる。
ベージュ脂肪細胞において、核内受容体PPARαの選択的アゴニストであるペマフィブラートの投与により、その熱産生能を維持することが可能となり、高脂肪食摂取モデルマウスにおいて体重増加の抑制と耐糖能の改善を認めた。PPARαは核内受容体ELK1と結合し、熱産生遺伝子のプロモーター領域に共局在して、ヒストンメチル化やアセチル化の制御を介してその発現を調節している。ヒト熱産生脂肪組織においてもPPARαと熱産生関連遺伝子の発現は相関しており、実臨床で使用可能な選択的PPARαアゴニストの肥満関連疾患への有用性が期待できるものと考え、報告した(iScience. 2023 ;26(7):107143.)。MATIIαのfloxマウスにAdipoq-CreERT2 マウスを交配し、タモキシフェン投与によって脂肪組織特異的MATIIαノックアウトマウスを作成した。慢性寒冷刺激を加えると、野生型マウスで観察されるベージュ脂肪細胞の形成が脂肪組織特異的MATIIαノックアウトマウスでは高度に抑制されていた。またUCP1を始めとする熱産生関連遺伝子の低下を認め、成体マウスでのベージュ脂肪細胞の形成にMATIIαが必要であることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
選択的PPARαアゴニストのベージュ脂肪細胞機能維持に関する論文を発表し、現在はMATIIαの熱産生脂肪細胞機能制御に関しての研究をすすめている。
MATIIα欠失モデルマウスにおける環境応答に関しての検討をすすめていく。また、MATIIαはメチル化を司るだけでなく、クレアチン代謝にも関わる酵素として、熱産生脂肪細胞のUCP1非依存性熱産生能にも寄与している可能性を考え、細胞内代謝経路におけるMATIIαの役割についても検討する。
すべて 2024 2023 2022
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 2件)
Journal of Visualized Experiments
巻: - 号: 203
10.3791/66085
iScience
巻: 26 号: 7 ページ: 107143-107143
10.1016/j.isci.2023.107143
Proceedings of the National Academy of Sciences
巻: 120 号: 31
10.1073/pnas.2308750120
巻: 25 号: 8 ページ: 104729-104729
10.1016/j.isci.2022.104729
PLOS ONE
巻: 17 号: 6 ページ: e0270330-e0270330
10.1371/journal.pone.0270330