研究課題
基盤研究(C)
本研究では様々な環境因子によってベージュ脂肪細胞に起きるエピゲノム修飾の変化を解析し、薬剤投与などによりこのエピゲノム修飾に介入することで、ベージュ脂肪細胞の機能維持を可能とすることを目的とする。さらにはベージュ脂肪細胞の機能維持を通じて全身の代謝機能の低下を防ぎ 、糖尿病や脂質異常症といった様々な代謝疾患の予防および治療へとつなげる。
ベージュ脂肪細胞の機能維持において、核内受容体PPARαに注目し解析を行っている。PPARαは核内において転写因子ELK1と結合し、UCP1などの熱産生遺伝子のプロモーター領域に結合し、ヒストンメチル化やアセチル化を介して、同遺伝子の発現制御を行っていることを明らかにした。ELK1とPPARαのChIPによっても2つは近傍に共局在していることが示されている。ELK1をノックダウンすると、PPARαアゴニスト投与に伴う熱産生遺伝子の発現は低下する。しかし同様のELK1欠失モデルにおいて、ロシグリタゾンやβ3アドレナリン受容体作動薬による熱産生遺伝子の低下は認められず、ELK1はPPARα依存的な熱産生遺伝子制御に特異的である可能性が考えられた。ヒト褐色脂肪細胞はマウスベージュ脂肪細胞の性質を持っていることが報告されている。培養ヒト褐色脂肪細胞をロシグリタゾンやBMP7などとともに長期間培養して充分な分化を行った後に、PPARαアゴニストの継続投与を行うと熱産生関連遺伝子は維持されており、ヒト褐色脂肪細胞におけるPPARαアゴニストの有用性も確認された。マウス成体におけるPPARαアゴニスト投与によるベージュ脂肪細胞維持において、肝臓から分泌されるFGF21が熱産生維持に影響を与えている可能性を考え、血中のFGF21測定および肝臓でのFgf21発現を検討したところ、PPARαアゴニストの投与によりどちらも有意に上昇しており、PPARαアゴニスト投与によるベージュ脂肪細胞の熱産生能維持にはFGF21が間接的にも働いている可能性を考えた。
2: おおむね順調に進展している
ベージュ脂肪細胞のエピゲノム修飾に関してPPARαと相互作用を有するELK1を同定し、機能解析を行っている。またヒト褐色脂肪細胞のおけるPPARαの役割も明らかとなった。
ELK1とPPARαの遺伝子発現制御に関する詳細を明らかにするため、UCP1などの熱産生遺伝子のプロモーター領域をターゲットとしてルシフェラーゼアッセイ、およびChIP、ChIPシークエンスなどを予定していく。MATIIα欠失モデルマウスにおける環境変化に対する応答機構に関しても引き続き 解析をすすめていく。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
iScience
巻: 25 号: 8 ページ: 104729-104729
10.1016/j.isci.2022.104729
PLOS ONE
巻: 17 号: 6 ページ: e0270330-e0270330
10.1371/journal.pone.0270330