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膵β細胞のHippoシグナル伝達系に着目した糖尿病発症につながる撹乱遺伝子の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K08677
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分54040:代謝および内分泌学関連
研究機関国際医療福祉大学

研究代表者

岩佐 宏晃  国際医療福祉大学, 基礎医学研究センター, 講師 (70582188)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 中途終了 (2023年度)
配分額 *注記
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
キーワード糖尿病 / シグナル伝達 / リボソーム生合成 / 外分泌消化酵素 / Hippo / RASSF / 攪乱遺伝子 / Hippo pathway
研究開始時の研究の概要

正常な血糖を維持するためのインスリンを産生する成熟膵β細胞の質と量にともなう変化が糖尿病の発症につながることは良く知られている。次世代シークエンサーを用いた技術革新により、糖尿病発症の前段階において、予想もしなかった遺伝子発現の攪乱が起きることが明らかになった。しかし、我々は撹乱の実態がどのようなものかについては未だ多くを知らない。本研究では、成熟膵β細胞の質と量の変化をもたらす“撹乱遺伝子”の解明を目指し、これまでにない糖尿病の予防と治療の開発につながる基礎研究を実施する。

研究実績の概要

Ras結合ドメインをもつRas-association domain family (RASSF) 蛋白質は下等動物から哺乳動物まで保存され、ヒトには10個のRASSF蛋白質RASSF1-10がある。ヒトがん症例において、プロモーター領域のメチル化が観察されること、細胞周期停止や細胞死の誘導といった機能を有することから、RASSFは腫瘍抑制分子と考えられている。当研究室において、膵島細胞の発現プロファイルを調べいたところ、偶然にも、Rassf6の発現が膵島細胞の種類や病態などによって変動することを見出した。本研究では、RASSF6が膵β細胞の機能に関与するという仮説のもと、Rassf6ノックアウトマウスを用いた糖尿病と関連する表現型の解析、Rassf6ノックアウトマウスから単離した膵島を用いた次世代シークエンスによる網羅的解析を実施した。
膵島の網羅的な遺伝子発現解析を実施した結果、Rassf6ノックアウトマウスの膵島では、リボソームサブユニットを構成する複数の遺伝子群が総じて減少していることを昨年度の実施状況報告書に提示した。現在、国内外においてリボソーム生合成の異常と疾患を結びつける研究が注目されており、特にDiamond-Blackfan貧血はリボソームタンパク質群の遺伝子変異によって生じることが有名であるが、最近ではリボソーム生合成と膵β細胞の機能に関する研究が報告されつつある。本研究においてRassf6ノックアウトマウス膵島のリボソームサブユニットを構成する複数の蛋白質をコードする遺伝子群が減少していることが明らかになり、これはRassf6ノックアウトによるリボソーム生合成の異常と膵β細胞の潜在的な機能低下を示唆するものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度、数週間から数か月における血糖値を計測した場合、野生型マウスとRassf6ノックアウトマウスにおいて多少の変動は計測されたものの、劇的な変化は見受けられないことを報告した。一方、体重を両者で比較したところ、Rassf6ノックアウトマウスの体重が勝っていた。さらに、昨年度から本年度も継続して飼育することで70週齢に達したマウスについて腹腔内ブドウ糖負荷試験を実施したところ、Rassf6ノックアウトマウスの血中グルコース濃度が野生型マウスに比べて有意に上昇することが判明した。
膵島の網羅的な遺伝子発現解析を実施した結果、Rassf6ノックアウトマウスの膵島では、リボソームサブユニットを構成する複数の遺伝子群が減少していることをすでに述べた。本年度は、RNAシークエンスデータのエンリッチメント解析により新たに見出した遺伝子群について報告する。Rassf6ノックアウトマウスの膵島では、外分泌消化酵素をコードする遺伝子群の発現が上昇していることが判明した。外分泌消化酵素は膵島ではなく腺房細胞によって作られるものであることから、膵島の単離において腺房細胞の混入がない限り、通常は膵島における外分泌消化酵素の上昇が見出されることはない。膵島の免疫組織学的二重染色解析を行った結果、Rassf6ノックアウトマウス膵島のインスリン抗体陽性細胞において外分泌消化酵素抗体の陽性反応を示した。このことは、Rassf6ノックアウトマウスの膵島における外分泌消化酵素の遺伝子群発現上が腺房細胞の混入といった実験操作上のミスではなく、膵β細胞(インスリン陽性細胞)において腺房細胞を主とする遺伝子群を発現上昇させたことを意味する。すなわち、Rassf6ノックアウトによって生じる膵β細胞の腺房細胞化とする分化転換が示唆された。

今後の研究の推進方策

本解析では、マウス個体での長期にわたるRassf6の不在が血中グルコース濃度を上昇させることが判明した。また、Rassf6ノックアウトマウスの膵島がリボソームタンパク質の遺伝子群の発現低下だけでなく、外分泌消化酵素の発現上昇が観察された。いずれにおいても、膵島の機能低下や質的変化を招くことになり、その結果、体重増加や血中グルコース濃度の上昇といった糖尿病発症に結びつく前病態であることが推察される。しかしながら、Rassf6遺伝子がコードするRASSF6蛋白質がどのようにしてリボソーム蛋白質の発現低下や外分泌消化酵素の発現上昇へと導くかについては未解決といってよい。
近年、糖尿病と関連する転写因子JAZF1が発見され、その機能が膵島におけるリボソーム生合成に関与することや、iPS細胞から膵β細胞に分化誘導を行うときに必要であることなど相次いで報告されている。これまでに、RASSF6とJAZF1を結びつける実験的証拠はないが、一つの可能性として検証する予定である。現在、RASSF6とそれを取り巻く蛋白質(Hippo関連分子)などがJAZF1との関連性があると予想している。一方、RASSF6には局面に応じ相互作用する複数の蛋白質が報告されていることから、膵島においても特異的に相互作用する蛋白質が存在することを予想している。この仮説を検証するため、膵β細胞抽出液を出発点とするRASSF6抗体を用いた免疫学的精製および質量分析による相互作用蛋白質の検出を試みる予定である。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Role of the transcription factor MAFA in the maintenance of pancreatic β-cells.2022

    • 著者名/発表者名
      Nishimura W, Iwasa H, Tumurkhuu M.
    • 雑誌名

      Int. J. Mol. Sci

      巻: 23 号: 9 ページ: 4478-4478

    • DOI

      10.3390/ijms23094478

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 腫瘍抑制遺伝子Rassf6のノックアウトは膵島におけるリボソーム生合成を低下させる2023

    • 著者名/発表者名
      岩佐 宏晃、渡部栄地、西村渉
    • 学会等名
      第46回日本分子生物学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 膵島内における成熟膵β細胞のサブタイプとその局在の解析2022

    • 著者名/発表者名
      岩佐 宏晃、前田 健吾、堀岡 希衣、三宅 克也、松本 征仁、安田 和基、西村 渉
    • 学会等名
      日本糖尿病学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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