研究課題/領域番号 |
22K08682
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分54040:代謝および内分泌学関連
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
八木橋 操六 東邦大学, 医学部, 教授(寄付講座) (40111231)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 2型糖尿病 / インスリン抵抗性 / 膵島血管 / 膵島神経 / 病理変化 |
研究開始時の研究の概要 |
2型糖尿病では膵島での多彩な病理変化がみられ、臨床病態も多様性を示す。本研究では膵島での神経・血管変化、β細胞減少などが臨床病態といかに関連するかを検討し、2型糖尿病がいくつかの病型に分類可能かを検索する。とくに膵島に分布する毛細血管や自律神経異常を免疫組織学的特異的マーカーを用いて明確にし、それぞれがインスリン欠乏や抵抗性などの臨床病態といかに関連しているかを検討する。また糖尿病治療が膵島病変にいかなる影響を与えているかを、糖尿病症例では治療歴をみて比較検討し、また2型糖尿病動物では実験的に治療を施し、非治療群と比較検討しどのような影響をもたらすかを検討する。
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研究実績の概要 |
ヒト2型糖尿病の膵島病理変化として膵β細胞の減少、アミロイド沈着が確立されてきた。しかしながら、それらの病理変化と臨床病態との関連や病変の成立過程については不明のままである。糖尿病では膵島に分布する毛細血管や自律神経も障害を受け、それぞれ膵島病変を増悪・進展させることが推定されるが、それに関する情報は少ない。 本研究では、本邦2型糖尿病者剖検例より膵組織を蒐集し、膵島β、α、δ細胞の組織定量的解析を行うとともに、膵島内血管構築や神経支配分布について形態計測的検討を行う。さらに、これらの変化がいかに糖尿病者の糖・脂質代謝異常、インスリン抵抗性、肥満などの臨床パラメーターと関連するかを解析し、臨床病態と膵島病理との相関を明らかにする計画である。また、各症例での治療歴から、治療介入がいかなる特徴的膵島変化をもたらすかを解析する。これらの膵島の病理学的解析により、ヒト2型糖尿病をいくつかの病型に分けることが可能かを検討する。 これまで実施した研究では、高齢者糖尿病や血管合併症をもつ症例で強いアミロイド沈着とともに、膵島血管増生、血管壁肥厚、周皮細胞脱落等の変化をみており、とくに心筋梗塞合併死亡例で膵島血管変化が目立つことを見出した。神経分布に関しては、ヒトでは検出が困難であり、検出法の改善が必要とされている。それを補う目的から、2型糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)を用いて膵島神経線維の解析を行った結果、副交感神経線維の特異的な減少を見出した。予備的研究で早期からのSGLT2阻害薬を投与することにより、db/dbマウス膵島での神経変化を抑制する結果を得ることができた。今後は、GLP1アゴニストなどの投与例の解析例を増やし、インクレチン投与群での変化や、逆に食事療法のみの例を集め、薬剤介入群と比較検討する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全国的にコロナ感染が蔓延する状況でスタートした。行動が制限されるとともに物資の流通も遅れがちで、試薬、器具、動物などの搬入にも時間を多く必要とした。しかしながら、経過とともにしだいに状況は改善しつつあり、研究計画も徐々に進展している。ただし、免疫組織染色法を用いて膵島分布の神経線維、および血管変化を試みているが、微妙な画像も多い。精緻に評価するためには染色法を改善する余地があり、その克服のための工夫も必要とされている。
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今後の研究の推進方策 |
膵島の病理学的検討には、一般的にはパラフィン薄切切片を用い、特異的抗体を用いた免疫染色法が行われている。多数の症例を用いた解析では必然的にこの方法が用いられるが、最近ではクリアリングと呼ばれる組織の透明化を用い、目的組織の三次元解析を行う施設も少なくない。申請者のグループは規模が小さく、時間、経費を要する三次元解析を実施することは困難だが、わずかの例において、検証のため二次元法と三次元法との比較検証が可能かを探索したい。一方、病理所見と臨床所見の相関解析はより実用的で重要な結果が得られる可能性も高く、臨床データのよくそろった症例を多数蒐集するよう努めたい。 これまで、1960年代から2020年代までの多くの膵症例が蓄積されてきたが、日本人の糖尿病も生活習慣の違いから変貌を遂げている印象がある。この時代の影響も今後の研究計画へと組み込んでみたい。
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