研究課題/領域番号 |
22K08689
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
福光 剣 京都大学, 医学研究科, 客員研究員 (70700516)
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研究分担者 |
小木曾 聡 京都大学, 医学研究科, 助教 (10804734)
石井 隆道 京都大学, 医学研究科, 講師 (70456789)
波多野 悦朗 京都大学, 医学研究科, 教授 (80359801)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 脱細胞化 / 胆汁産生 / a / 脱細胞化組織 / 多細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
臓器不全に対する治療として臓器移植が普及した現在でもドナー不足という課題は未解決である。 脱細胞化組織を用いた臓器作製の技術が進んできたが、現状では複数種の細胞が個別に存在し機能しているものの、互いに有機的につながりを持って機能しているわけではない。肝臓の重要な機能の1つは胆汁の産生と排出であるが、この多細胞が相互作用をもって機能することによるシステム構築は未達成である。今回、3次元スキャフォールドと胆管上皮細胞を容易に増殖させる技術を用いて、胆汁の産生と排出システムを再現し、生体ラットへ移植することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究は、臓器移植における課題の1つであるドナー不足問題を解消するため、移植可能な人工肝臓を作製するための2つの大きな課題を解決することを目的としている。我々は、ラットを用いた生体由来3次元スキャフォールドを鋳型とした、移植可能なbio-engineered liverについて、1つは胆汁のドレナージシステムを3Dで再構築すること、もう一つは血流還流時の血栓形成の予防目的でスキャフォールドをコーティングするポリマーを新規に開発することである。 まず、bio-engineered liverの内部で肝細胞が産生した胆汁が培養液中に無秩序に流れ出ることを予防するため、脱細胞化する前の肝臓の被膜をコーティングし、血液や胆汁の流出を予防する仕組みを構築した。 3次元スキャフォールド内で肝細胞による細胆管構造が網の目状に再構築され、それに隣接するように胆管上皮細胞による胆管構造が存在することを示した。さらに血液を環流する際の血栓形成を抑制するために、東京大学との共同研究にてポリマーを新規に開発した。そして、3次元スキャフォールドに新規ポリマーをコーティングして肝細胞とliver ductal organoid由来の胆管上皮細胞をそれぞれ再細胞化し生着させ血液を環流した。胆管の断端より排出される培養液の成分を解析したところ、胆汁酸が培養液中の濃度より有意な差をもって高濃度となっていることが示された。肝細胞が産生した胆汁酸が最終的に総胆管から排出されたことを示しており、本bio-engineered liverにおいて胆汁のドレナージシステムを再構築している可能性を示唆するものである。 抗血栓作用を有する新規ポリマーについては現在論文投稿中であり、今後は肝細胞が産生した胆汁酸が排泄されるまでのメカニズムを詳細に解明することが必要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラットの生体肝臓を摘出後に脱細胞化した3次元スキャフォールドに細胞を生着させてbio-engineered liverをin vitroにて作製する試みを行っている。肝細胞が形成する細胆管構造と胆管上皮細胞が形成する胆管とが接続する構造を脱細胞化した3次元スキャフォールドを鋳型として再構築する試みについては、組織学的に接する構造を再現することを示した。ただし、機能的に繋がりを持つことを証明することは引き続きこれからの課題である。 また、実臨床へ応用するにあたり、大きな課題の一つとして、生体内へ移植して血液を環流すると、血液とスキャフォールドが反応して、即時に血栓を形成、bio-engineered liver内に血液が環流できない問題がある。我々は、抗血栓形成作用を有する新規ポリマーを作製し、その効果について評価を行った。東京大学工学部と連携して、抗血栓形成作用を有するMPCポリマーを、生体組織に親和性のある分子を結合させることで、3次元スキャフォールドをコーティングすることを試みた。FITCにてラベルしたMPCポリマーは、免疫染色にて広く分布していることが示され、またin vitroにおいて血液をポンプにて環流した際にも、血栓形成が抑制されることが示された。また、これらのポリマーは、肝細胞の生着率やアルブミン産生能などに影響を与えることはなく、細胞毒性を有しないことを確認した。本ポリマーの抗血栓形成作用を血管内皮細胞と比較するためにHUVECを用いて検討したところ、本ポリマーにおいて有意な差をもって抗血栓形成作用を有することが示された。さらにin vivoでの効果を検証するため、bio-engineered liverをラット体内に移植して血液を環流し、血栓形成の抑制能を検証したところ、in vitroと同様に有意な差をもって抑制できることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
抗血栓作用を有する新規ポリマーについては、現在論文投稿中であるが、血管内皮細胞との比較などの追加実験などを行いながら、アクセプトに向けてさらに研究を進めていく。また、学会発表などを通じて、業績を積極的に発信していくことを進めていく。 肝細胞が産生した胆汁酸のドレナージシステムについて、総胆管から排出される総胆汁酸の濃度が環流させている培養液の胆汁酸濃度よりも高値であることを示したものの、実験系が複雑であることなどにより安定して再現することが未だ困難である。手技の安定化を進めるとともに、実験系の簡略化も合わせて進めていくことが必要である。 また、肝細胞が産生した胆汁酸が胆管上皮細胞から形成される胆管へとドレナージされるメカニズムの解明については、3次元での解析が実験系の確立が困難である場合には、2次元培養での解析を行うこととする。コラーゲンのgelもしくはMatrigelのコーティングディッシュにて肝細胞とliver ductal organoid由来の胆管上皮細胞を共培養し、胆汁酸の排出経路を詳細に検討する。 生体由来3次元スキャフォールドを鋳型とした移植可能なbio-engineered liverについて、臨床応用に向けて、一つ一つ問題を解決していくことが重要である。
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