研究課題/領域番号 |
22K08692
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上野 豪久 大阪大学, 医学部附属病院, 特任准教授(常勤) (10456957)
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研究分担者 |
東堂 まりえ 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (50882239)
高瀬 洪生 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (80961763)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 小腸移植 / 慢性拒絶 / 間葉系幹細胞 / HMGB1 / 再生誘導医薬 |
研究開始時の研究の概要 |
長小腸移植の短期成績は急性拒絶の制御が可能となり改善したものの、長期成績は肝臓、心臓移植などにはいまだ及ばない。その理由の一つが慢性拒絶によって移植小腸が機能不全となることである。しかしながら小腸移植における慢性拒絶の作用機序はいまだに明らかになっていない。近年、間葉系幹細胞による免疫制御が臓器移植の慢性拒絶に効果があることがわかってきた。そこで我々はラット小腸移植後慢性拒絶モデルを作成し、HMGB1ペプチドを投与し、同様に慢性拒絶抑制・治療を目指す。本研究は小腸移植における慢性拒絶作用機序の解明につながるだけでなく、小腸移植後の患者の長期生存を可能とする、再生誘導医薬の創薬を可能にする。
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研究実績の概要 |
小腸移植後慢性拒絶反応の制御を目標に、ラットおよびマウスを用いたin vivoおよびin vitroの研究を施行している。まず、慢性拒絶モデルのラットとマウスの作成を行っている。慢性拒絶モデルラットはおおむね作成が完了している。組織像および免疫組織染色にて小腸グラフトの線維化および腸間膜動脈の線維化を伴う閉塞性動脈炎の所見を呈していることを確認し、小腸粘膜下層の著明な肥厚、および腸間膜動脈の内皮脱落、血管周囲の細胞外基質沈着を確認した。治療は現在で種々の疾患を対象に研究、臨床試験を施行しているHMGB-1ペプチドアナログを使用している。HMGB-1ペプチドアナログは骨髄から血中に間葉系幹細胞(MSC)を誘導することが報告されており、MSCはケモカインを介して損傷組織や低酸素状態の組織にmigrationすることが報告されている。In vivoによる慢性拒絶モデルの作成および再生誘導治療を中心に、MSCによる免疫抑制、組織や血管線維化の制御などのin vitro研究を施行している。我々はMSCとナイーブ T細胞を共培養し、MSCによりナイーブ T細胞からCD4+T細胞、CD8+T細胞の増殖が抑制されることを確認した。これらは液性因子ではなく細胞間の直接作用であることが示唆されるが、MSCによる細胞間直接作用を介した抑制は明らかにはされておらず、解明が期待される。また、HMGB-1ペプチドアナログはMSCに対し誘導のみではなく機能変化を起こす可能性が考えられており、我々の研究ではHMGB-1ペプチドアナログで刺激したMSCにより、血管平滑筋細胞の増殖が抑制される可能性が示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まずラット小腸移植慢性拒絶モデルを作成し、組織像および免疫組織染色にて小腸グラフトの線維化および腸間膜動脈の線維化を伴う閉塞性動脈炎の所見を呈していることを確認した。具体的には小腸粘膜下層の著明な肥厚、および腸間膜動脈の内皮脱落、血管周囲の細胞外基質沈着を確認した。同モデルに対してHMGB-1ペプチドアナログを用いた治療を開始したが、現状では大きな効果が得られていない。そのため、慢性拒絶反応の主病態であるグラフト(小腸)の線維化、血管(平滑筋細胞、内皮細胞)の炎症性変化および細胞外基質の産生、T細胞増殖・活性化に関しての研究が遅れており、間葉系幹細胞が組織に与える反応のメカニズムを解析を行うことができないでいる。
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今後の研究の推進方策 |
In vivoでの小腸移植モデルの治療効果を小腸グラフトの線維化、閉塞性動脈炎の程度を評価し判断する。HMGB-1ペプチドアナログは表皮水疱症など他の疾患において治験が進んでおり、ラットモデルで効果が得られれば臨床応用が実現する可能性がある。In vitroでは現在確認されたMSCによる細胞障害性T細胞の増殖・活性化抑制のメカニズムを解析する。in vitroでの結果を踏まえ、in vivoでの作用メカニズムを解明し、また得られた知見により新規治療につながる可能性がある
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