研究課題/領域番号 |
22K08712
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
大原 利章 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (40623533)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 鉄 / 大腸癌 / 腫瘍免疫 / HIF-PH阻害薬 / 癌 / HIF |
研究開始時の研究の概要 |
近年、CD8陽性T細胞のHIFを遺伝子改変により高めるとCD8陽性T細胞の抗腫瘍活性が向上し、PD1阻害薬の抗腫瘍効果が増強することが報告された。本研究では薬剤によりCD8陽性T細胞のHIFを誘導し、がん免疫療法の効果を高める治療法の開発を行う。CD8陽性T細胞のHIFの発現誘導には、がん細胞の増殖を促進しない薬剤を用いる事が必要であり、これまでの研究で鉄キレート剤には腫瘍の増殖を抑制し、HIF誘導効果がある事を突き止めており,最適な鉄キレート剤を選び出し、がん免疫療法の効果を高める治療法の開発を行う。
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研究実績の概要 |
今年度は基礎的な知見を集積するために、in vitroの実験とin vivoでの予備実験を主に行った。 マウス脾臓からMACS beadsを用いてCD8陽性細胞を回収した。同時にヒトCD8陽性Tモデル細胞 (Jurkut)を合わせて用い、鉄キレート効果のある薬剤を複数投与し、増殖やHIFの発現誘導に与える影響の差異について検討を行った。ヒト大腸がん細胞(SW480、HT-29)、マウス大腸がん細胞(colon-26)に対しても同様の検討を行った。XTT assayでは多くの鉄キレート剤はがん細胞に対して増殖抑制的に働き、逆にCD8陽性細胞に対しては代謝活性を上げるk傾向が認められた。興味深い事に鉄キレート剤のうち、HIF-PH阻害薬であるRoxadustat、Vadadustatはcolon-26細胞の増殖に対して直接的な影響を及ぼさなかったが、CD8陽性細胞に対しては代謝活性を上げる作用が認められた。HIFの発現誘導についてはウエスタンブロッティングで発現上昇の確認を行った。これらの事から、宿主の抗腫瘍免疫応答を評価するには、がん細胞の増殖に直接的な影響のない上記2剤が適当と考えられた。 colon-26を用いて同種皮下腫瘍モデル(BALB/c-WT)を作成し、予備実験としてRoxadustat、Vadadustatを投与すると、腫瘍の増殖抑制効果が認められた。腫瘍内のCD8陽性細胞を免疫染色およびフローサイトメトリーで解析すると増加しており、抗腫瘍免疫応答が増強されている事が示唆された。 上記知見は鉄キレート剤を活用した新規がん免疫療法の開発に繋がる重要な実験結果であり、関連の学会で報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、CD8陽性細胞について、マウス脾臓からMACS beadsを用いて回収した細胞とヒトCD8陽性Tモデル細胞 (Jurkut)を用いて、鉄キレート効果のある薬剤を10種類以上投与し、増殖やHIFの発現誘導に与える影響の差異について検討する事ができ、ヒト大腸がん細胞(SW480、HT-29)、マウス大腸がん細胞(colon-26)に対しても同様の検討を行う事ができ、その違いを検証する事ができた。さらにin vivoで、鉄キレート作用のあるHIF-PH阻害薬を用いて、抗腫瘍免疫応答の増強を確認する事ができた。上記内容は、MSS大腸がんに対する新規免疫治療法の開発の糸口となる知見であり、さらに研究計画を進めて行くことが可能と考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は予定通り、鉄キレート剤の抗腫瘍免疫応答の増強のメカニズムの解析を行う事と、既存の免疫チェックポイント阻害薬との併用により、抗腫瘍効果の上乗せが可能かについて検討を行う予定である。
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