研究課題/領域番号 |
22K08722
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
米戸 敏彦 東京医科大学, 医学部, 客員講師 (10837628)
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研究分担者 |
善本 隆之 東京医科大学, 医学部, 教授 (80202406)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 培養上清 / 腫瘍増殖抑制効果 / IGFBP-4 / 抗腫瘍効果 |
研究開始時の研究の概要 |
間葉系幹細胞(MSC)の細胞移植が再生医療等製品として認可されているが、他家幹細胞移植の倫理面や免疫拒絶、腫瘍形成促進作用などが懸念される。MSCの治療効果は、主に分泌される液性因子のパラクリン効果によることから、MSCの培養上清(CM)の投与が、細胞フリー療法として、倫理や免疫拒絶の心配がなく注目されている。ところが、そのCMの腫瘍形成への影響やその作用機序は不明のままである。そこで、本研究では、MSC-CMの腫瘍形成抑制効果とその作用機序、CM中に含まれる細胞外小胞・エクソソームの関与を、MSCを腫瘍細胞と共培養した場合と比較検討し、より安全性の高い細胞フリー療法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
2023年度は、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の培養上清(MSC-CM)中のエクソソームと蛋白質分離後の腫瘍増殖への効果について検討を行った。 ① MSC-CMのエクソソームとそれを除いたCMの腫瘍増殖への効果:MSC-CMを超遠心機を用いて分離後、上清を蛋白質、沈渣をエクソソーム分画に分けて、まず、NanoSightにより粒子サイズが平均100 nmであることや、エクソソームのマーカー分子CD63とCD81の抗体を用いたウエスタンブロット解析より、両者が綺麗に分離されていることがわかった。そこで、ヒト肺癌A549とマウス扁平上皮癌SSCVIIの細胞培養系に両者を別々に加えて、それぞれの腫瘍増殖能の抑制効果への影響を調べた。蛋白質分画では、どちらの腫瘍も分離前と同様に腫瘍増殖を強く抑制したが、エクソソーム分画ではどちらも抑制能が有意に低下した。 ② MSC-CM中のエクソソームmicroRNA解析:上述のMSC-CM中のエクソソームからRNAを抽出し、GeneChip miRNA Arrayを用いて網羅的に発現解析を行ったところ、アレイに用いた6599種類のmicroRNAの内、1046個のmicroRNAが検出された。その中には、hsa-miR-6126やhsa-miR-320、hsa-miR-4484など腫瘍増殖の抑制に関与していると報告のあるmicroRNAも見られた。 以上より、MSC-CM中のエクソソーム中には、腫瘍増殖の抑制に関与していそうなmicroRNAも見られたが、エクソソームよりInsulin-like growth factor binding protein-4などの増殖因子やサイトカインなどの蛋白質が、腫瘍増殖の抑制効果に重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の培養上清(MSC-CM)の腫瘍増殖への効果と作用機序が明らかになってきているので、ほぼ計画の予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の結果より、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の培養上清(MSC-CM)による腫瘍増殖の抑制効果にエクソソームがあまり関与していなかったので、2024年度は、当初の予定を少し変更し、MSCの細胞投与の腫瘍増殖への影響とMSC-CMの作用機序について、さらに、詳細に検討する。 ① MSCの細胞投与の腫瘍増殖への影響:これまでの報告より、MSCの細胞投与は、MSC-CM投与とは逆に、腫瘍増殖を促進する可能性が高いことが報告されている。そこで、MSC-CM投与の優位性を示すために、マウス扁平上皮癌SSCVII腫瘍をマウス皮内投与後、腫瘍が触れる位になった時、MSCを静注投与、MSC-CMは腫瘍近傍に皮内投与し、経時的に腫瘍径を測定し、腫瘍形成への影響を比較する。安楽死後、腫瘍より組織切片を作製し抗CD31抗体を用いた免疫組織化学的解析により新生血管数を比較する。 ② MSC-CMの腫瘍増殖抑制効果の作用機序:作用機序として、MSC-CM中のInsulin-like growth factor binding protein-4(IGFBP-4)が、培地の牛胎児血清(FBS、1%)中のInsulin-like growth factor(IGF)に結合しそのシグナルを抑制している可能性が考えられる。そこで、まず、組換えIGFBP-4およびMSC-CMを1%FBSと先に混ぜて1時間保温後、SSCVII腫瘍のin vitro細胞培養系に加え腫瘍増殖への影響を調べる。次に、腫瘍と混ぜて24時間後に細胞溶解液を調製し、IGFのシグナル伝達に関与するAKTと ERK、さらに、IGF受容体(IGF-1Rb)のリン酸化をウエスタンブロット解析により比較検討し、作用機序を明らかにする。
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