研究課題/領域番号 |
22K08725
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 日本赤十字社和歌山医療センター(臨床研究センター) |
研究代表者 |
金井 理紗 日本赤十字社和歌山医療センター(臨床研究センター), 小児外科部, 医師 (50935947)
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研究分担者 |
木下 和生 静岡社会健康医学大学院大学, 社会健康医学研究科, 教授 (50293874)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 炎症性腸疾患 / 腸閉鎖 / 小児 / TTC7A / TTC7B / SW620 / LoVo / リン脂質 |
研究開始時の研究の概要 |
最近、先天性腸閉鎖症、炎症性腸疾患を伴う遺伝性疾患である「腸管異常免疫不全症 GIDID」の原因遺伝子TTC7Aが同定されたが、有効な治療法はまだ存在しない。TTC7Aには遺伝子重複により似たような働きをもつTTC7Bという遺伝子が存在する。TTC7Aが欠損しているGIDIDに対して、代わりにTTC7Bの発現誘導により機能を補う新しい遺伝子治療の可能性についてヒト腸上皮細胞を用いて検討する。細胞株を用いてTTC7AおよびTTC7Bのダブルノックアウト実験で機能的冗長性の存在を証明し、更にエピゲノム編集を用いて、TTC7B発現によりTTC7A欠損細胞が正常に近づくかどうかを調べる。
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研究実績の概要 |
1.ヒト細胞を用いたTTC7A/TTC7Bダブルノックアウト a. HeLa 細胞:TTC7AとTTC7Bのダブルノックアウト株が生存可能かを検討するため、野生型HeLa細胞とTTC7A欠損HeLa細胞に対して、CRISPR/Cas9によるTTC7Bの遺伝子破壊を行なった。HeLa細胞はTTC7Bのアレルを3本持つが、実験の結果、野生型HeLa細胞は3アレルとも変異が起きた細胞を採取できた(TTC7Bのノックアウトは可能であった)が、TTC7A欠損HeLa細胞は1または2アレルの変異細胞は得られたものの、3アレルとも変異した細胞は採取できなかった。よって研究計画当初の予想通り、HeLa細胞ではTTC7AとTTC7Bのダブルノックアウトは不可能で、どちらかが生存に必須である可能性(合成致死の可能性)が高まった。 b.ヒト腸管上皮細胞株:HeLa細胞では生存必須性が示唆されたため、腸管上皮細胞株においてもそれが成立するかを検証することとした。ヒト腸管上皮細胞株(LoVo, SW620)に対してCRISPR/Cas9によるTTC7Aの遺伝子破壊を行い、TTC7A欠損細胞株の作成を試みた。LoVo, SW620ともにTTC7Aのアレルを2本持つが、実験の結果、LoVoはSW620と比較して細胞増殖が遅い傾向にあり、LoVoでは片アレルのノックアウトは可能であったものの両アレルのノックアウトは不可能であり、TTC7Aのノックアウト不可能と判断した。SW620においては両アレルのノックアウトが可能であり、TTC7A欠損SW620細胞株が2つ作成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TTC7AとTTC7Bの合成致死の可能性を示唆する結果が得られているため。また予定通りCRISPR/Cas9による遺伝子破壊もでき、TTC7A欠損SW620細胞株が得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
TTC7A欠損SW620細胞株に対して、誘導型蛋白分解の原理を利用して、添加薬剤依存的に急速分解される性質を付与するドメイン (auxin-inducible degron, AID)を内在性のTTC7Bに付加する。これにより遺伝子としてはノックアウトしないが、auxin 作用を持つ indole-3-acetic acid (IAA) を作用させてTTC7B-AIDの急速分解をすると、蛋白としての機能喪失が起こる。それにより細胞死が起こる結果が得られれば、合成致死を起こすことが証明できる。また細胞死が確認されるようなら、死につつある細胞の形態をタイムラプス撮影でその様子を観察する。 また同じ細胞株に対して、TTC7Aをトランスジーンで供給してから、上記と同様にIAAを作用させた際に細胞死が防がれることが証明できれば、TTC7AとTTC7Bの機能的冗長性が証明される。 LoVoにトランスジーンでTTC7Bを補ってからTTC7Aをノックアウトした際に、今度は細胞死が確認されなければ、内在性のTTC7Bの増強により、GIDIDにおけるTTC7A欠損を補償できる可能性を示唆し、パラログの発現増強による遺伝子治療に基礎的な概念実証を与えるものと考えられる。
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