研究課題/領域番号 |
22K08739
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
出口 博之 岩手医科大学, 医学部, 特任教授 (50382619)
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研究分担者 |
齊藤 元 岩手医科大学, 医学部, 教授 (20323149)
重枝 弥 岩手医科大学, 医学部, 助教 (00802828)
藤田 友嗣 岩手医科大学, 医学部, 講師 (50721974)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 質量分析法 / 病理診断 / 悪性腫瘍 / 原発性肺癌 / 診断 / リンパ節転移 |
研究開始時の研究の概要 |
近年増加傾向にある小型早期肺がんに対し,呼吸機能温存に有利である積極的縮小手術(肺区域切除)のエビデンスが確立された.一方その術式決定にはリンパ節転移陰性が条件である.新規技術である悪性腫瘍への質量分析診断法は組織をイオンレベルまで解析し,全ての個体が識別可能であり,かつ人工知能を鑑別診断に組み合わせることでその診断精度は格段に向上する.本法が臨床応用されれば,診断までの高速化に伴う手術・麻酔時間短縮,手術侵襲の低減が達成され,さらにこれまで鑑別困難な肺腫瘍診断も可能となり,過剰な肺切除や再手術等を防ぐことができるなど,肺がん治療成績向上に大きな貢献が期待される.
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研究実績の概要 |
現在の原発性肺癌の標準術式は肺葉切除・肺門縦隔リンパ節郭清であり,この術式は1960年以降変わっていない.近年小型早期肺がんへの標準手術としてJCOG0802やJCOG0804などの臨床試験から,より切除範囲の小さい区域切除や部分切除が検討されている.それにはリンパ節転移がないことが必須だが,術前画像診断でリンパ節転移なしと診断されても病理診断でリンパ節転移陽性となる症例は珍しくない.そのため術中迅速病理診断でリンパ節転移の有無を評価しその結果で術式を決めているが,術中迅速病理診断は診断までの時間や診断精度,病理医不足などの課題が残る.今後小型早期肺がんは益々増加すると予想され,より高速で高精度の診断方法の開発が望まれる.そこで我々は組織をイオンレベルで解析する質量分析法(Mass Spectrometry: MS)と人工知能(Artificial Intelligence: AI)を術中迅速病理診断へ応用することを目的として本研究を立案した.前年度は,岩手医科大学附属病院で肺がんに対する手術を受けた患者から採取したリンパ節81検体に対しMSを用いて,肺がんのバイオマーカーとして知られているCytokeratin 19 (CK19)の発現を解析した.結果はCK19が陽性でMSによりリンパ節転移ありと診断した症例は26例/81例であった.病理組織診断によるリンパ節転移陽性は24例/81例であり,感度: 87.5%,特異度: 91.2%だった.今年度は,検体処理方法の検討を行い,さらなる精度向上と処理時間の短縮を図る予定である.当該研究期間では精度・測定時間ともに術中迅速診断に匹敵する方法を確立することを目標とし橋渡し研究としての役割を担うが,その後研究がさらに進展した際には,将来的に前向き研究として術中迅速診断支援に使用し臨床応用を目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに,岩手医科大学附属病院で原発性肺がんに対する手術を受けた患者から採取したリンパ節81検体に対しCK19の発現における解析を行った.CK19は既に肺がんのバイオマーカーとして広く知られている.一方で,がんに対し質量分析法を用いたタンパク質発現の解析を行った報告は少なく,検体処理の方法から検討する必要があった.標準品を用いてMSによりCK19の検出が可能であることを導き出した後に,手術検体から採取した組織を用いた検討に移った.処理方法を検討した結果,手術検体においてMSによりCK19の発現を測定することに成功した.その結果,CK19の発現を確認することでリンパ節転移ありと診断した症例は,26例/81例であった.病理組織診断によるリンパ節転移陽性症例は,24例/81例であり,感度: 87.5%,特異度: 91.2%の結果であった.また,病理組織診断に対する質量分析法の正確度は90.1%であった. 上記経過から,本研究は計画に従って進行していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,さらなる精度向上と処理時間の短縮を目指す.そのためには,当該研究機関において検体処理方法について検証予定である.現在の方法ではタンパク質をより細かく切断するためのトリプシン消化を始め,多くの手順が必要であり処理時間も必要となっている.短縮や省略が可能な工程が無いか,様々な条件下での検証を予定している.そして将来的には本法を病理「診断」としての役割から病理「検査」の域に発展させることを目標とする.
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