研究課題/領域番号 |
22K08751
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55010:外科学一般および小児外科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
野村 元成 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40546909)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 神経芽腫 / 腫瘍溶解ウイルス / 抗GD2抗体療法 / ガングリオシド / PDX / 抗GD2抗体 / 微小残存病変 |
研究開始時の研究の概要 |
神経堤細胞由来の悪性腫瘍である神経芽腫は、小児悪性固形腫瘍の中で最も多い疾患の1つであり、小児悪性腫瘍による死亡者数の約15%を占める。手術、化学療法、骨髄移植を併用した大量化学療法、放射線療法を組み合わせた積極的な集学的治療によって、高リスク症例においても一定の治療成績の向上を認めた。しかし、一旦寛解を得た後も再発する症例が少なくないため、微小残存病変を如何にコントロールできるかが、高リスク神経芽腫患者の生命予後向上のために非常に重要である。 本研究によって、近年保険収載された抗GD2抗体療法の弱点をHVJ-Eとの併用で補完することで、神経芽腫に対する、より効果的な治療法の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
神経芽腫は、集学的治療による治療成績向上を認めたが、とりわけ高リスク症例においては寛解後の再発率が高く、微小残存病変に対する13-cisレチノイン酸を用いた分化誘導療法や抗GD2抗体療法などをもってしても、依然として十分な治療成績が得られていない。しかも、特に小児においては生存率改善のみならず、成長障害や性腺機能障害などの晩期合併症に対しても十分に考慮する必要があるため、単剤の投与量を減量した多剤併用療法が望ましい。本研究は、腫瘍溶解ウイルスの1つであるセンダイウイルス(HVJ)を不活化した粒子であるHVJ-Eを用いて抗GD2抗体療法の弱点を補完することによって、神経芽腫に対して、より合併症が少なく、より抗腫瘍効果の高い新規治療法の開発を目指すものである。 一昨年度は、SK-N-SH、SK-N-AS、SK-N-BE(2)、IMR32などのヒト神経芽腫細胞株を用いて、コントロール群、HVJ-E単独群、抗GD2抗体単独群、HVJ-E+抗GD2抗体併用群においてin vitroでの抗腫瘍効果をMTTアッセイにて比較検討したところ、GD2高発現の細胞株は抗GD2抗体に、GD1a高発現の細胞株はHVJ-Eに対する感受性が高いことが分かった。しかし、フローサイトメトリーにて各細胞株内におけるGD1aとGD2発現パターンを確認すると、いずれの細胞株もどちらかのガングリオシドのみが発現するような傾向があり、発現の二極化は確認できず、GD2抗体とHVJ-Eの併用による抗腫瘍効果の増強を確認するのは困難であった。そこで、昨年からは、各細胞株に対して、低用量の抗癌剤を長期間投与することで、細胞内のガングリオシド発現パターンに変化を生じさせ、HVJ-Eと抗GD2抗体の併用効果を確認する方法に変更した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞株は商品の性質上、モノクローナルな増殖を来たした細胞集団であるため、細胞株間のガングリオシド発現パターンを比較するにあたっては、HPLCでは違いを確認できてもフローサイトメトリーでは評価困難であった。腫瘍内不均一性を持つ患者検体もしくは検体由来のPDXを発展させて初めてフローサイトメトリーの有効性が確認できると考えるが、稀少がんであるため、十分なサンプル数のPDX確立が困難であるため、予定していたよりも長い期間を要する。並行して、低用量の抗癌剤を長期投与することで、ガングリオシドの発現パターンに変化が生じることを期待しているが、このような細胞は、野生株よりも増殖スピードが遅くなり、in vitroのアッセイでも時間がかかってしまうことで進行が遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年の報告のように、商品ベースの細胞株のみを用いたモデルだけでは、細胞株ごとのtotalのガングリオシド発現をHPLCにて比較して抗GD2抗体やHVJ-Eの抗腫瘍効果の違いを細胞株間で比較することはできても、個々の細胞株に対する抗腫瘍効果の増強という観点では併用療法のメリットを確認することは非常に困難であると考えた。 そこで、ガイドラインに基づいた神経芽腫に対する化学療法を模倣して、レジメンに含まれる抗癌剤を少量かつ長期間投与することで抗癌剤耐性細胞株の作成を試みている。そうすることで、各々の細胞株における細胞間でも性質の違いが生じ、ガングリオシドの発現パターンが少しずつ変化してきていることも確認されつつある。このような概念は、既存の化学療法に対する耐性を獲得した腫瘍に対するセカンドラインの治療法開発にも通じると考える。ただ、薬剤耐性株の細胞の増殖速度が遅いことも否めない事実であるので、最初の段階で充分に細胞数を増やしてから実験開始するようにした。 上記の計画と並行して、NSGマウスを用いて、可能な限り化学療法前後の神経芽腫サンプルを用いたPDX作成も継続し、腫瘍内におけるガングリオシド発現パターンの変化を確認しつつ、抗GD2抗体もしくはHVJ-Eの抗腫瘍効果の違いと併用療法による抗腫瘍効果増強を目指して解析を進めていく予定である。
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