研究課題/領域番号 |
22K08799
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
種村 匡弘 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (30379250)
|
研究分担者 |
三善 英知 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20322183)
小林 省吾 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (30452436)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 膵癌 / 微小循環癌細胞 / リキッドバイオプシー / ゲノム解析 / 人工知能 / バイオマーカー / テロメスキャン / シングルセル解析 / 腹腔内遊離癌細胞 |
研究開始時の研究の概要 |
切除可能(Resectable:R)-、切除可能境界(Borderline Resectable:BR)-および切除不能(Unresectable:UR)-膵癌患者を対象に抗癌剤、放射線療法など実臨床の治療過程での癌選択圧に暴露された癌切除標本内の癌細胞、腫瘍内非癌細胞のシングルセル解析を行うとともに、AI駆動liquid biopsyを応用し治療中リアルタイムにCTC, PTCを検出・モニタリングし包括的ゲノム解析を行い「がんの不均一性」「ゲノム進化」を重点的に探索し、癌微小環境理解を加味した個別化医療の確立をめざす。
|
研究実績の概要 |
【背景・目的】末梢血liquid biopsyとして循環癌細胞(CTC)がある。テロメスキャンを応用しR-およびBR-膵癌 (PK) 患者末梢血よりviabilityを加味したCTCの可視化に成功した。本研究ではPK患者におけるCTC検出の意義、原発腫瘍、癌転移リンパ節、CTCを含めたPD-L1発現分布を解析した。【治療・対象】根治切除できたPK 39例を解析した。Upfront surgery群[Up群]では術前/後に、NACRT群[N群:RT+GEM+S-1]ではNACRT前/後・術後の3点解析した。【結果】[Up群]男/女=12/12、計24例、年齢中央値73歳。術前/後共にCTC陰性例は6例で腹膜再発1例を除く5例全例無再発生存した。術前/後のいずれかまたは術前/後両点でCTC陽性例は18例で、内13例は根治切除できたが術後早期再発した。 [N群]男/女=4/11、計15例、年齢中央値は67歳。5例で3点すべてCTCを認めず、全例無再発生存した。NACRT前よりCTC陽性6例では、5例がNACRT後CTC数が有意に増加、3例で早期肝転移再発した。いずれかの検出点でv-CTC 陽性の10例では3例のみ再発した。[PD-L1発現] Up群:18例、N群:3例を解析した。Up群原発腫瘍での発現は0%/10%/20%/40%=6/6/4/2例で、CTC発現率は術前/後=97%/81%で高率であった。リンパ節では12例でリンパ節転移を認め、内4例のみ微弱発現していた。N群原発腫瘍では全例陰性で、CTC発現率はNACRT前/後/術後=50%/96%/50%であった。2例でリンパ節転移を認めたがPD-L1は陰性であった。【結語】治療前CTC遊出の有無によりRTを用いるか否かの治療選択が可能で、免疫checkpoint阻害剤によるCTC targeting効果が期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵癌予後を予測するバイオマーカーとして注目されている血中微小循環癌細胞(CTCs)を検出する検査法を確立できた。すなわち、新しいリキッドバイオプシー技術であるテロメスキャン(OBP-401)を用いて特異的に生きた癌細胞検出する方法を確立できた。さらに、これまでは癌細胞の検出を目視法で行っていたが、CYBO社との共同研究で開発したAI: TCAS-1を用いて染色した細胞をスクリーニングし、生きたCTCs検出法を樹立することができ、大幅に細胞選定の作業効率がアップした。 また、α-gal-GDを応用した糖鎖医薬の創製については、4種類のGlcNAc修飾グルカンデンドリマー(GD10-N10, GD10-N20, GD10-N40, GD35-N15)にα-galエピトープを結合させ、最もヒト抗原提示細胞が認識しやすいα-gal-GD分子をα-gal-GD10-N40に決定できた。今後は、膵癌ワクチン療法に用いられているMUC1ペプチドに結合させα-gal-GD-MUC1複合体を合成する。このワクチンマテリアルを用いて抗MUC1抗体誘導の有無を確認していく。 上記のように、研究計画に沿って概ね順調に進捗していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
AI駆動リキッドバイオプシーについては、T-CAS1細胞検出ソフトを応用して、より高速に、より正確にテロメスキャンで蛍光発症させた微小循環癌細胞を検出できるシステムを構築していく。この検査法構築には、やはり血中の癌細胞を特異的に濃縮し、テロメスキャンで感染、蛍光染色させる必要があり、細胞処理法の改良も進めていく。最終目標は臨床応用できる技術に進展することを目指す。 また、2022年度でヒトに認識されやすいα-gal-GDをα-gal-GD10-N40に決定できた。このα-gal-GDをMUC1 peptideさらに膵癌分子標的薬に結合させ、膵癌細胞をターゲティングできるα-gal-GD複合体を探求する。MUC1との結合については、通常使用されている長さのペプチドで抗腫瘍免疫を誘導できるか、長いペプチドでのMUC1で、生体内での分解速度が遅いMUC1とα-gal-GDとを結合させる必要があるのか探求していく方針である。また、より強力な抗腫瘍免疫を誘導すべくT cell epitopesも追加結合させ、腫瘍特異的CD8 CTLの誘導も可能であるか探求していく。 さらにリポソームワクチンの合成、実験動物投与にも広げていく。
|