研究課題/領域番号 |
22K08829
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
遊佐 俊彦 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特定研究員 (20867204)
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研究分担者 |
山下 洋市 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (00404070)
中川 茂樹 熊本大学, 病院, 特任助教 (10594872)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 肝細胞癌 / 腫瘍微小環境 / 腫瘍関連好中球 / 腫瘍関連マクロファージ / CD8陽性Tリンパ球 / 制御性T細胞 / 腫瘍免疫 / がん微小環境 / 免疫細胞分離 / 抗腫瘍免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでProspectiveにdatabaseを構築してきた症例を基に、免疫組織学的に様々な免疫担当細胞を対象として癌の進展とこれらの細胞の関連性を調べ、肝細胞癌の進展に関わる免疫担当細胞としてどの細胞が重要となるかのスクリーニングを広く行う。またこれらから得られた結果を用いて予後予測モデルを作成する。免疫回避機構に関わる重要なメカニズムとして、抗PD1に関わるメカニズムがこれまでに明らかとなっており、PD1、PD-L1と他の免疫細胞とのかかわりについても調べる。最終的に明らかとなった、検討目的となる免疫担当細胞を組織より分離して、腫瘍組織内もしくは腫瘍外における標的免疫担当細胞の機能的な特性を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究は、肝細胞癌において腫瘍内部および腫瘍周囲の双方で免疫細胞の局在を調べ、臨床病理学的因子との関連性や予後に与える影響について明らかにすることを目的とした。2022年度は組織に浸潤する免疫細胞の評価として、免疫染色を用いた検討を行った。2004年から2013年に当科にて初回肝切除術を施行したHCC患者225例を対象とし、切除検体のパラフィン組織を用いた免疫染色にて免疫細胞の局在・浸潤の程度と患者背景因子や予後との対比を行った。各免疫細胞間の関連性としては、腫瘍辺縁部においてTAN,TAMは相関関係を、TANとCD8+ T細胞は逆相関関係を示した。また、予後についての検討では腫瘍辺縁部のTAN、TAMが多い症例やCD8+ T細胞が少ない症例においては有意に予後不良であった。腫瘍辺縁部における4種の免疫細胞についてRisk- signatureを作成すると、High-risk群はLow-risk群と比較して有意に予後不良であった。上記内容についてはまとめて論文化し、Cancer Science誌にAcceptされた。 腫瘍組織からのTANを中心とした免疫細胞分離についてはMACSを用いた分離により免疫細胞の形態学的および機能的な確認と、精製度の向上を目指した。しかし好中球はN1/N2 TANとしての特性に関する報告が少ないこともありマーカーを用いた分離の確立には至らなかった。末梢血からの免疫細胞分離についてはFicollおよびPolymorphprepを添加・遠心することで形態学的評価において純度の高い検体を得ることが可能であった。これらの知見を生かし今後は組織および末梢血中の免疫細胞の分離プロトコールを確立し、得られたサンプルによる網羅的解析を検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は免疫細胞群の関連性の評価と、Risk signature作成までの結果を論文化し、論文投稿や修正・再投稿に時間を要した。論文は無事にacceptとなったが、免疫細胞の種類として免疫細胞以外の組織構成細胞や因子について、さらにはPD1やPD-L1といった腫瘍免疫と関連する因子については評価することができなかった。また、腫瘍組織からのTANを中心とした免疫細胞分離についてはMACSを用いた分離によりギムザ染色およびFlow cytometryにて分離した好中球の形態学的および機能的な確認と、精製度の向上を目指した。しかし好中球、特にN1/N2 TANとしての特性に関する報告が少ないこともありマーカーを用いた分離精度の確認に難渋した。高純度にて単一細胞を分離することは、切除組織内の局在が免疫細胞の機能変化にどのように影響するかを検討する際に重要であるため、今後の課題とされる。一方、末梢血からの好中球分離については健常ドナーのサンプルを用いてFicollおよびPolymorpoprepを添加・遠心することで形態学的評価において純度の高い検体を得ることが可能であったが、Polymorpoprepを使用することで顆粒球を効率よく分離することができることもわかった。
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今後の研究の推進方策 |
新鮮組織からの免疫細胞分離についてはその時間的制約もあるため十分なサンプル収集までに時間が必要である。先ずは分離プロトコールを確立して効率よく組織検体および末梢血からのサンプル・データ収集を進める。また、免疫細胞群の予後への関連がどのようなメカニズムによって説明されうるかについて、血球分離のみならず、免疫染色などの方法も用いながら検討を進めていく。
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