研究課題
基盤研究(C)
大腸癌のConsensus molecular subtype (CMS) に基づくと、MYC遺伝子を伴うCMS2、代謝経路改変を特徴とするCMS3は、糖代謝阻害剤の治療対象となり得る。本研究では、大腸癌に対するPrecision medicineとして、CMS2/3に対する糖代謝阻害剤を用いた抗腫瘍効果メカニズムの解明、In vivoでの代謝阻害剤を用いた抗腫瘍効果、臨床検体におけるCMS2/3の代謝活性と生命予後の関係を評価する。本研究の目的は、大腸癌CMS2/3における代謝経路に関する新規バイオマーカーの同定と糖代謝阻害剤を用いた新規治療法の開発である。
本研究の目的は、大腸癌CMS分類に基づいた新規バイオマーカーの同定と糖代謝阻害剤を用いた新規治療薬の開発である。PCRおよび免疫染色を用いたCMS分類において、CMS1とCMS2-3の識別における主要因子であるMSIの測定を、DNA sequencer ABI PRISM 3130xl Genetic Analyzerを用いてBAT25、BAT26プライマーを用いて行った。原発巣切除を行った大腸癌256例において、MSI high 30例(12%)、MSS/MSI low 266 (88%)であった。MSI highは、CD 3陽性細胞が多い傾向(p=0.059)を認め、CD 8陽性細胞は有意に発現が上昇していた(p=0.019)。細胞障害性抗癌剤に耐性を示すことが多いCMS1大腸癌の特徴であるMSI highの頻度、MSI high大腸癌における、腫瘍関連リンパ球の発現の関係、および再発予後との関係が明らかにした。免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の薬剤感受性因子の同定は重要な課題であり、同研究に付随し、CMS1に相当するMSI high症例に対して、ICIである、IpilimumabとNivolumabを用いて治療を行い、肝転移巣が病理学的CRを得られた症例の免疫染色を行った。CD8、HLA class I、HLA-DR、PD-L1、PD-L2、CK5/6、p40、p63の免疫染色を行ったところ、原発巣、肝転移巣にPD-L1の発現を認めたが、肝転移病巣にのみHLA-DR、CK5/6、p40、p63の発現を認めた。CK5/6、p40、p63の発現は、いずれも扁平上皮癌と関係すると報告されている。上記研究において、ICIが著効した症例の蛋白発現の変化を示した。ICIは扁平上皮癌に強い治療効果を示すことが多く、同因子が薬剤感受性と関係する可能性を示した。
2: おおむね順調に進展している
CMS1に相当するMSI high症例において、免疫チェックポイント阻害剤が著効した症例において、CD8、HLA class I、HLA-DR、PD-L1、PD-L2、CK5/6、p40、p63の免疫染色を行い、CK5/6、p40、p63の発現上昇を確認した。同結果は、薬剤感受性の重要な因子の同定につながる新しい知見である。本研究結果は、学会発表を行うとともに、論文発表を行った。研究は概ね順調に進んでいると考える。
大腸癌における新規治療薬の開発および薬剤感受性の評価のために、研究計画書に沿って研究を進める。CMS3において、RAS遺伝子変異に伴う代謝経路改変が癌の増殖に関係すると報告されている。代謝経路改変と鉄代謝、腸内細菌との関係、および代謝阻害剤を用いた腫瘍抑制効果に関して、研究を進めている。
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