研究課題/領域番号 |
22K08862
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
神山 篤史 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (50647005)
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研究分担者 |
渡辺 和宏 東北大学, 大学病院, 講師 (30569588)
豊原 敬文 東北大学, 医工学研究科, 特任講師 (60594182)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 潰瘍性大腸炎 / 人工腸管 / 抗菌ペプチド / 腸内細菌叢 / 回腸嚢炎 / 人工腸 |
研究開始時の研究の概要 |
潰瘍性大腸炎(UC)の発生メカニズムは未だ不明である。腸内細菌叢の変化などの外的因子と宿主因子のバランスの乱れに加えて、宿主由来の未だ特定されていない因子が発症に関与することが推察される。一方でUCに対して手術を施行後の慢性期には、疾患特異的に回腸嚢炎が発生する。申請者らは回腸嚢炎が小腸の大腸化を介したUCの再燃であると推察してこれまで外的因子を中心に研究を行なってきたが、回腸嚢炎はまさにUCの発症早期モデルになりうる。本研究では、UCの発症に至る宿主の発症関連因子をUC患者由来iPS細胞より作製した「人工小腸」と申請者の回腸嚢炎に関する知見を組み合わせることで解明する。
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研究実績の概要 |
潰瘍性大腸炎(UC) の発症メカニズムを解明するために、UCの発症早期モデルと想定される回腸嚢炎に着目して研究を行っている。これまでの研究で、UC型腸内細菌叢と通常型腸内細菌叢が存在することを回腸嚢炎での検討から明らかにしている。UC型腸内細菌叢を改善することでUCの発症予防や再燃抑制が可能となるという仮説に基づき、そのための手段としてヒト由来腸管上皮細胞による人工腸での腸内細菌叢との共培養を行い、内因性抗菌ペプチドの定量を行っている。 共培養における宿主側の腸管細胞の準備として、ヒトiPS細胞由来小腸細胞は富士フィルム社より購入できるF-hiSIECを使用することとし、培養可能であることを確認した。同細胞は従来の腸管細胞株Caco2よりも遺伝子発現が生体の腸管細胞に近いという優位性がある。一方で、大腸細胞は市販品が存在しないため、ヒトiPS細胞より大腸オルガノイドの分化誘導を行った。この誘導法ではHindgut endoderm時にCDX2陽性細胞が60%以上あることが好ましいがこの基準を超えて誘導できることを確認し、その先のオルガノイド作製まで成功している。 一方で、腸内細菌は嫌気性菌が主体であるため、嫌気培養との共培養が可能となる人工腸の実験系を検討した。嫌気条件と好気条件の両方で培養可能な人工腸チャンバーを用いることを想定して、フィルターメンブレン上で腸管細胞を培養できる条件設定を行った。まずは予備実験としてCaco2細胞を用いてフィルターメンブレンの種類、播種細胞数、培地の検討を行い、経上皮電気抵抗(TEER)の値が目標値となるように最適化を行った。そのうえで人工腸モデルの予備実験として平面培養のF-hiSIECにLactobacillus helveticus の死菌を添加して内因性抗菌ペプチドの1つであるヒトβディフェンシンの遺伝子発現量を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒトiPS細胞由来を由来とした小腸細胞や大腸オルガノイドへの分化誘導などのヒト腸管細胞の準備は順調に行われている。しかし、平面培養のヒトiPS細胞を由来とした小腸細胞を用いた人工腸での共培養では、Lactobacillus helveticusによるβディフェンシンの誘導を認めることができなかった。この検討では、添加24時間後では特に遺伝子発現にばらつきが認められ、死菌を使用した場合でも長期の共培養では結果にばらつきを生じる可能性を示唆していた。 このため、長期の共培養が可能な人工腸モデルや腸管細胞の播種密度、Lactobacillus helveticusなどの腸内細菌の添加量などの条件設定が必要であると考えられ、こちらの検討を繰り返し行っている。これらの条件設定に時間を要したために予定より進行がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である潰瘍性大腸炎の発症初期のメカニズムを解明するために、ヒト腸管上皮細胞による人工腸と腸内細菌との安定した共培養系を開発するとともに、いわゆる「通常型腸内細菌」による抗炎症作用にも期待して、RELMβやディフェンシンなどの抗菌ペプチドの発現量や炎症性サイトカインの定量を行っていく予定である。 ヒト腸管上皮細胞や共培養系の準備は順調に行われているが、長期共培養が可能な人工腸モデルや腸管細胞の播種密度、Lactobacillus helveticusをはじめとする腸内細菌の添加量などの条件設定が必要であると考えられるため、こちらの条件設定を次年度も引き続き行っていく予定である。 さらに次年度は「UC型腸内細菌」を用いた共培養も行い、炎症の主体となる腸内細菌を同定する方針である。また、健常人もしくは潰瘍性大腸炎患者由来の腸管上皮細胞を用いて作成した人工腸において、健常人もしくは患者由来の便検体を播種して共培養をそれぞれ行う。各共培養の結果から内因性抗菌ペプチドや炎症性サイトカインの発現量の比較を行い、潰瘍性大腸炎の発症のメカニズムを明らかにしていく予定である。
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