研究課題/領域番号 |
22K08873
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
香川 俊輔 岡山大学, 大学病院, 准教授 (00362971)
|
研究分担者 |
寺石 文則 岡山大学, 大学病院, 講師 (40432661)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 消化器癌 / 転移 / 好中球 / 癌微小環境 / 血小板 |
研究開始時の研究の概要 |
胃癌、大腸癌等の消化器癌は転移することでその病状を悪化させるため、癌の転移、進展のメカニズムの解明と治療標的の探索は重要な課題である。好中球が起こす好中球細胞外トラップ(Neutrophil Extracellular Traps:NET)という現象が癌転移へ関与することが最近報告されており、それに着目した研究を行う。癌とその周辺環境の中でNETが癌細胞の性質を変化させたり、癌が転移を形成することを助けたりする作用を詳細に研究して、その意義を明らかにする。研究を通してNETが関与する癌の転移形成メカニズムの中で癌治療につながる重要な因子を見つけ、その制御方法を探るのが本研究の概要である。
|
研究実績の概要 |
腫瘍微小環境(TME)は癌の進展、転移に関わる重要な要素である。TMEを構成する細胞の中には好中球が含まれるが、好中球が癌細胞との相互作用で引き起こすNeutrophil cellular trap (NET)と、その癌転移における役割が本研究の対象である。そして本研究の目的は、TME内でNETが消化器癌転移へ作用する機序を解明し、NET制御のための治療標的の探索から癌転移を抑制しうる臨床に応用可能な治療戦略の創出することである。研究対象の消化器癌として、今なお予後不良であらたな治療戦略が求められている胆道癌に着目した。胆道癌症例の切除標本のパラフィン切片で、好中球マーカーである抗myeloperoxidase (MPO)抗体、NETに特異的な抗citrullinated histone H3抗体と用いて蛍光染色し、その定量化を試みた。画像解析による定量化でNETの高値群と低値群に分けて予後等を検討したが両群に有意な差はなかった。ヒト胆道癌細胞株とヒト好中球による共培養ではNETの誘導が観察されなかったが、そこに血小板が加わるとNET形成が確認されることが観察され、癌細胞、血小板、好中球の間での相互作用について解析した。癌細胞と血小板が直接結合することで、血小板が活性化され、その結果好中球にNETが引き起こされることが確認された。それに対して抗血小板作用薬であるAspirin、Ticagrelorを血小板に作用させたところ、血小板の活性化が抑制され、癌細胞との共培養下でのNET誘導も抑制された。NET制御のための治療標的として、血小板がその候補となる可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的であるNET制御のための治療標的の探索の成果として、癌が引き起こすNETへの血小板の関りを明らかにすることができた。また臨床で用いられる抗血小板薬にNETを抑制する作用を確認することができ、計画通りの一定の成果が得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
1. これまでに得られた研究成果を論文として報告すること。 2. 癌と好中球の関係性だけではないNET誘導の新たなメカニズムをさらに追及する。具体的には臨床検体で確認されたNETの局在解析では、主に腫瘍辺縁の間質内でNETがされていることから、癌関連線維芽細胞のNET形成への関与も推察されたため、癌関連線維芽細胞のNET誘導への関連の有無を検証する。 3. NETと消化器癌転移の関係を検証するための動物モデルの作製とその検証方法の確立を行う。
|