研究課題/領域番号 |
22K08895
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
上田 貴威 大分大学, 医学部, 准教授 (30625257)
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研究分担者 |
衛藤 剛 大分大学, 医学部, 准教授 (00404369)
駄阿 勉 大分大学, 医学部, 教授 (10217218)
白石 憲男 大分大学, 医学部, 教授 (20271132)
川崎 貴秀 大分大学, 医学部, 助教 (40646642)
猪股 雅史 大分大学, 医学部, 教授 (60315330)
河野 陽子 大分大学, 医学部, 医員 (90727281)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | Sarcoid-like reaction / 好中球数/リンパ球数比 / 胃癌 / 大腸癌 / 消化管癌 / 免疫チェックポイント阻害薬 / 免疫応答 |
研究開始時の研究の概要 |
我々は、胃癌の所属リンパ節において、サルコイド肉芽腫に酷似した組織学的変化 Sarcoid-like reaction(以下、SR)の発現が、胃癌患者の予後や組織学的分化度ならびに免疫学的指標と相関することを見いだし、SR発現は宿主の胃癌に対する免疫反応性を示すものであるとの仮説を提唱し、報告した(Itai Y et al, J Surg Oncol, 2021)。本研究では、消化管癌におけるSR発現の免疫学的機序を解明し、消化管癌の進展と制御に関する新たな知見を得る。さらに、SR発現と免疫チェックポイント関連分子との相関を明らかにし、消化管癌におけるSR発現をKeyとした新たな治療戦略の開発を行う。
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研究実績の概要 |
我々は、胃癌の所属リンパ節において、サルコイド肉芽腫に酷似した組織学的変化 Sarcoid-like reaction(以下、SR)の発現が、胃癌患者の予後や組織学的分化度ならびに免疫学的指標と相関することを見いだし、SR発現は宿主の胃癌に対する免疫反応性を示すものであるとの仮説を提唱し、報告した(Itai Y et al, J Surg Oncol, 2021)。しかしながら、SR発現が他の消化管癌にも認められるのか、また認められる場合その臨床的意義や免疫学的意義、さらに予後との関連の有無は未だ明らかではない。また、近年、免疫チェックポイント阻害薬を使用後にSR発現を認めた症例が報告されており、SR発現と免疫チェックポイント関連分子の相関も明らかにする必要がある。 本研究では、消化管癌におけるSR発現の免疫学的機序を解明し、消化管癌の進展と制御に関する新たな知見を得る。さらに、SR発現と免疫チェックポイント関連分子との相関を明らかにし、消化管癌に対する多様な化学療法において、消化管癌におけるSR発現をKeyとした新たな治療戦略の開発を行うことを目的としている。 まず、胃癌と同様にcommon malignancyである大腸癌のリンパ節におけるSR発現の有無、さらに近年、予後との密接な関連が指摘されている好中球数/リンパ球数比(neutrophil-to-lymphocyte ratio: NLR)とSR発現との関連の有無を合わせて検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに胃癌391例、大腸癌395例のうち、郭清したリンパ節(胃癌10149個、大腸癌6586個)におけるSR発現の有無を検討した。結果、SR陽性は胃癌67例(17.1%)(リンパ節332個(3.3%))、大腸癌17例(4.3%)(リンパ節32個(0.5%))であった。胃癌では、SR陽性群では有意に平均年齢が高く(p=0.002)、分化型腺癌が多かった(p=0.013)。大腸癌では、SR陽性群では、高齢者(80歳以上)(p=0.041)とNLR(p=0.026)で有意差を認めた(NLRはROC解析を用いてcut off値を設定し、高値群(NLR≧3.05)と低値群(NLR<3.05)に分類)。また予後に関しては、75歳以上の高齢者胃癌症例においては、SR陽性群の方が有意に3年全生存率は良好であった(SR陽性群85% vs. SR陰性群63%、p<0.05)。80歳以上の高齢者大腸癌においては、有意差はなかったものにSR陽性群の方が5年全生存率は良好であった(SR陽性群100% vs. SR陰性群68.9%、p=0.201)。 これまでの検討より、消化管癌におけるSR発現は、高齢者において予後良好の指標となりうることが示唆されている。また、NLRとの関連から、SR発現が宿主の全身的な免疫反応の活性化を反映している可能性を考えている。 このように、大腸癌におけるSR発現の有無と意義を明らかにしており、現在までの進捗状況はおおむね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
SR発現は宿主の免疫反応との関連が示唆されたが、詳細な免疫学的機序に関しては不明である。そのため、今後は胃癌・大腸癌ともに免疫学的機序の解明を行っていく。またこのSR発現と免疫チェックポイント関連分子との相関も明らかにし、消化管癌における新たな治療戦略の開発を行う。 さらに、食道癌についても、同様にSR発現の有無、およびSR発現と臨床病理組織学的因子との関連の有無の検討を行う。
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