研究課題/領域番号 |
22K08902
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
倉増 敦朗 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (90302091)
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研究分担者 |
吉村 清 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (30346564)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ヒスタミン / ヒスタミンH1受容体 / 抗ヒスタミン薬 / 免疫チェックポイント阻害薬 / PD-1 / 抗PD-1抗体 / 抗腫瘍免疫 |
研究開始時の研究の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬は、宿主の免疫細胞機能を抑制するシグナル伝達を阻害することにより抗腫瘍効果を示すが、奏効率が低いことが課題である。がんゲノムデータベースを利用した独自の解析から、ヒスタミンH1受容体シグナルの抑制が膵癌患者の予後を改善する可能性が示唆された。本研究では、免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果に対する抗ヒスタミン薬の増強効果を検証する。既存薬再開発に繋がる可能性があり、有用性を証明できれば、免疫チェックポイント阻害薬との併用によって、より多くのがん患者を救うことができる。
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研究実績の概要 |
近年注目されている免疫チェックポイント阻害薬は、宿主の免疫細胞機能を抑制するシグナル伝達を阻害することにより抗腫瘍効果を示すが、奏効率が低いという課題がある。公開がんゲノムデータベースより得たデータを用いて、ヒスタミンH1受容体高発現群とヒスタミンH1受容体低発現群で、RNAシークエンスデータを比較したところ、H1受容体低発現群では、腫瘍浸潤リンパ球が多いことが予想された。H1受容体拮抗薬はH1受容体低発現量を低下させるので、免疫チェックポイント阻害薬の併用が治療効果を向上させる可能性があると考えた。本研究は、抗アレルギー薬として広く用いられているヒスタミンH1受容体拮抗薬が、免疫チェックポイント阻害薬の効果を増強する可能性について検討する。 本年度は、マウス乳がん細胞4T1皮下移植モデルを用いて、抗PD-1抗体単独治療群と抗PD-1抗体とH1受容体拮抗薬セチリジンの併用治療群を比較した。4T1はトリプルネガティブ乳がん細胞であり、散発性に肺や骨など遠隔臓器に転移する。本モデルマウスでは、抗PD-1抗体療法に対してセチリジンの併用で肺転移による死亡率が33%減少し、原発巣に対する腫瘍増大抑制作用を認めた。また、同モデルでは骨への転移も認められ、セチリジンと抗PD-1抗体併用群では対照群に比較して骨量の減少が有意に抑制された。一方、尾静脈から腫瘍細胞を注入する肺転移モデルでは、群間で生存率に差は認められなかった。この結果は、がん細胞の浸潤転移能に抗ヒスタミン薬が影響する可能性を示唆する。さらにIn vitroでは、ヒト乳がん由来線維芽細胞 (CAF) において、セチリジンは、いくつかの細胞外マトリックス(ECM)関連遺伝子発現を濃度依存的に減少させた。セチリジンの作用機序として、CAFからのECM産生の抑制が関与している可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス乳がんモデルを用いた解析で、抗ヒスタミン薬と抗PD-1抗体の併用による治療効果増強を確認することができた。予定通りの成果が、得られている。今後は、機序の解明を行う。
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今後の研究の推進方策 |
セチリジンが抗PD-1抗体の効果を増強する作用が、H1受容体によるものであることを別の抗ヒスタミン薬を用いて検討する。また、H1受容体ノックアウトマウスを用いて、同様に検討する。
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