研究課題/領域番号 |
22K08963
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55030:心臓血管外科学関連
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
中村 隆 東京医科大学, 医学部, 助教 (30772371)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 炎症 / EP4 / toll-like受容体 / IL-6 / 腹部大動脈瘤 / 血管平滑筋細胞 / 血管平滑筋 / toll-like receptor |
研究開始時の研究の概要 |
腹部大動脈瘤は致死率の高い進行性の疾患である。プロスタグランジンE2受容体EP4シグナルなどを介する慢性炎症が進行に寄与することが知られている。さらに、腹部大動脈瘤に感染症が併発すると、瘤の致死的な破裂につながる。しかしながら、腹部大動脈瘤の進行に関与する詳細な分子メカニズムはいまだ解明されておらず、治療薬の開発に至っていない。そこで、本研究では腹部大動脈瘤の進行に関与する様々な炎症性シグナルが相乗効果的に炎症を増幅させるためのカギとなるシグナルクロストークの分子メカニズムを明らかにする。本研究成果により炎症増幅機構という新たな切り口からの治療戦略を提案することが可能になる。
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研究実績の概要 |
研究代表者が所属する研究室では腹部大動脈瘤の慢性炎症に、血管平滑筋細胞におけるプロスタグランジンE2受容体EP4シグナルが関与していることを明らかにしてきた。血管平滑筋特異的にEP4を過大発現させたマウスではアンジオテンシンIIの負荷により高確率にて腹部大動脈瘤の破裂を生じる。一方、腹部大動脈瘤になにかしらの感染が伴うことで腹部大動脈瘤の急激な拡大および破裂率の上昇を生じることが臨床研究において多数報告されている。また、病原体の認識に関与するtoll-like受容体 (TLR)シグナルは腹部大動脈瘤の悪化に関与することが基礎的研究にてこれまでに報告されている。そこで、血管平滑筋細胞のEP4シグナルを介する慢性炎症をTLRシグナルが増悪させるという仮説のもと、本研究を行なった。TLRはサプタイプにより認識する病原体が異なる。そこで、グラム陽性菌の認識に関与するTLR2、グラム陰性菌に関与するTLR4、ウイルス感染に関与するTLR3に特異的なアゴニストを用いて、これらTLRシグナルとEP4シグナルによる炎症増悪の有無を評価した。EP4過大発現血管平滑筋細胞にEP4アゴニストとTLR2アゴニストを同時に投与したところ、腹部大動脈瘤の炎症に関与する炎症性サイトカインであるIL-6のmRNA発現量が、単剤投与に比較して顕著に上昇することが明らかとなった。さらに、TLR3およびTLR4アゴニストにおいてもEP4アゴニストと相乗的にIL-6 mRNAの増幅を引き起こすことが明らかとなった。また、野生型フェノタイプのマウス大動脈より単離した血管平滑筋細胞にEP4アゴニストおよびTLR4アゴニストを投与したところ、IL-6 mRNAの相乗的増幅が認められた。以上のことから、血管平滑筋細胞においてEP4シグナルとTLRシグナルによる相乗的IL-6産生を介する炎症増悪機構の存在が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、EP4シグナルの炎症を増幅させる上流シグナルを明らかにすることができた。また、炎症増幅機構に関与する転写機構の解明のため、転写因子の阻害薬を用いた検討を開始している。また、同様にプロスタグランジンE2-EP4シグナルの下流に存在するシグナルに関しても阻害薬を用いた検討を開始している。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、初年度で開始した炎症増幅に関連する転写因子およびプロスタグランジンE2-EP4の下流シグナルの同定を進めていく。また、EP4およびTLRシグナルにて相乗的に増幅される炎症性サイトカインの網羅的探索を行う。さらに、3次元血管モデルや腹部大動脈瘤の動物モデルを用いてEP4およびTLRシグナルによる炎症増幅機構の病態的意義を確認する。
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