研究課題/領域番号 |
22K09001
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55040:呼吸器外科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岩崎 駿 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (40882254)
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研究分担者 |
出口 幸一 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (00747082)
奥山 宏臣 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30252670)
中山 泰秀 大分大学, 医学部, 客員研究員 (50250262)
岩井 良輔 岡山理科大学, フロンティア理工学研究所, 講師 (60611481)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 気管移植 / 気管形成術 / 上皮再生 / 組織工学 / 軟骨培養 / 軟骨再生 / 気管組織再生 / 再生医療 |
研究開始時の研究の概要 |
自己の細胞のみから構築され、かつ、培養気管軟骨を有することで耐圧強度も有するscaffold-freeの『気管模倣組織体』を開発し、気管への全周性移植により半年以上の長期生存を得ることに成功しており、この新規の気管模倣組織体の移植後の組織学的変化を経時的に捉えることでscaffold-freeの気管グラフトの再生機序を明らかにする。得られる成果は、組織再生科学に新たな知見を与え、気管再生治療の確立に向けた組織工学技術への貢献も期待される。
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研究実績の概要 |
昨年に作製したモデル全て観察期間を終えた。昨年度の報告後も観察期間を終了するまでに、呼吸音が完全消失したモデルは認めなかった。全モデルともに検体回収して組織解析を進めたところ、外観としては、生存モデル全例で術後1か月の時点で気管内腔の狭窄は認めなかった。組織解析では、気管模倣組織体および生体気管では術後3ヵ月には線毛細胞ならびに腺細胞の再生が進み、6か月の時点では正常気管と同程度の分布が確認できた。この間、軟骨細胞は維持され、壊死組織も確認されなかった。また、気管模倣組織体は、生体気管移植モデルと同様に明らかな異物反応・拒絶反応を起こすことなく経過した。その一方で、ポリ乳酸-カプロラクトン共重合体のモデルでは、術後6か月モデルにおいても気管上皮が薄く確認はされたものの、線毛細胞や腺細胞の再生は認められず、軟骨細胞の再生も認めなかった。加えて、術後3ヵ月以降では分解物周囲に炎症が惹起され、粘膜下組織の著名な肥厚が確認され、免疫染色でも炎症傾向にあることが確認された。壁厚の差をHE染色結果を用いて確認したところ、有意差までは得られなかったが、壁厚の増大傾向はポリ乳酸-カプロラクトン共重合体の群で唯一継続していた。なお、軟骨の石灰化については、気管模倣組織体の術後6か月モデルで石灰化が確認されたが、正常気管軟骨も石灰化範囲が認められており、強度に対する影響については不明である。ただ、気道内圧には十分耐え得るものであることは本実験で確認された。 これらの結果より、気管模倣組織体が気管グラフトとして有効である可能性を有すると一方で、気道環境における人工材料の使用リスクの高さを客観性・再現性をもって確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検体回収・処理、ならびにその解析にわたって滞りなく進めることができた。当研究のフィードバックとして、再生までに3-6か月程度の期間を要することが懸念点ではあるが、上皮再生や炎症の経過など再現性をもって確認しており、研究目的を達成できていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
再生までの期間についての懸念点もあるが、今回自己気管の再生期間をみても多少速度の差はあるにしても、ほぼ同等であった。ゆえに、グラフトとしての有効性をこれ以上高めることは困難である可能性が高い。何かしら再生速度を加速させる工夫ができる可能性はあるが、それは生体をバイオリアクターに代替して発案された簡便な手法であるという独自開発のグラフトの利点そのものが覆ってしまうことに繋がり得る。 そもそも全周性移植の手術手技について詳細に言及された報告がない。我々は、気管周囲組織を可能な限り温存し、愛護的操作で生体気管を用いた手術手技を実施したところ、80%が半年以上生存したことを確認し、術後の体重増加が得られたことも確認している。 この工夫した手術手技を用いて、改めて本グラフトを用いた全周性気管移植を実施することで、真の客観的な全周性移植後の経過を観察し得る。次年度において気管模倣組織体を用いた新しい術式での気管全周性移植を現在計画中である。
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