研究課題/領域番号 |
22K09024
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
中野 裕子 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (70529205)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 慢性痛 / 遷延性術後痛 / 注意欠如/多動性障害 / 慢性疼痛 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では遷延性術後痛の原因を明らかにし、予防や治療に役立てることを目指しています。遷延性術後痛とは手術後に長引く痛みのことであり、日常生活の質を下げる原因となりますが、明らかな原因が分かっていません。生体には内因性鎮痛系という、痛みを抑制する仕組みが存在し、この機能が低下していると慢性痛の原因となることが知られています。このため、内因性鎮痛系の機能低下があると手術後の痛みが長引きやすいのではないかと考えています。研究への参加に同意いただいた手術前の患者様を対象に、質問票の記入と内因性鎮痛系の機能測定を行い、術後の痛みとの関連を調べます。痛みが長引く場合には追加の検査を行い、原因を調べます。
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研究実績の概要 |
2022年度は55症例でADHDスコアと内因性鎮痛機能の評価を行った。採択前に蓄積した症例と合わせて中間解析を行った。【方法】189名(男性106名, 女性83名) (年齢67.83±12.28歳) (2018年8月~2022年10月) を対象にコナーズ成人ADHD尺度(CAARS) を用いてADHDのスクリーニングを行い、その陽性率と、陽性群と陰性群の間で各痛み関連スコアに差があるかを後ろ向きに検討した。CAARS-S(患者回答)かCAARS-O(家族回答)のいずれかの下位尺度得点が65点を超えた場合にADHD陽性とした。痛み関連尺度としてVAS(visual analog scale)、HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)、PCS(Pain Catastrophizing Scale) を用いた。【結果】CAARS-S/O両方を実施できた155名を解析対象とした。62名(40.0%)でADHD陽性であった。HADSの不安(A)、うつ(D)、PCSの尺度はいずれも陽性群で有意に高値であった(HADS-A:陽性群 7(4-12) vs陰性群 5(3-8), p<0.01, HADS-D:陽性群 9(6-11) vs陰性群 5(4-8), p<0.001, PCS:陽性群36(29-42) vs 陰性群32(24-38), p<0.01)。VAS は有意差がなかった(陽性群60.5(38-80) vs 陰性群52(25-75), p=0.13)。(Mann-WhitneyのU検定を使用)【考察】整形外科外来の慢性痛患者においてもADHDは高頻度に併存する可能性がある。ADHD陽性群では不安・うつ・破局的思考を示すスコアが有意に高く、ADHDの併存は慢性痛の症状に関与する可能性がある。ADHD併存の慢性疼痛は、脳内のドパミンやノルアドレナリンの神経伝達を調整するADHD治療薬によって大きく改善し得ることが報告されており[Kasahara S, et al. Psychosom Med. 2020]、精神科医との連携が必要である。整形外科疾患の慢性疼痛診療においてもADHDスクリーニングは治療方針の決定に有用な可能性がある。今後も引き続き症例を蓄積し、調査を継続する予定である。本研究成果については、2023年6月に開催される、日本麻酔科学会第70回学術集会で発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は55症例でADHDスコアと内因性鎮痛機能の評価を行った。採択前に蓄積した症例と合わせて189名(男性106名, 女性83名)を対象として中間解析を行うことができた。過去に当院麻酔科外来に紹介された脊椎外来通院患者80名をサンプル調査したところ実際に手術を施行されたのは50名であった。そのうち再手術でない症例は36名であった。これまでの報告では、遷延性術後痛の発症は術後患者の10-50%と幅広い。仮に対象者の50%に初回手術が行われ、うち25%に遷延性術後痛が発症すると仮定すると、蓄積した対象者189名においては、概算で23~24名で遷延性術後痛が発症する可能性がある。今後も症例を蓄積し、追跡調査を行う。また、中間解析としてADHDスコアと慢性痛の症状についても検討を継続する方針である。本研究ではさらに、遷延性術後痛を発症した患者で脳SPECTを行う計画である。123I-FP-CIT(ダットスキャン)を用いて、黒質線条体ドパミン神経終末部のドパミントランスポーター分布密度を評価し、遷延性術後痛の病態の解明と画像診断の確立を目指す。本研究の目的の達成により、遷延性術後痛の予測を可能とし、診断、治療法の開発につながる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、当院脊椎外来通院中の患者で対象者の募集を継続する。術前にADHDスコアと内因性鎮痛機能を評価し、術後の痛みの重症度との関連を検討することで、遷延性術後痛の予測因子として応用することを目指す。また、痛み関連スコアとADHDの関連性についても中間解析を行い、成果については積極的に報告する。
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