研究課題/領域番号 |
22K09061
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
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研究機関 | 秋田県立循環器・脳脊髄センター(研究所) |
研究代表者 |
佐々木 一益 秋田県立循環器・脳脊髄センター(研究所), その他部局等, 主任研究員 (80738948)
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研究分担者 |
上村 和紀 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (10344350)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 蘇生後脳症 / 内因性オピオイドネットワーク / 脳保護 / 脳蘇生 / 虚血再灌流障害 / 心肺蘇生 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、予後不良な蘇生後脳症の病態形成機序を解明する目的から、内因性オピオイドネットワークに着目する。具体的に、蘇生後脳症の病態形成機序への μ、κ、δ の 3 種類のオピオイド受容体の役割について、各受容体遺伝子を欠損させたマウスで作成した蘇生後脳症モデルにて包括的表現型解析に着手し、その全容を明らかにする。本研究を遂行する事で、作動薬・拮抗薬を用いたアプローチでは為し得なかったオピオイド系の脳神経細胞保護作用についての議論に決着をつけ、蘇生後脳症に苦しむ患者の予後改善に寄与する内因性脳保護機序に着目した治療法開発への新たな可能性の扉を開く事を目標とする。
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研究実績の概要 |
心肺停止蘇生後脳症の予後を改善する有効な治療法は未だ存在しない。先行研究では、オピオイド系の脳や脊髄における虚血再灌流障害に対する作用について相反する議論が展開されており、その結論には至っていない。 本研究の意義は、先行研究で実施されてきた虚血再灌流障害に対する抗炎症薬や抗酸化薬などを用いた薬物療法の有効性評価とは異なる、生体に備わる生理機能(生体防御機能)に着眼する点にある。換言すると、本研究の目的は、生体内で多面的な生理機能を発揮する事が知られている、内因性オピオイド・ネットワークが蘇生後脳症の有効な治療法開発につながる標的分子であるか否かを明らかにする事である。 前年度は、μオピオイド受容体遺伝子欠損マウスの野生型とホモ型を用いて、カリウム製剤投与による8分間の心肺停止蘇生モデルを作製し、蘇生率、蘇生72時間後までの生存率、蘇生前後の生理学的パラメーター値(血圧、心拍数、体温、呼吸数など)、神経行動異常について検証を行った。その結果、両群の蘇生率、生存率、神経行動異常の程度が8分間の心肺停止蘇生モデルを用いて検証を行った先行研究で報告されている成績よりも高い(軽度な)傾向にあり、群間(野生型 vs. ホモ型)における各項目に明確な違いは認められなかった。また、脳病理組織像においても、先行研究で報告されている結果とは異なり、野生型ならびにホモ型の両者において神経細胞の脱落などは軽微であった。従って、今年度は10分間の心肺停止蘇生モデルを作製し、前年度と同様の項目についてデータ収集を行った。 今年度は、本研究課題の発案時には着眼しなかった視点に基づき、研究に取り組んだ。即ち、今年度の実験は、時間軸(全脳虚血時間)も勘案した包括的な視点から、μオピオイド系が蘇生後脳症の治療標的分子であるか否かを明らかにする事に着手した実験であったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、前年度の実験結果に基づく推察から、本研究計画立案時には予定していなかった実験を実施する事となった。即ち、「研究実績の概要」に記述したように、時間軸(全脳虚血時間の長短)も勘案した検証を行う事で、本研究で掲げた科学的課題の解決に寄与する包括的なデータが得られる可能性がある。従って、現在までの研究進捗は、おおむね順調であると考えられる。但し、現段階の懸念事項として、μオピオイド受容体遺伝子欠損マウスの繁殖率が低下している事が挙げられる。この点については、発生工学や繁殖学の専門家からの助言を受けながら問題解決段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度と同様にμオピオイド受容体遺伝子欠損マウス(野生型、ホモ型)を用い、10分間の心肺停止蘇生モデルを作製し、今年度と同様の項目についてデータ収集ならびに解析を継続する予定である。また、現段階において確固たるデータの提示には至らないが、自己心拍再開後の血圧維持の成否が全脳虚血後の再灌流障害の病態形成機序に影響を与えている可能性がある。従って、心肺停止蘇生後の虚血再灌流障害の病態形成において、内因性オピオイド系が関与する血圧調節機能の役割についても検証すべき事項であり、そのアプローチについて検討段階である(心肺停止蘇生後の虚血再灌流障害の病態形成機序における内因性オピオイド系を介した血圧調節機能の役割の解明のみならず、蘇生後の安定した血圧維持法の開発についても予備検討段階である)。また、今年度は、前年度の報告にて触れた、オピオイド系の心筋保護作用について検証する事ができなかったため、可能な限りその検証を行う予定である。このように、心肺停止蘇生後の虚血再灌流障害の病態形成機序に内因性オピオイド・ネットワークが関与するか否かを明らかにするためには、脳のみならず心血管系にも着目した検証が必要になる可能性がある。従って、それらを踏まえ、本研究課題に着手する予定である。
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