研究課題/領域番号 |
22K09064
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山本 純偉 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50402376)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 腕傍核 / 全身麻酔薬 / カルシウムイメージング / 麻酔薬 / 侵害情報伝達 / 光遺伝学 |
研究開始時の研究の概要 |
全身麻酔薬は脊髄・脳幹・大脳など中枢神経系に作用し、鎮痛をもたらすと考えられているが、全身麻酔薬が脳のどこで、どのように作用し鎮痛作用を生み出しているのかはよく分かっていない。近年、神経科学研究の進歩により、その侵害情報伝達経路として、脊髄―腕傍核―扁桃体経路が重要であることが分かってきた。しかし、全身麻酔薬がこの経路にどのように作用し、侵害情報を変化させているのかはほとんど分かっていない。本研究は、カルシウムイメージング法とパッチクランプ法を用いて、全身麻酔薬とその鎮痛補助に最も頻用されるオピオイドが、腕傍核にどのように作用し、扁桃体への侵害情報伝達を変化させるかを明らかにすることを目指す。
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研究実績の概要 |
全身麻酔薬は中枢神経系に作用し、鎮痛をもたらしていると考えられているが、全身麻酔薬が脳のどこで、どのように作用して鎮痛作用を生み出しているのかはよく分かっていない。手術による侵襲は、末梢の侵害受容器から脊髄を通り大脳に伝えられ、痛みとして認識されるが、近年、侵害情報伝達経路として、脊髄―外側腕傍核―扁桃体経路が重要であることが分かってきた。全身麻酔薬はこの経路に何らかの作用を及ぼし、鎮痛作用をもたらしている可能性が高いことが予想される。しかし、全身麻酔薬がこの経路にどのように作用し、侵害情報を変化させているのかはほとんど分かっていない。そのため、本研究ではカルシウムイメージング法とパッチクランプ法を用いて、全身麻酔薬腕傍核にどのように作用し、扁桃体への侵害情報伝達を変化させるかを明らかにすることを目指している。さらに、全身麻酔薬の作用を鎮痛補助として最も頻用されるオピオイドがどのように全身麻酔薬の作用を修飾するのかも明らかにしたいと考えている。 本年度は、実験のベースとなる技術の確立を目標として研究を進めた。カルシウムイメージング法を用いて外側腕傍核の神経細胞への麻酔薬の作用を明らかにするため、マウスの外側腕傍核へカルシウムインジケータのGCaMPを発現するAAVウイルスを注入した。数週間後、ウイルスを注入したマウスの腕傍核を含む急性脳スライス標本を作製し、観察を行い、高カリウム溶液を潅流投与し、カルシウムインジケータが働くことも確認した。また、CGRP-CreマウスへカルシウムインジケータのGCaMPとともにDIO-mCherryを注入し、CGRP陽性細胞と非陽性細胞の識別して観察を行えることも確認した。 パッチクランプ法の準備として、外側腕傍核にDIO-ChR2-EYFPを注入したマウスの扁桃体中心核の急性脳スライスを作成し、パッチクランプを行い光刺激で反応が記録できることも確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は実験のベースとなる実験技術の確立をめざした。 本研究では外側腕傍核のカルシウムイメージングにより麻酔薬の外側腕傍核への作用を明らかにする計画である。そのため、まず外側腕傍核にアデノウィルスを用いてカルシウムインジケータのGCaMPを発現させ、外側腕傍核の急性スライス脳標本の作製し、観察を行った。高カリウム溶液の潅流投与により、神経細胞を脱分極させ、細胞内カルシウム濃度を上げ、カルシウムインジケータが働くことも確認した。 また、外側腕傍核から扁桃体へ侵害刺激を伝達する神経細胞の多くがCGRP陽性であることが知られていることから、外側腕傍核の神経細胞の中でもCGRP陽性細胞への麻酔薬の作用が注目される。それを明らかにする準備として、CGRP-CreマウスへGCaMPとともにDIO-mCherryを注入し、CGRP陽性細胞が赤色蛍光を発するようにし、緑色蛍光のGCaMPと赤色蛍光のmCherryを同時に撮影することでCGRP陽性細胞と非陽性細胞を識別して、カルシウム応答の解析ができることを確かめた。しかし、外側腕傍核がスライスの外縁に近いため、潅流によると思われる蛍光強度の変化などがみられたため、グリットや潅流速度、潅流方法など改善の必要がある。また、麻酔薬は神経細胞に対して抑制的に働くことが予想されるため、GCaMPを用いて麻酔薬の作用を調べるためには、あらかじめある程度、カルシウム濃度を上げた状態で麻酔薬を投与する必要がある。高濃度カリウム溶液の潅流投与によりカルシウム濃度を上げることを考えているが、どの程度のカリウム濃度の溶液が良いか、まだ定まっていないため、それを決める必要がある。これらの課題は残るものの、今後の研究を進めていくための技術的な準備を概ね整えることができたので総じて順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在、カルシウムインジケータを用いて外側腕傍核の神経細胞に対して麻酔薬がどのように作用を明らかにすることを考えているが、麻酔薬は細胞の興奮性を抑える方向に働くことが予想される。そのため、作成した急性スライス脳標本を高カリウム溶液を潅流投与し、あらかじめ細胞をある程度興奮させた状態で麻酔薬を投与し、それによるカルシウム応答の変化により麻酔薬の作用を明らかにすることを予定している。そのため、実験に適切な高カリウム溶液のカリウム濃度を確定する必要がある。今後、本年度に確立した実験系を用いて、多様な麻酔薬のうち、まず、投与が簡単な静脈麻酔薬を用いて、外側腕傍核の神経細胞への作用をカルシウム応答を介して調べる予定である。 また、最近、それは膜電位が下がると蛍光強度が上がるタイプの新しい膜電位感受性色素が販売された。自分が調べたい麻酔薬の作用を見るためにはカルシウムインジケータよりも適していると考えられるので、それらを用いて実験を行いたいと考えている。ただし、現在、新しい膜電位感受性色素はプラスミドでしか販売されていないので、AAVにパッケージングする必要がある。パッケージングメーカーや機関を調べ、そちらも並行して進めてゆきたいと考えている。
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