研究課題/領域番号 |
22K09090
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大橋 宣子 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (70706712)
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研究分担者 |
馬場 洋 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00262436)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 脊髄損傷後疼痛 / 脊髄後角ニューロン / N型電位依存性カルシウムチャネル / 電気生理学実験 / 電位依存性カルシウムチャネル / 脊髄ニューロン |
研究開始時の研究の概要 |
脊髄損傷後疼痛は難治性の慢性疾患であり、その発生機序も未解明であるが、これまでに脊髄損傷後疼痛における脊髄ニューロンのシナプス伝達の変化を直接的に検討した研究はない。脊髄損傷後疼痛の発症機序を検討するにあたり脊髄のシナプス可塑性変化を解明するには、痛覚伝達に関与する様々な神経伝達物質の反応の変化や下行性疼痛抑制系の関与もシナプスレベルで検討していく必要がある。本研究の目的は、脊髄損傷後疼痛の発症過程で生じる脊髄のシナプス可塑性変化について行動学、免疫組織学、電気生理学実験により多角的に検討することで、脊髄損傷後疼痛の病態解明に寄与することである。
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研究実績の概要 |
脊髄損傷後疼痛の発症に脊髄の可塑性変化が指摘されているが、これまでに報告されている研究は、免疫組織学や行動学実験により脊髄の神経終末における電位依存性カルシウムチャネル発現の上昇や下行性疼痛抑制経路の遮断が疼痛の発症と関連していると間接的に検討したのみであり、実際に脊髄内カルシウム濃度の変化や神経伝達物質の分泌を観察し、直接的に脊髄ニューロンのシナプス伝達の変化を検討した研究はない。本研究の目的は、脊髄損傷後疼痛の発症過程で生じる脊髄のシナプス可塑性変化について行動学、免疫組織学、電気生理学実験により多角的に検討することで、脊髄損傷後疼痛の病態解明に寄与することである。 まず初年度では、脊髄損傷後疼痛モデルラットの作製の確立および行動学実験を行い、ω-conotoxin MVIIAのくも膜下投与により痛み閾値の改善を認めたため、脊髄損傷後疼痛の発症過程に脊髄におけるN型電位依存性カルシウムチャネルの関与の可能性が示唆された。 次年度では、脊髄損傷後疼痛の発症過程における脊髄のN型電位依存性カルシウムチャネルの関与を解明するために、主に電気生理学実験を用いてメカニズムを解明した。具体的にはラットのin vivo脊髄標本を用い、顕微鏡下に電極を脊髄後角に誘導し、細胞外記録を用いて活動電位の発生頻度の変化を観察した。またラットの脊髄横断スライスを用いて脊髄後角からのin vitroパッチクランプ記録を行い、興奮性シナプス後電流および抑制性シナプス後電流を観察した。またこれらの反応が、ω-conotoxin MVIIA の投与によりどのように変化するか観察した。その結果、脊髄損傷後疼痛に対しω-conotoxin MVIIAは脊髄後角のシナプス前終末に存在する興奮性ニューロンを抑制することで、脊髄レベルで鎮痛効果を発揮することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度では脊髄損傷後疼痛モデルを確立することが目的であり、Th10高位をimpactorにより脊髄に圧挫を加えることで不全脊髄損傷モデルを作製し、確立した。さらに行動学実験を行い、作製した脊髄損傷後疼痛モデルラットの痛み閾値をvon Freyにより測定し、ω-conotoxin MVIIAのくも膜下投与により痛み閾値の改善を認めた。そのため脊髄損傷後疼痛の発症過程に、脊髄におけるN型電位依存性カルシウムチャネルが関与している可能性を明らかにすることができた。 次年度では、脊髄損傷後疼痛の発症過程における脊髄のN型電位依存性カルシウムチャネルの関与を解明することが目的であり、主に電気生理学実験を用いた。具体的にはラットのin vivo脊髄標本を用い、顕微鏡下に電極を脊髄後角に誘導し、細胞外記録を用いて活動電位の発生頻度の変化を観察した。またラットの脊髄横断スライスを用いて脊髄後角からのin vitroパッチクランプ記録を行い、EPSCおよびIPSCを観察し、さらにAδ, C線維の後根刺激による単シナプス性EPSCを記録した。その結果、脊髄損傷後疼痛に対しω-conotoxin MVIIAは脊髄後角のシナプス前終末に存在する興奮性ニューロンを抑制することで、脊髄レベルで鎮痛効果を発揮することが明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は脊髄損傷後疼痛の発症過程で生じる脊髄のシナプス可塑性変化について行動学、電気生理学、免疫組織学実験により多角的に検討することで、脊髄損傷後疼痛の病態解明に寄与する事である。 まず初年度の令和4年度では脊髄損傷後疼痛モデルラットの作製を確立し、さらに行動学実験により脊髄損傷後疼痛の発症過程に、脊髄におけるN型電位依存性カルシウムチャネルが関与している可能性を明らかにすることができた。次年度である令和5年度では、脊髄損傷後疼痛の発症過程における脊髄のN型電位依存性カルシウムチャネルの関与を解明するために、主に電気生理学実験を用いてメカニズムを解明した。その結果、脊髄損傷後疼痛に対しω-conotoxin MVIIAは脊髄後角のシナプス前終末に存在する興奮性ニューロンを抑制することで、脊髄レベルで鎮痛効果を発揮することが明らかになった。 最終年度である令和6年度では、免疫組織学実験により脊髄損傷後疼痛の発症過程に脊髄におけるN型電位依存性カルシウムチャネルが関与するか多角的に検討していく予定である。具体的には痛み刺激により発現することが知られているリン酸化extracellular signal-regulated kinase (pERK)抗体を用いて免疫染色を行う。光学顕微鏡下に脊髄損傷後疼痛モデルラットの脊髄後角浅層におけるpERK陽性細胞数を計測し、pERKの発現の変化を観察する。これらのpERKの発現がω-conotoxin MVIIAの投与により、どのように変化するか検討していく予定である。また、Ca2+イメージングも行い、Ca2+感受性色素で染色した脊髄横断スライスによりCa2+濃度の変化を空間的広がりも含めて評価する予定である。
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