研究課題/領域番号 |
22K09091
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
重見 研司 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (00206088)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 左心室内圧容量関係 / 左心室大動脈結合状態(VAカップリング) / 左心室収縮能 / 実効大動脈エラスタンス / 左心室拡張末期容量 / 心原性ショック / 左心室収縮末期エラスタンス / 心機能 / 心収縮能 / モニタ / 低侵襲 / 心原生ショック |
研究開始時の研究の概要 |
従来、全身麻酔中の低血圧は、その原因によって、循環血液量減少性、心原性、心外閉塞・拘束性、血液分布異常性などに分類され、診断には、知識や暗記力、経験を必要とした。特に、心原性ショックについては除外診断であることが多かった。一方、これまでに、研究代表者は、等容量収縮期時間 (PEP)および駆出時間(ET)、収縮末期圧(Pes)、拡張末期圧(Ped)から左心室大動脈結合状態(Ees/Ea)を算定する近似式を報告した。今回、日常臨床の全身麻酔中の生体情報モニタから得られるPEP、ET、Pes、Padに1回拍出量を加え、心機能を直接求める方法を確立し、定量的な心原性ショックの診断を可能にする。
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研究実績の概要 |
従来、全身麻酔中の低血圧(ショック)は、循環血液量減少性ショック、心原性ショック、心外閉塞・拘束性ショック、血液分布異常性ショック等に分類され、原因によるものなので分かり易いが、羅列的で系統立っておらず、相応の知識と暗記力、臨床経験を必要とした。特に、心原性ショックについては、除外診断であることが多かった。一方、申請者は、2000年にHayashiらと非侵襲的に左室動脈結合状態(Ees/Ea)を測定する方法(Hayashi et al. Anesthesiol 2000; 92:1769-76)を開発し、その結果を臨床で活用することを目的として、科学研究費助成事業(基盤研究(C)、16K10954)を得て、これを臨床応用する研究を進めてきた。本方法は、等容量収縮期時間(PEP)および駆出時間(ET)、収縮末期圧(Pes)、拡張末期圧(Ped)から近似式を用いてEes/Eaを算定するが、臨床応用がおくれたのは、算定値のバラツキが大きく、計算が不安定であったからである。しかし、PEPの測定値のバラツキが大きいこと、近似式の解を得る範囲が狭いこと、計算プログラムに用いた言語の処理速度が遅いことなどが原因であることが判明し、安定してEes/Eaの値が得られるようになった。今回、日常臨床の全身麻酔中の生体情報モニタから得られるPEP、ET、Pes、Padに1回拍出量(SV)を追加し、心機能(Ees)を算定する新しい測定方法を確立する。加えて、いずれも、実際の臨床症例で、連続的に得られるパラメータであるから、オンラインで、連続的に、循環動態のモニタとして、直接心機能が測定され、より早い心原性ショックの診断が可能になり、合わせて、その対処の根拠となる具体的なデータが得られることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
自作の測定装置は、生体情報モニタからオンラインで取り込んだ心電図波形と動脈圧波形形および心音図波形から、Ees/Eaを算定してトレンド表示すると同時に、平均血圧とEes/Eaの関係を表示することができ、あわせて、同時にEes、EaおよびVedが計算できるようになり、それを、左心室内圧容量関係(LVPVR)として、傾きEesおよびEaの2直線で囲まれた三角形としてグラフ(簡易LVPVR)として表示できるようになった。それぞれのグラフの有用性が明らかとなったので、表示画面を切り替えることなく、算定された各パラメータのトレンドグラフと、Ees/Eaと平均血圧の関係図および簡易LVPVRを同時に常時表示できるようにした。たとえば、プロットが左上に向かって伸びている。これは、エフェドリンの効果を示し、血圧の上昇と同時にEes/Eaの低下、すなわち後負荷(Ea)の増加を表している。このようにEes/Eaが求められるので、動脈圧波心拍出量測定装置(フロートラック、エドワーズ社製)のSVをもとにしてEaが定量化できたので、Eesも求められた。そこで、同時に、一心拍毎に簡易なLVPVRもグラフとして表示した。ただし、心音図を必要とし、食道聴診器を用いるため、ノイズの混入は少ないが、装着がやや侵襲的であり、たとえば、麻酔導入前の患者が覚醒状態で測定することが困難であるので、胸壁から心音を採取する工夫が必要である。一方、血圧を規定する3要素は、安定してサンプリングできるようになったので、その有用性を証明する段階になったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、非(低)侵襲的に、日常の臨床において、Ees、EaおよびVedを簡便にモニタし、麻酔中の循環管理に役立てることが目的である。これまで、これら3要素について、グラフ表示して循環状態を把握していたが、研究結果を検討する過程において、グラフを式で表示すると、Pm = Ved / {(/Ees) + (1/Ea)} と簡単な式が得られることが分かった。従来、1回拍出量を調節することを主眼として循環パラメータを検討していたため、経験や勘を含む総合的な評価が必要であったが、血圧を調節することに焦点を絞ることにより、上記の式を得ることができ、3要素をそれぞれモニタし、調節すれば、任意の血圧が得られることや、各パラメータと血圧の関係が定量的に把握・予測でき、また、心機能(Ees)に正常値を代入すれば、前負荷(Ved)が求められること、Vedを近似できれば、Eesが求められることなど、応用範囲が広く、今後、新しいモニタの開発が期待される。その一環として、Vedを見積もる方法として、全身循環のパラメータである、平均循環充満圧(Psf)や有効循環血液量(Ve)を求める方法を検討し、VedとPsfの関係や、VedとVeの関係を明らかにすることで、PsfやVeからVedを近似でき、それはすなわち、Eesのモニタに直結していることが分かっているので、今後、その研究・開発も必要と考えられる。データ収集には、心電図と動脈圧波形、心音図が必要であるが、胸壁聴診器を開発することで、さらに応用範囲が広がることが期待できる。また、動脈圧波形をパルスオキシメータの脈波で代用することができれば、動脈穿刺が不要となり、非侵襲的なモニタが実現する。
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