研究課題/領域番号 |
22K09092
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
坪井 ちづ 神戸大学, 医学部附属病院, 医学研究員 (80941773)
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研究分担者 |
野村 有紀 神戸大学, 医学研究科, 講師 (60643955)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 神経障害性疼痛 / 後根神経節 / マクロファージ / β2アドレナリン受容体 / 遷延性術後痛 / 慢性疼痛 |
研究開始時の研究の概要 |
遷延性術後痛は、頻度の高い術後合併症であるにも関わらず、その分子機構は未だ明らかではない。本研究では、炎症細胞の一種であるマクロファージが、感覚細胞体が存在する後根神経節に浸潤し、神経細胞へ作用することが術後痛遷延の重要な因子であると考えた。特にマクロファージにおけるβ2アドレナリン受容体シグナルの変化がマクロファージの動態にどのような影響を及ぼし、疼痛の遷延に関係するかを明らかとする。これにより、疼痛軽減のための新たな治療ターゲットが得られる可能性が期待できる。
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研究実績の概要 |
遷延性術後痛(chronic postsurgical pain:CPSP)は、術後患者の10%以上に発症し、そのうち約2%が難治性の疼痛を患う。発症の一因として、急性期痛による交感神経系の緊張および炎症細胞およびグリア細胞による神経炎症が、痛みの慢性化に寄与している可能性が指摘されている。一方、末梢および中枢の免疫細胞には共通してβ2アドレナリン受容体が存在し、 細胞機能に重要な役割を持つ。また神経障害性疼痛においては、後根神経節へのマクロファージの浸潤が発症の要因であると報告されている。本研究では遷延性術後痛モデルマウスを用いて、急性痛から慢性痛への移行過程での、後根神経節おけるマクロファージの動態変化およびβ2アドレナリン受容体とそのシグナルの関与を解明することを目的としている。 遷延性術後痛の要因の一つに神経障害性疼痛があり、まずは神経障害性疼痛モデルマウスを作成しβ2アドレナリン受容体作動薬の鎮痛効果と後根神経節におけるマクロファージの動態変化を検討した。神経障害性疼痛に伴うアロディニアはβ2アドレナリン受容体作動薬の投与により緩和された。免疫学的染色では、後根神経節でマクロファージ浸潤の減少が確認されたが、現状動態変化については結果が得られていない。またqPCRでは後根神経節で炎症性サイトカインの低下や抗炎症性サイトカインの増加が確認された。現在フローサイトメトリーを用いて、後根神経節におけるマクロファージの浸潤程度や動態変化を観察中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年に引き続き遷延性術後痛モデルにおける疼痛様行動評価や後根神経節の解析については、疼痛モデルが確立している神経障害性疼痛モデルマウスを用いて行った。β2アドレナリン受容体作動薬の投与によりアロディニアは緩和され、薬剤投与スケジュールは文献を参考に術前後投与と術後2週間後投与の2通りのスケジュールが確立できた。 β2アドレナリン受容体作動薬投与により、術前後投与群の後根神経節ではマクロファージの浸潤が減少する傾向にあることが確認できた。またqPCRにおいても後根神経節で炎症性サイトカインのmRNA発現量の有意に減少していた。 術後2週間後投与群では、qPCRで抗炎症性サイトカインのmRNA発現量が有意に増加していた。 マクロファージの動態変化については未だ確認できていない。
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今後の研究の推進方策 |
神経障害性疼痛モデルマウスに対し、β2アドレナリン受容体作動薬を投与し抗アロディニア効果を発揮したマウスを作成する。β2アドレナリン受容体がマクロファージの極性変化や機能変化にどのように関わっているかを調べるために、後根神経節、坐骨神経、脊髄などの組織を用いフローサイトメトリーによるマクロファージの極性の解析を行う予定である。 電子顕微鏡を用いて、後根神経節内でのマクロファージの浸潤の形態学的な観察も行う予定である。 同様の実験系をマクロファージ特異的β2アドレナリン受容体欠損マウスでも行う予定としている。
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