研究課題/領域番号 |
22K09105
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
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研究機関 | 明治国際医療大学 |
研究代表者 |
林 和子 明治国際医療大学, 臨床医学講座, 客員講師 (40285276)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 超低周波 / 脳波 / 複雑系 / 非線形解析 / 徐派振動分析 / カオス / リアプノフ指数 / エントロピー / 緩徐波 |
研究開始時の研究の概要 |
脳は皮質膜電位の動態変化によるUP、DOWN状態を交互に繰り返し、1Hz以下の緩徐振動を生じる.このグローバルな超低周波帯域の緩徐波は、第5層皮質ニューロンやアストロサイト、抑制性皮質介在ニューロンを介して生成され、皮質視床構造やその他の皮質下の脳構造を巻き込み、皮質集合体を同期協調させながら皮質表面を伝播する.麻酔の主要な作用機序の一つは、このUP/DOWNの動態、即ち皮質膜電位水準に直接介入することである.本研究は、高齢者の異なる麻酔深度における1Hz以下緩徐波の動態を、前頭と頭頂の2領域において解析し、高齢者の麻酔深度推定法の開発に繋げる.
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研究実績の概要 |
麻酔や睡眠中、脳は皮質安静時膜電位の動態が変化することで生じるゆっくりとした1Hz以下の緩徐振動(slow oscillation)を生じ、麻酔の主要な作用機序の一つは、このUP/DOWNの動態、即ち皮質膜電位水準に直接介入することである。この緩徐振動は、皮質回路における複雑な因果関係に関わる主要機構であり、この振動の双安定性動態は、神経ネットワークの複雑性を反映することが想定される。このように、緩徐振動のダイナミクスと、複雑性との関係を検討することが必要である。 本年度は、徐波振動のダイナミクスを複雑系の視点から捉えるべく、セボフルラン麻酔中の脳波データのカオス解析とエントロピー解析を用いた脳神経動態の複雑性定量化を実施した。セボフルラン麻酔中の脳波データを、高濃度セボフルラン吸入下(深麻酔)と、低濃度セボフルラン吸入下(浅麻酔)の2段階の麻酔深度において解析し、lyapunov exponentsとapproximate entropyを算出することで、複雑系指標の変化を調べた。 その結果、深麻酔(セボフルラン高濃度)では、秩序性が増し、脳波のapproximate entropyは低下する一方で、脳波のカオス性が増大する(リアプノフ指数が増大)結果が得られた。一般に、秩序性が増加し、エントロピーが低下すると、カオス性は低下すると思われ、一見、矛盾するように見える。しかしながら、カオスや複雑性の定義や理解は単純でない。深麻酔時に、エントロピーの低下し、かつカオス性が増大する状態は、否定されるものではなく、その解釈と低周波振動との関連との更なる検討が今後必要と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
セボフルラン麻酔中の2段階の麻酔深度において、脳波データの複雑性定量化を、カオス解析(リアプノフ指数)とエントロピー解析から検討した結果、セボフルラン麻酔深度が深いと、秩序性が増大し脳波のエントロピーは低下する一方で、リアプノフ指数は増大することからカオス性の増大が示唆された。このように、一見、矛盾するように見える結果が得られた。これらの成果は、現在、投稿中である。エントロピーに反映される複雑性と、カオス性との乖離に関して、考察を深めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
投中の論文の掲載を進めるとともに、脳波収集とその低周波解析を実施し、複雑性解析と合わせて、脳波の麻酔薬の影響と覚醒意識等との関係を明らかにしてゆきたい。
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