研究課題/領域番号 |
22K09108
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55050:麻酔科学関連
|
研究機関 | 九州保健福祉大学 |
研究代表者 |
鬼塚 信 九州保健福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (20264393)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
|
キーワード | 免疫チェックポイント分子 / PD1 / PDL1 / CD80 / CD86 / セボフルラン / プロポフォール / リドカイン / 腫瘍免疫 / 免疫チェックポイント / 癌特異抗原 / 麻酔薬 / NF-κB |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要は以下に示す5項目である。 ①腫瘍細胞構築ベクターを用いたHLA同型腫瘍免疫モデルの作製。②麻酔薬の免疫チェックポイント分子の発現に及ぼす影響の検証。③麻酔薬の癌特異抗原の発現に及ぼす影響の検証。④麻酔薬の抗原提示に及ぼす影響の検証。⑤麻酔薬のNF-Kb活性に及ぼす影響の検証。
|
研究実績の概要 |
麻酔薬が腫瘍免疫に及ぼす影響は不明である。そこで、腫瘍免疫活性化に必要な免疫チェックポイント分子の発現量および局在を測定し、検証した。方法: Hela細胞を検体とした。麻酔薬の免疫チェックポイント分子への影響を検証すべく、各麻酔薬に48時間暴露した細胞からmRNAを抽出し、QT-PCR法で解析した。腫瘍免疫関連分子としてPD1、PDL1、CD80、CD86を標的とした。それぞれの分子のタンパク発現量および細胞内における局在をウェスタンブロット法および免疫蛍光染色法にて解析した。 結果: 免疫チェックポイント関連分子PD1は、リドカイン、セボフルラン、プロポフォールいずれもmRNA発現量の有意な減少が観られた、一方、PDCD1のリガンドであるPDL1は、リドカイン、セボフルランで有意な増加が観られた。CD80、CD86はリドカイン(100uM)、セボフルラン(5%)でmRNA発現が有意に増加した。 蛍光免疫法によるPD1およびPDL1の二重染色においては、PD1およびPDL1は癌細胞内において同様な分布を示した。リドカイン、セボフルランは、PDL1の発現増加を誘導した。 次に、ヒト白血球を用いて、抗原提示分子、サイトカイン、Th細胞マーカーの発現に及ぼす麻酔薬の影響を検証した。結果:QT-PCR法: MHCクラス2は、セボフルラン以外の麻酔薬で減少した。CD4は、セボフルラン、レミフェンタニル以外の麻酔薬で減少した。CD8は、セボフルランで増加した。蛍光免疫法においては、セボフルンではCD8の発現の増加が観察された。セボフルランは、MHC-クラス2、CD8を増加し、Th1反応を増強しうる。最も、Th細胞パラダイムに影響が少ないのはプロポフォールであった。今後の研究の方向性として、これら免疫チェックポイント分子の発現の変化が、腫瘍免疫にどのように変化を及ぼすのか探索する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題である麻酔薬の癌細胞における免疫チェックポイント分子に及ぼす影響について、Th細胞の比率が変化(Th細胞パラダイム)し、Th1優位であれば抗腫瘍性へ、Th2或は、Treg優位であれば腫瘍免疫抑制へ移行し得る。しかし、Th細胞パラダイムを介した腫瘍免疫に及ぼす麻酔薬の影響は、不明である。そこで、ヒト白血球を用いて、抗原提示分子、サイトカイン、Th細胞マーカーの発現に及ぼす麻酔薬の影響を検証した。この結果、QT-PCR法においては、MHCクラス2は、セボフルラン以外の麻酔薬で減少した(対照比:セボフルラン0.9+-0.3)。CD4は、セボフルラン、レミフェンタニル以外の麻酔薬で減少した(対照比:セボフルラン1.0+-0.4レミフェンタニル0.9+-0.4)。CD8は、セボフルランで増加した(対照比:セボフルラン1.3+-0.6)。蛍光免疫法においては、セボフルンではCD8の発現の増加が観察された。 結果として、セボフルランは、MHC-クラス2、CD8を増加し、Th1反応を増強しうる。最も、Th細胞パラダイムに影響が少ないのはプロポフォールであった。 以上の研究結果は、2022年度,第69回日本麻酔科学会(神戸市)において、発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の検討課題として、これら免疫チャックポイント分子の発現の変化が、腫瘍免疫にどのように影響するのかを、がん細胞および宿種側の相互作用を観察し、検討する。がん細胞および宿種側それぞれの細胞に、免疫チェックポイント分子を強制発現させて、腫瘍免疫増強や抑制の程度をTh細胞の比率の変化すなわちTh1優位であれば抗腫瘍性へ、Th2あるいは、Treg優位であれば腫瘍免疫抑制へとなる変化(Th細胞パラダイムシフト)や、それに伴う抗腫瘍作用の変化を検討する予定である。
|