研究実績の概要 |
今年度は、発症からの臨床経過を分単位で記録したデータベースをもとに急性脳症および熱性けいれんの臨床像を明らかにした。さらに、データベースと照合した患者試料(血清)を用いて、急性脳症における炎症性サイトカインの網羅的解析を行った。今年度の補助金は、上記のサイトカイン測定の試薬費や実験器具の購入費に充てられた。 入院を要した複雑型熱性けいれんの臨床像および血液検査所見を解析したところ、けいれん性てんかん発作を296例に認め、発作持続時間は中央値30.5分であった。意識障害持続時間は中央値175分であり、6時間、8時間、12時間以上の意識障害遷延を、それぞれ13.9%、7.6%、1.9%の症例に認めた。血液検査所見の中央値はそれぞれ、WBC 10,900/μL; AST 36U/mL Cre 0.26mg/dL; Glu 130mg/dL; pH 7.362であった。複雑型熱性けいれんにおいても、てんかん発作重積状態や数時間の意識障害が続く症例は多いが、12時間を越える意識障害遷延例は約2%と少数にとどまった。発症後72時間以内のサイトカイン動態の解析においては、IL-1β, IL-4, IL-5, IL-6, IL-8, IL-10, IL-17, eotaxin, FGF, GCSF, IFN-γ, IP-10, MCP-1の13サイトカインは発症後すぐに増加し,発症後12から24時間以内にピークとなった。 上記のように、臨床データと照合した症例蓄積と検体の回収システムが確立するとともに、熱性けいれんの臨床像および急性脳症における炎症病態についての新たな知見が得られた。
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