研究課題/領域番号 |
22K09139
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55060:救急医学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北村 哲久 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (30639810)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 救急医学 / 蘇生科学 / 院外心停止 / 臨床疫学 / レジストリ研究 |
研究開始時の研究の概要 |
院外心停止患者の社会復帰率をさらに上昇させるためには、画一的な治療だけではなく、患者の病態や血液データを評価したうえでの病院搬送後の集中治療の適応といった個別化医療のためのエビデンスを創出することは必要不可欠である。本研究では、研究代表者が中心となって構築している救命救急センター等に搬送された院外心停止患者の大規模前向き多施設共同レジストリを用いて、『個別化医療を目指した院外心停止後の社会復帰へのエビデンスの創出:包括的院外心停止患者レジストリを用いた研究』をすることで、院外心停止患者の個別化医療を目指した治療戦略に寄与するエビデンスを創出し、心肺蘇生ガイドライン改定にも貢献することである。
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研究実績の概要 |
本研究では、救命センター等に搬送された院外心停止患者の多施設共同前向きレジストリを用いて、『個別化医療を目指した院外心停止患者の転帰改善へのエビデンスの創出』することを目的とする。研究2年目となる令和5年度には、研究代表者ならびに研究協力者は、16施設から平成24年(2012年)7月~令和3年(2021年)12月までの9年半の期間の23,280症例のデータセットを構築した。 2012年から2020年までのデータセットを用いて、院外心停止患者の心停止原因を評価し、また蘇生後病院入院例において生存者と非生存者との比較を行った。18~90歳の非外傷性院外心停止患者12,252例を解析対象とし、8,005例(65.3%)が病院搬送時外来死亡、4,247例(34.7%)が蘇生後病院へ入院、1,293例(10.6%)が院外心停止発生30日後に生存していた。病院搬送時外来死亡例では、心原性疾患が84.8%(n=6,789:6,184 [77.3%] 推定心原性、605 [7.5%] 確定心原性)、非心原性疾患が15.2%(n=1,216)であった。蘇生後病院入院例では、心原性が73.2%(n=3,110)、非心原性が26.8%(n=1,137)であった。30日後生存者は、非生存者よりも心原性疾患が多く(85.7%[n=1,137]対67.8% [n=2,002]、p<0.001)、急性冠症候群の頻度が最も多かった。脳血管疾患は非生存者の9.8%を占め、特に36~64歳ではほぼ5分の1(n=144、17.8%)を占めた。 研究はおおむね順調に進んでおり、上述の研究結果については海外の学会報告として発表し、現在は論文投稿中である。このレジストリを用いて、バイオマーカーや病院搬送後の院外心停止患者に対する高度集中治療の効果についての様々な解析を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究2年目となる令和元年度において、23,280件のデータセットを構築した。 2012年から2020年までのデータセットを用いて、院外心停止患者の心停止原因を評価し、また蘇生後病院入院例において生存者と非生存者との比較を行った。9年半の間に発生した18~90歳の非外傷性院外心停止患者12,252例を解析対象とした。8,005例(65.3%)が病院搬送時外来死亡、4,247例(34.7%)が蘇生後病院へ入院、1,293例(10.6%)が院外心停止発生30日後に生存していた。病院搬送時外来死亡例では、心原性疾患が84.8%(n=6,789:6,184 [77.3%] 推定心原性、605 [7.5%] 確定心原性)、非心原性疾患が15.2%(n=1,216)であった。蘇生後病院入院例では、心原性が73.2%(n=3,110)、非心原性が26.8%(n=1,137)であった。30日後生存者は、非生存者よりも心原性疾患が多く(85.7%[n=1,137]対67.8% [n=2,002]、p<0.001)、急性冠症候群の頻度が最も多かった。脳血管疾患は非生存者の9.8%を占め、特に36~64歳ではほぼ5分の1(n=144、17.8%)を占めた。結論としては、外来で死亡した症例または蘇生入院後に死亡した症例と比較し、心停止30日後生存者では心原性疾患の割合が高かった。蘇生入院後の非生存者における心停止原因は、心停止30日後生存者よりも不均一であり、特に脳血管障害が多いことが明らかになった。 本解析は、共同研究者が2023年11月のヨーロッパ蘇生協議会にて発表を行い、現在は論文投稿中である。また、昨年の解析テーマのECPR施行有無と院外心停止発生1か月後生存との関係を評価した論文は、本年度にCritical Care誌にPublishすることが出来、研究はおおむね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
院外心停止患者の社会復帰率は約3%に過ぎず、有効な予後因子の探索ならびに評価し、個別化医療に役立つエビデンスを生み出すためには症例を集積し続けるしかない。令和6年4月現在、令和4年(2022年)に発生した大阪府下の救命救急センターからの約2000件のデータは既に集積しデータクリーニング済みである。総務省消防庁から2022年の院外心停止患者の病院前救護情報も取得する予定で、これらのデータ結合を実施し、2012年7月~2022年12月までの約25,000件超のデータセットの構築を行う予定である。研究代表者はこの大規模データを用いて、救命救急センターに搬送される院外心停止患者の詳細な心停止原因の評価や大阪と諸外国との患者の特徴や転帰を比較する解析の準備を進めている。加えて、その他のバイオマーカーや高度集中治療の効果についての探索的評価や機械学習を用いた解析も予定している。 平成24年(2012年)7月大阪府下の救命救急センターで始まったこの院外心停止患者レジストリは、平成26年(2014年)6月から日本救急医学会による学会ベースのレジストリに拡大し、全国レジストリとして約100施設から2014年から2021年までの症例約72,000症件が分析可能となっている。日本救急医学会とも連携を図りながら、様々なリサーチクエスチョンに対して機械学習など多面的な方法も用いたアプローチも行う。また、病院前救護における院外心停止患者の予後に関連する様々な因子についても多くの研究課題があり、これら研究課題についても集積されたデータ解析、論文化を進めて行く。研究成果の発信方法としては、英語原著論文、国内ならびに国際学会での発表を予定している。
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