研究課題/領域番号 |
22K09190
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55060:救急医学関連
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
小林 こず恵 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (60448975)
|
研究分担者 |
小久保 謙一 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (20287965)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | ECMO(人工肺) / 生体適合性 / 一酸化窒素 / 水素 / 臓器障害 |
研究開始時の研究の概要 |
体外循環による臓器障害を低減させ、心臓血管手術や血液透析などの体外循環を伴った治療を受ける患者の予後を改善させることである。その方法として、人工肺吹送ガスへのNOおよびH2ガスを添加する方法を用い、脳における酸化ストレスやアポトーシスの発生を低減できるかどうか明らかにすることを目的とする。本研究では、ラット体外式呼吸補助(Extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)モデルにおいて、人工肺吹送ガスに一酸化窒素(NO)ガスおよび水素(H2)ガスを添加することにより、脳障害が軽減されるか検討を行う。
|
研究実績の概要 |
本研究の最終目的は、体外循環による臓器障害を低減させ、心臓血管手術や血液透析などの体外循環を伴った治療を受ける患者の予後を改善させることである。その方法として、人工肺吹送ガスへのNOおよびH2ガスを添加する方法を用い、脳における酸化ストレスやアポトーシスの発生を低減できるかどうか明らかにすることを目的とする。本研究では、ラット体外式呼吸補助(Extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)モデルにおいて、人工肺吹送ガスに一酸化窒素(NO)ガスおよび水素(H2)ガスを添加することにより、脳障害が軽減されるか検討を行う。そのため、体外循環時の局所の血流障害による脳障害がどのような生体不適合反応により起こっているのか、また、それをNOやH2といった生理活性ガスを用いることで低減できるかどうか、局所臓器の血流障害の原因や実際の生体臓器と人工材料を使用したときの生体反応を比較検討し、その解離を埋める作業をすすめる。その一方で、生体システムや臓器機能の本質の理解を可能にするものであり、その作業を通じてを明らかにしていきたい。 本研究では、ラットECMOモデルにおいて、人工肺吹送ガスにNOとH2ガスを添加することにより、脳障害が軽減されるか検討を行う。体外循環時に局所臓器の虚血が起こり様々な臓器障害が起こることが知られているが、それを防ぐ方法は確立されていない。また人工肺におけるNOやH2放出の効果を判定するためには、in vivoでの実験が必要である。そこで、小型動物を用いたラットECMOモデルを用いて、人工肺のNOガスの効果を明らかにする本研究に着手した。それにより、臓器保護や抗炎症作用といった生体適合性改善の面でも効果が期待でき、救命救急領域においても有用であり、臨床的な意義も大きいと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、ECMO施行時のアポトーシスによる臓器障害の評価を中心に実験を行った。実験には雄性SDラットを使用した。脱血を右外頸静脈、送血を右大腿静脈から行った。実験対象群は、6時間麻酔管理のみを行うSham群と、2時間両側総頸動脈閉塞後に再灌流させ4時間麻酔管理する脳梗塞群(I群)、2時間の体外循環を行い、その後4時間麻酔管理する際、ECMO流量を1~2mL/minとした低流量群(L群)、6~8mL/minとした高流量群(H群)の4群とした。実験中は2時間おきにインターロイキン-6(IL-6)と神経特異エノラーゼ(NSE)の血清濃度を測定した。体外循環終了後に脳を摘出しTUNEL法によるアポトーシスの検出およびヘマトキシリン・エオジン(HE)染色を行った。IL-6濃度は、L、H群において循環後に上昇しており、体外循環による生体不適合反応により誘発されたと考えられた。NSE値がI群とL群、H群で上昇したことから、今回の条件は脳障害が発生する条件であったと考えられる。また、L、H群のNSE値より、体外循環に起因する脳障害は循環後すぐには生じず、体外循環終了後より経時的に進行したと考えられたが、この時点では、脳細胞のアポトーシスが起こるほどではなかったと考えられる。この原因として、今回は体外循環2時間、麻酔のみの観察4時間の計6時間の研究を行った。高流量群(H群)にて、脳傷害マーカーの有意な上昇が確認でき、またL群でも有意差がないまでにも上昇傾向が見られた。脳障害をNSE濃度で評価するには測定するタイミングが早かったのではないかと考える。そのため、今後時間単位の延長ではなく循環実験後1日や2日といった日数単位で観察期間の延長を検討し、脳障害の評価を行っていきたい。 今後の観察期間の延長に伴いラットを再び覚醒させる必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は、体外循環により高度の炎症を生じるラットV-V ECMOモデルを確立した。しかし、体外循環に起因する脳障害は循環後すぐには生じず、体外循環終了後より経時的に進行したと考えられたが、前年度の実験系では、脳細胞のアポトーシスが起こるほどではなかった。そこで、2023年度は前半は循環実験後1日や2日といった日数単位で観察期間の延長を検討し、脳障害の評価を行い、脳細胞のアポトーシスを評価できる実験系確立に取り組む。大規模な実験系の変更はないので、早期に実験系の確認が完了する予定である。ラットの脳アポトーシスの実験ではアポトーシス確認に1週間程度の観察期間を置くこと、ラット透析モデルにおける臓器障害に関する実験では、繰り返しの刺激が障害を増強すると報告があることを考えると、ラットECMOモデルのように侵襲度の高い実験系では、数日でかなりの頻度で臓器障害が起こると考えられる。 その後、NO及びH2ガスの臓器保護効果の評価、NOとH2ガスの組み合わせ最適濃度の評価を前述の確立した実験系を用いて行う。実験群は、Sham群(カニュレーションのみ)、Control群(O2 80%、N2バランス)、NO群(NO 80ppm、O2 80%、N2バランス)、H2群(H2 2%、O2 80%、N2バランス)、NO+H2群(NO 80ppm、H2 2%、O2 80%、N2バランス)の5群とする。人工肺への吹送ガスの組成のみを変化させ脳保護の評価を行う。高濃度のNOの細胞毒性を最小限に抑制し、人工肺の過凝固抑制と臓器保護や抗炎症作用の効果がある最適濃度を評価する。
|