研究課題/領域番号 |
22K09193
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分55060:救急医学関連
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研究機関 | 聖路加国際大学 |
研究代表者 |
一二三 亨 聖路加国際大学, 聖路加国際病院, 医長 (30383756)
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研究分担者 |
伊藤 隆史 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (20381171)
登尾 一平 熊本保健科学大学, 保健科学部, 講師 (00832007)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ヤマカガシ咬傷 / 抗毒素 / 血清療法 / 蛇毒咬傷 / DIC / 線溶 / ヤマカガシ毒素 / ヘパリン / アンチトロンビン / トラネキサム酸 |
研究開始時の研究の概要 |
重症ヤマカガシ咬傷は、40年間で34症例と極めて希な傷病であるが、その根本治療薬であるヤマカガシ抗毒素が投与されない場合、死亡率は約30%に上り、決して見逃すことはできない。しかしながら、現在日本国内で保管されているヤマカガシ抗毒素は、我々が2000年に試験製造したものであり、通常の抗毒素製剤の品質保証期限を大幅に超過しているため、いつ失活化してもおかしくない状況にある。また、再製造は時間や費用等の問題から全く目途が立たない状況下にあり、代替治療薬の検討が喫緊の課題である。ヤマカガシ咬傷に対し、根治的治療薬のヤマカガシ抗毒素に対する代替治療薬として有効なものを既存の薬剤の中から見つけ出す。
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研究実績の概要 |
ヤマカガシ咬傷は出血活性の毒性が強く、重篤な場合は線溶亢進型の汎発性血管内血液凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC))を起こして死に至る傷病である。その根治的治療薬であるヤマカガシ抗毒素は2000年に厚労省研究班にて製造した未承認薬のため、バイアル製剤の標準的な使用期限の10年を大きく超過していつ何時その効果が失活してもおかしくない状況である。そのため、近年DIC治療薬として臨床使用されているリコンビナントトロンボモジュリンα、メシル酸ナファモスタット、トラネキサム酸、アンチトロンビンを用いてヤマカガシ抗毒素の代替薬になりうるかどうかを調べることとした。本年度は、トラネキサム酸及びアンチトロンビンについて、我々が作成したラットDIC発症モデルを用いてヤマカガシ毒素の中和活性を調べるために、経時的に採血したラット血液の凝固系因子の測定を2回の実験、各4頭ずつ実施した。しかしながら、陽性対照群として置いたヤマカガシ毒素のみ投与群で、72時間、96時間生存と毒素の効果が弱い現象が観察された。また、トラネキサム酸投与群の4頭の内2頭は薬剤投与後2時間で死亡し、残りの2頭は96時間生存と相反する結果となった。アンチトロンビン投与群では、1頭が薬剤投与後8時間で死亡し、残りの3頭は96時間生存とこちらも相反する結果となった。このように陽性対象、実験群共に効果がはっきりしない結果となった。このことから、ヤマカガシ毒素の効果が低下している可能性があるため、まずは毒素の効果について検討する。その後にそれぞれの治療薬を用いてヤマカガシ毒素によるラットDICモデルでの、治療効果を再度確認する。その後にトロンボモジュリンα薬と他の抗DIC薬(トラネキサム酸及びアンチトロンビン)を併用投与も検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヤマカガシ咬傷は出血活性の毒性が強く、重篤な場合は線溶亢進型の汎発性血管内血液凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC))を起こして死に至る傷病である。その根治的治療薬であるヤマカガシ抗毒素は2000年に厚労省研究班にて製造した未承認薬のため、バイアル製剤の標準的な使用期限の10年を大きく超過していつ何時その効果が失活してもおかしくない状況である。また、この抗毒素は馬血漿由来の製剤であるためにアナフィラキシーや血清病などの副反応が惹起される可能性もある。そのため、近年DIC治療薬として臨床使用されているリコンビナントトロンボモジュリンα、メシル酸ナファモスタット、トラネキサム酸、アンチトロンビンを用いてヤマカガシ抗毒素の代替薬になりうるかどうかを調べることとした。本年度は、トラネキサム酸及びアンチトロンビンについて、我々が作成したラットDIC発症モデルを用いてヤマカガシ毒素の中和活性を調べるために、経時的に採血したラット血液の凝固系因子の測定を2回の実験、各4頭ずつ実施した。しかしながら、陽性対照群として置いたヤマカガシ毒素のみ投与群で、72時間、96時間生存と毒素の効果が弱い現象が観察された。また、トラネキサム酸投与群の4頭の内2頭は薬剤投与後2時間で死亡し、残りの2頭は96時間生存と相反する結果となった。アンチトロンビン投与群では、1頭が薬剤投与後8時間で死亡し、残りの3頭は96時間生存とこちらも相反する結果となった。このように陽性対象、実験群共に効果がはっきりしない結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる令和6年度は、本研究の目的であるヤマカガシ咬傷治療薬として保険承認薬として臨床使用されている抗DIC薬(トラネキサム酸及びアンチトロンビン)の可能性についてのまとめの年度と位置付ける。具体的には、昨年度のトラネキサム酸及びアンチトロンビンについて、その実験結果が予想と大きく反した原因を検索する。またヤマカガシ毒素の効果が低下している可能性があるため、まずは毒素の効果について検討する。その後にそれぞれの治療薬(トラネキサム酸及びアンチトロンビン)を用いてヤマカガシ毒素によるラットDICモデルでの、治療効果を再度確認する。この実験結果が一連の今回の研究シリーズのマイルストーンとなるはずである。 その後にトロンボモジュリンα薬と他の抗DIC薬(トラネキサム酸及びアンチトロンビン)を併用投与も検討する予定である。得られた結果を学術集会や学術雑誌に発表を行う予定である。本研究では、実臨床での使用を高い確率で想定するため、100%の効果ではなくて部分的な効果であったとしても十分に実臨床での効果を発揮する可能性が高いと考えられている。ヤマカガシ咬傷は本邦だけではなく東南アジア、中国、ロシアなどで起こりうる咬傷であり、加えてヤマカガシ抗毒素は本邦にしか存在しないため、ヤマカガシ咬傷治療への抗DIC治療薬の効果を証明することは大きな世界的成果と言える。
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