研究課題/領域番号 |
22K09224
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鐙谷 武雄 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (80270726)
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研究分担者 |
藤村 幹 北海道大学, 医学研究院, 教授 (00361098)
伊東 雅基 北海道大学, 大学病院, 助教 (10399850)
小松 晃之 中央大学, 理工学部, 教授 (30298187)
川堀 真人 北海道大学, 医学研究院, 講師 (50399870)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 人工酸素運搬体 / 虚血再灌流傷害 / 脳梗塞 / 抗酸化物質 / 一酸化炭素 / 脳保護作用 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、人工酸素運搬体を軸とし、それに修飾を加えて、①灌流改善/増強作用、②抗酸化作用、③抗炎症作用、④抗アポトーシス作用の4点のtarget pointを持つmulti-targetの保護作用により、治療効果の増強が得られるかを検討する。またmulti-targetにすることでtherapeutic time windowを拡大できるか、最大限の効果を発揮するためにはどのようなタイミングでどのような投与法がベストであるか、等を検討する。他の脳保護薬にはない灌流改善/増強作用を治療の中心においている点、今までにないmulti-targetの治療法である点が本治療法の特色と言える。
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研究実績の概要 |
当該研究では抗酸化作用を付与したヘモグロビン人工酸素運搬体(HBOC)に一酸化炭素(CO)を結合しmulti-targetの脳保護効果を検討することを目的としている。前年度の報告書にある通り、当初の申請書には記載のないヘモグロビンナノ粒子(HbNP)が新たに開発され、使用薬剤の候補となった。HbNPはカタラーゼを内在して抗酸化作用を有するが、このHbNPを他の抗酸化能付与後のHBOCと比較した予備実験の結果、HbNPが最も脳保護効果を持っていたため、その後の研究ではHbNPに絞って実験を進める方針とした。HbNPが新規開発された製剤であることより、まずCO結合前のHbNP自体の脳保護効果を検討した。ラット脳虚血再灌流モデルを使用し、2時間虚血後の再灌流開始時に治療薬として、HbNPと比較対象としてHb-HSA3(以前より我々の研究室において用いていたHb-Albuminクラスター型のHBOCの一種)を静脈内に投与し、24時間後での梗塞体積、等を評価した。その結果、HbNPはHb-HSA3と比較して梗塞体積をより縮小させていた。次いで、脳組織内での炎症反応(ミエロペルオキシダーゼ)、酸化ストレス(4HNP)、微小血管障害(IgG血管外漏出)の状態を免疫染色、Western blottingにより検討した。いずれの検討項目においても、HbNPがより抑制する傾向を認めた。さらに、再灌流6時間以内の脳血流(CBF)、組織酸素分圧(PtO2)の評価を行った。その結果、CBFはHbNPとHb-HSA3で差を認めなかったが、PtO2はHbNPで数値が高く維持されていた。これらの実験結果からHbNPは再灌流早期に酸素運搬能を高く保つことで神経保護効果を示すものと考えられた。これらの結果を国内、国際学会で発表し、さらに英文雑誌Brain Researchにおいて掲載発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述のように新たに開発されたHbNPを研究に用いることとなり、CO結合前のHbNP自体の脳保護効果を検討する必要が生じ、当初の研究計画にはなかったHbNPとHb-HSA3を比較する実験行うこととなった。その分、研究全体の進捗状況は予定よりは遅れている。しかし、HbNP自体の脳保護効果は、今まで脳保護研究で用いていたHb-HSA3より強力であることが分かり、その研究結果を学会、英文雑誌にて発表出来たことは有意義であったと考えている。 今後に関して述べると、科研の最終年度となる令和6年度にHbNPにCOを結合させたCO-HbNPの脳保護効果を検討することとなる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策としては、HbNPにCOを結合させたCO-HbNPと元のHbNPを比較して、CO結合がさらなる脳保護効果を生み出すかを検討することになる。 今までの研究手法と同様に糸栓子を用いたラット虚血再灌流モデルを使用して脳保護効果を検討する予定である。2時間虚血後の再灌流開始時に治療薬の静脈内投与を行い、24時間後での神経障害度、梗塞体積、等をまず評価する。微小循環改善作用の検討として、虚血再灌流後の微小循環障害が生じる再灌流6時間後の脳を採取し、パラフィン切片を用いて微小血管の形態変化(狭小化の有無)を検討する。さらに免疫染色の手法を用いて、自己赤血球(ラットHb抗体使用)およびCO-HbNP(ヒトアルブミン抗体使用)の灌流状態を検討する。抗酸化・抗炎症・抗アポトーシス作用の検討としては、脳組織抽出蛋白、凍結切片を使って、Western blotting、ELISA、免疫染色の手法を用い、以下のマーカーを使って検討する。抗酸化作用については、DHE、8OHdG、4-HNEを検討し、抗炎症作用については、MPO、MMP-9 、ICAM-1、Iba-1を検討し、抗アポトーシス作用については、TUNEL法によるDNA fragmentation、Bax、Bcl-2を検討する予定である。 therapeutic time windowの検討としては、虚血時間を通常実験の2時間から4時間、6時間と伸ばして、再灌流開始時に製剤を投与して、どの段階まで脳保護効果があるか、すならち、therapeutic time windowがどこまで伸ばせるのかを検討する。また製剤の投与タイミング(虚血中1時間、再灌流開始後2時間、4時間、等のタイムポイント)、投与回数(単回と複数回)で保護効果が異なるかを併せて検討する。
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