研究課題
基盤研究(C)
FDG-PETでは統計解析画像作成と取り込み値測定、SEEGでは麻酔賦活下間欠期脳波、発作時脳波の広帯域分析という我々が従来研究した独自の手法を各SEEG電極に行うことで、皮質、皮質下のネットワークを解析する。側頭葉てんかんにおけるてんかん脳機能障害ネットワークと脳機能低下ネットワークの判別、疾患概念確立により側頭葉てんかんに対してネットワークという新たな概念で治療に取り組むことが可能になる。
本研究の対象は、術前検査としてFDG-PET施行後SEEGによる頭蓋内電極で焦点診断を施行した難治性側頭葉てんかん患者である。今年度は、6人の患者にSEEGを施行し、まず発作起始の同定と、発作の伝播様式を検討した。発作起始の同定及び、伝播様式の確認には 1)視覚2)高周波律動(HFO) 3)緩電位変動(DC shift)を用いた。6例中 2例で、発作起始と伝播様式は明瞭であった。症例1ではHFOによる解析が明瞭で、発作は左側頭葉内側で始まり、0.5秒以内に左側頭葉外側、島皮質に伝播し、さらに1秒後に右側頭葉内側、2秒後に右前頭葉に伝播した。症例2では、視覚、HFO共に発作は左側頭葉内側で始まり視覚では 2秒後に左側頭葉外側、HFOでは、1秒後に左前頭葉、2秒後に左側頭葉外側に伝播した。DC shiftは左側頭葉内側、左側頭葉外側、左前頭葉にほぼ同時に記録された。他の4症例では、発作起始は判定できたが、伝播については困難性を認めた。今回、分析方法により発作起始と伝播様式の同定が異なり、症例ごとに分析方法を変える可能性が示唆された。ただし分析方法によっては、発作の伝播が明瞭に分析でき、てんかんの脳内ネットワークな同定が可能であった。さらに発作に関与していない部位、つまりてんかんネットワークに関与していない部位の同定も可能となった。FDG-PETでは、低代謝域が側頭葉にとどまる患者と側頭葉から前頭葉及び他の脳葉に及ぶ患者がいることを確認した。またSEEGの電極とMRI,FDG-PETを三次元的に重ねることができ電極が白質にあるか灰白質にあるかを確認することが可能になった。また電極の位置ごとにROIを設定し、取り込み値を測定することが可能になった。
2: おおむね順調に進展している
SEEGを施行した側頭葉てんかん患者の発作起始の同定及び、伝播様式の確認が1)視覚2)高周波律動(HFO) 3)緩電位変動(DC shift)によって違いがあり、症例ごとに検討が必要であることが判明したことは大きな進捗であった。しかし、解析においては同じ手法での解析が望ましいことも事実である。そこで数理的な解析方法を用いて解析できないかを検討中である。現在、工学系の研究者と共同でGranger 因果 やTigramite解析を行い、脳ネットワークの観点から電極ごとのECoG解析が行えないかを検討している。本研究のテーマは「側頭葉てんかん低代謝域の電気生理学解析による新たなてんかんネットワーク概念の確立」であり、脳ネットワークの面からの数理学的解析を加えることで、側頭葉てんかん患者の病態理解へより貢献できると考えられる。
引き続き、難知性側頭葉てんかん患者に対する術前 FDG-PETの測定と SEEGを用いた発作起始の同定及び、伝播様式の検討を続けていく予定である。また1)視覚2)高周波律動(HFO) 3)緩電位変動(DC shift)に加え、数理学的解析を加えることで、患者個人個人の脳内ネットワークを検討する予定である。その上で FDG-PET代謝低下部位との関係性を検討する予定である。このことで、側頭葉てんかんのてんかんネットワークと、脳機能低下ネットワークの判別が可能ではないかと考えている。
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