研究課題/領域番号 |
22K09236
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中村 晋之 九州大学, 大学病院, 助教 (80713742)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | SGLT2阻害薬 / ペリサイト / 脳梗塞 / 組織修復 / 血液脳関門 / 虚血耐性 |
研究開始時の研究の概要 |
SGLT2阻害薬の脳虚血病態における直接的な作用についてはほとんど解明されていない。脳梗塞後の組織傷害において、脳血管ペリサイトは血液脳関門の維持を担い、 ペリサイトの保護がその後の転帰に関与するが、ペリサイトのエネルギー・糖代謝機構には不明な点が多い。申請者等は、SGLT2阻害薬が脳梗塞に伴うペリサイトや血液脳関門の障害を軽減し、脳梗塞による組織障害・機能障害を抑制できるのではないかとの仮説を立てた。本研究課題では、脳血管ペリサイトにおけるSGLT2の発現、調節機構、機能、さらには、脳梗塞モデルを用いて、SGLT2阻害薬のペリサイト保護作用、さらに脳虚血における影響を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究課題は、糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬が、脳梗塞に伴うペリサイトや血液脳関門の障害を軽減し、脳梗塞による組織障害・機能障害を抑制できるのではないかとの仮説を立て、これを検証することが目的である。 まず、マウス脳梗塞モデルを用いた検討の結果、脳血管ペリサイトがSGLT2を発現し、さらに脳梗塞周囲で発現が増加することを見出した。さらに、SGLT2阻害薬を前投与し、脳梗塞を作製すると、梗塞サイズの縮小、血液脳関門破綻の軽減、神経症状の改善がみられた。その機序として、ペリサイトに対するSGLT2阻害薬の効果を検証したところ、SGLT2阻害薬の投与によってAMPKが活性化し、ミトコンドリア活性が上昇することを見出した。これにより虚血刺激に対する耐性を生じ、ペリサイトが脳梗塞後に残存しやすくなることが脳梗塞による組織傷害を軽減する機序と考えられた(Takashima, Nakamura et al. Commun Biol 2022)。 SGLT2阻害薬の投与はSGLT2を発現する全ての細胞に影響を及ぼすと考えられ、ペリサイト特異的なSGLT2の役割および薬理効果の明確な機序を示すには不十分である可能性がある。そこで現在、PDGFRβ陽性ペリサイト特異的にSGLT2をノックアウトしたコンディショナルノックアウト(cKO)マウス(Pdgfrb-P2A- CreERT2;Slc5a2fl/fl)を作製しているところである。今後、同マウスに対して脳梗塞を作製し、梗塞サイズ、BBB の破綻、神経症状、修復機構への影響などを解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 脳におけるSGLT2の発現および機能: マウス脳梗塞モデルを作製し、脳におけるSGLT2の発現を組織学的に解析した結果、脳血管ペリサイトにSGLT2が発現し、さらに脳梗塞によって梗塞周囲に発現が増加することを明らかにした。さらに培養細胞を用いた検討では、ペリサイトにSGLT2が発現することをmRNA・蛋白レベルで確認し、機能的にもNa依存性に糖を取り込むことを示した。 2. 脳梗塞モデルに対するSGLT2阻害薬の効果: 野性型マウスに対し、血糖に影響を与えない低濃度のSGLT2阻害薬を経口的に投与した後、脳梗塞モデルを作製した。その結果、梗塞サイズの縮小、血液脳関門破綻の軽減、神経症状の改善がみられた。その機序として、ペリサイトに対するSGLT2阻害薬の効果を検証したところ、SGLT2阻害薬の投与によってAMPKが活性化し、ミトコンドリア活性が上昇することを見出した。これにより虚血刺激に対する耐性を生じ、ペリサイトが脳梗塞後に残存しやすくなることが脳梗塞による組織傷害を軽減する機序と考えられた(Takashima, Nakamura et al. Commun Biol 2022)。 3. ペリサイト特異的SGLT2ノックアウトマウスの作製: SGLT2阻害薬の投与はSGLT2を発現する全ての細胞に影響を及ぼすと考えられ、ペリサイト特異的なSGLT2の役割および薬理効果の明確な機序を示すには不十分である可能性がある。そこで現在、 PDGFRβ陽性ペリサイト特異的にSGLT2をノックアウトしたコンディショナルノックアウト(cKO)マウス(Pdgfrb-P2A- CreERT2;Slc5a2fl/fl)の作製(交配)中である。
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今後の研究の推進方策 |
脳血管障害は未だ死因の多くを占め、重度の障害により寝たきりとなり介護を必要とする最大の要因の一つであり、超高齢化社会において機能障害を回復させる治療の開発は喫緊の課題である。 近年の大規模臨床試験では、SGLT2阻害薬によって心血管死や心不全が有意に抑制され、さらには腎イベントの抑制効果も示唆されたことから、血糖降下作用以外による多彩な効果が期待され、「心・腎保護薬」と しての役割に注目が集まっている。しかし、脳梗塞に対しては、脱水を危惧し慎重に投与されてきた経緯から、SGLT2阻害薬の脳虚血病態における直接的 な作用についてはほとんど解明されていない。 ここまでの検討で、SGLT2阻害薬の前投与によって脳血管ペリサイトに虚血耐性をもたらし、組織傷害を軽減する可能性が示された。今後は、ペリサイト特異的SGLT2 cKOマウスを用いて、この機序を確固たるものとするとともに、臨床応用へ向けてのアプローチを進めて行く方針である。具体的には同マウスに対する脳梗塞を作製後、長期の神経学的機能予後、組織学的な影響について観察し、臨床データと突合していく。
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