研究課題/領域番号 |
22K09249
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川口 奉洋 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (10723447)
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研究分担者 |
中川 敦寛 東北大学, 大学病院, 教授 (10447162)
吉川 彰 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50292264)
荒船 龍彦 東京電機大学, 理工学部, 教授 (50376597)
大橋 雄二 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 特任准教授 (50396462)
金森 政之 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (60420022)
大谷 清伸 東北大学, 流体科学研究所, 特任准教授 (80536748)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | パルスジェットメス / 下垂体腫瘍 / 超音波 / 神経内視鏡 / 新規医療機器開発 |
研究開始時の研究の概要 |
神経・血管温存下に線維化した硬い腫瘍を破砕するという試みはこれまでに類を見ず、達成すれば、摘出困難であった腫瘍の臨床成績が劇的に改善することが見込まれる。超音波印加により微粒化した液体をパルス状に射出することで、液滴の組織内浸透性と局所破砕能を向上させることを企図する。我々が原理開発から行ったパルスジェットメスに、金属材料研究及び衝撃波医療の国際的学際研究拠点で培ってきた独自の知見を加え、従来の手術機器ではなし得なかった線維化病変の最大限摘出と機能温存を企図する点で学術的独自性と創造性をもつ研究である。
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研究実績の概要 |
我々が開発した液体ジェットメスは、血管・神経温存下に臓器の切開と破砕を可能とする新規医療機器である。これまでに、神経膠腫や下垂体腺腫に対する摘出術において、摘出率の向上と出血量の減少を報告し、安全性と有効性を示してきた一方で、線維化した腫瘍など、いわゆる“硬い”組織に対しては有効な破砕が得られなかった。これに対し、射出される液滴を小さくすることで、腫瘍内の線維成分の隙間に射出液滴を浸透させ、局所の破砕効率を引き上げることを企図した研究である。昨年度は、液滴を微粒化するための超音波素子を作成し射出条件を最適化した。本年度は、模擬モデルや摘出臓器を用いたex vivoの実験を行い、有効性を確認することを目的とした。具体的に、超音波振動子の開発と作成を研究分担者とともに行い、我々が以前に開発した液体ジェットメスハンドピースに装着固定可能な装置を作成した。これを用いた硬い組織破砕または線維性組織への微粒化液滴浸透を企図し、射出条件と超音波印加条件の最適化を試みた。同時に、当該過程を遂行評価するための硬い組織モデル作成を行った。 本研究課題は、超音波印加による射出ジェット流の微粒化の知見は従来の手術機器ではなし得なかった線維化癒着病変の最大限摘出と機能温存を企図する点で学術的独自性と創造性をもつものである。これは、硬い頭蓋内腫瘍の破砕のみにとどまらず、他科手術時の臓器癒着病変の安全な剥離、薬液の皮下浸潤投与技術の向上など、ヘルスケアや基礎研究まで広い波及効果を見込む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度内に開発作成した微粒化液体生成用振動子を液体ジェット射出針に装着した。追加装備を用いても液体ジェットが射出可能であることが確認された。in vitro内での条件を最適化した。ゼラチンを用いた脳モデルへの射出実験では、液滴微粒化に伴い、対象物への浸透遅延を認めた。これに対し、射出電圧の調整とともにFunctioning generatorの条件設定を見直した。in vitro下での条件と、in vivo環境ではジェット流射出圧や超音波印加条件が異なることが初めて示された。本年度は、再度の射出条件設定のほか、対象物との距離Stand off distanceの最適化を測ることで、実臨床に向けた最適条件の再設定を行った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度内に行った臨床条件での超音波印加液体ジェット射出を行う。摘出臓器を用いた破砕実験を行い、有効性と安全性を証明する。そのうえで、in vivoでの使用経験をへて倫理委員会申請を目指す。 本研究は、破断強度の差が少ない組織に対し、有効に破砕するため、液滴を小さくすることで、組織間に液体を浸透させ、“柔らかく”することで破砕吸引除去可能になると仮説に基づくものである。これまでの研究結果から、組織破砕性能向上に加えて組織内への液体(薬剤)浸透という成果が得られる可能性がある。これは、当初の意図からは異なるものの、浸潤病変に対する有効な治療手段になりうるため学術的意義が得られる可能性がある。
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