研究課題/領域番号 |
22K09253
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
庄田 健二 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (00866981)
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研究分担者 |
岩間 亨 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20303498)
大江 直行 岐阜大学, 医学部附属病院, 准教授 (60362159)
山田 哲也 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 助教 (60816114)
木下 喬公 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (40866977)
熊谷 昌紀 岐阜大学, 医学部附属病院, 医員 (50973369)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 小胞体ストレス / テモゾロミド耐性 / 抗腫瘍作用 / 神経膠芽腫 |
研究開始時の研究の概要 |
GBMは、化学療法薬剤であるテモゾロミドへの耐性をもつことで抗腫瘍効果を減弱させる。本研究では小胞体(ER)ストレスとテモゾロミド耐性の関係に注目した。ERは細胞内においてタンパク質の合成や分泌、貯蔵を行う。しかし遺伝子変異や低栄養、低酸素、感染などの刺激により変性タンパク質が生じ、これらがERに蓄積することでERストレスが発生し、ストレスに対する反応(UPR)が起きる。UPRによりelF2が活性化され、テモゾロミド耐性が増強される。本研究ではelF2阻害剤である ISRIBがテモゾロミド耐性を減弱させ抗腫瘍作用を増強するかを検討する。
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研究実績の概要 |
我々は複数の神経膠芽腫(GBM;Glioblastoma)の細胞株(U251、U87、T98G)を使用して、Elongation factor 2 (elF2)阻害剤であるIntegrated stress response inhibitor (ISRIB)の作用効果を検討した。細胞生存試験において、テモゾロミド(TMZ)が単独でGBM細胞株の生存能を低下させる濃度(300μM)および有意な変化がない濃度(100μM)に1nMのISRIBを併用することで、両群ともにTMZ単独群と比較して有意に生存能が低下することを確認した。GBMは遺伝子多型であるが、複数の細胞株でも併用群で有意な変化が確認でき、実臨床においても有用となりうる可能性が考えられた。さらに正常の神経膠細胞であるastrocytesの細胞株に対しても、ISRIBおよびTMZを同様の濃度で投与し検討を行った。その結果、astrocytesの細胞株の細胞生存能の低下は認めず、正常の神経膠細胞に対する安全性が示唆された。 小胞体ストレスによりelF2がリン酸化され活性化する。ウエスタンブロッティングにて、ISRIBの投与がGBM細胞株のelF2のリン酸化が阻害され、ISRIBが小胞体ストレスによる反応を阻害することを確認した。また小胞体ストレスによって惹起されるActivating transcription factor (ATF)4が腫瘍の増殖を促進し、TMZの抗腫瘍効果を減弱させることが報告されている。今後はISRIBがATF4およびATF4関連因子に与える影響を評価する予定である。 また当研究室ではマウスのGBM細胞株(GL261)を使用したGBM移植マウスモデルの作成手技、薬剤投与および腫瘍の評価方法は確立しており、そのモデルを使用した複数の論文を発表している。In vitroと同様にISRIBのTMZの作用増強効果について検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
細胞生存試験で、ISRIBの併用がテモゾロミドの作用効果を増強することを証明することができ、またGBMにおけるelF2の阻害も確認できた。しかしsiRNA、shRNAによるノックダウンを用いたTMZとの併用効果および、ATF4やストレス顆粒の評価については、昨年と同様に検討を行っている段階である。In vitroでの検討はtime pointにより各因子の活性が異なるため、現在複数のtime pointでの検討を行っている。またin vivoでの検討もまだできていないため、予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きin vitroでATF4およびATF4関連抗酸化応答因子の変化や、ストレス顆粒の抑制の機序、ストレス顆粒によるTMZに対する耐性機序を評価する。これらの評価はウエスタンブロッティング、RT-PCR、免疫染色で行う。評価に必要な機材はすでに完備されており、早急に進める予定である。またin vitroのデータをもとにして、GBM細胞移植マウスモデルにおけるISRIBとTMZの併用効果を評価する。In vivo でもin vitroと同様にコントロール群、ISRIB単独群、TMZ単独群、ISRIBとTMZの併用群の計4群で行う予定である。薬剤の投与方法についてだが、当研究室の過去に実験でTMZの経口投与によるGBM移植マウスの腫瘍縮小効果は確認できている。臨床応用を目指す上で、ISRIBの投与も経口投与もしくは静脈内投与での有効性を示すことが望ましく、TMZと同様に経口投与で行う予定である。
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