研究課題/領域番号 |
22K09272
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
井内 俊彦 千葉県がんセンター(研究所), 脳神経外科, 部長 (80370881)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | glioblastoma / chemo-radiation therapy / NF-kB / microglia / M2 macrophage / STAT3 / 神経膠芽腫 / 治療抵抗性 / エピジェネティクス / 遺伝子発現 |
研究開始時の研究の概要 |
放射線化学療法前後のペアサンプルが得られている神経膠芽腫例を対象に、治療抵抗性に関与するエピジェネティックな遺伝子変化を解析する。特に遺伝子修復ならびに腫瘍幹細胞の間葉系分化誘導に注目し、これらに関与する分子の発現ならびにエピジェネティックな変化を元にした治療抵抗性予測する診断システムを構築する。さらに培養 spheroid を用いて治療に伴う抵抗性に関わる分子変化を抑制しうる候補既存薬剤を抽出する。
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研究実績の概要 |
RNAseq 解析から、放射線化学療法により腫瘍細胞から放出された NFkBがM2マクロファージを誘導し、これが JAK/STAT3を活性化させ、腫瘍幹細胞を pro-neural から mesenchymal に変化させることが、治療抵抗性の一つの機序となっていると推測した。そこで組織上での、腫瘍細胞におけるNFkB発現、マイクログリア、特にM2の浸潤、STAT3発現を評価し、また腫瘍の pro-neural/mesenchymalな発現を評価した。 ネオアジュバント放射線化学療法を施行した12例のグレード4膠腫において、治療直前に採取された生検組織と、治療直後に摘出された組織のサンプルセットを用いて、NF-kB(p65)、マイクログリア、M2マクロファージ、STAT3、Pro-neural、Mesenchymalの発現をを免疫染色で評価した。 治療前半数以上の症例でマイクログリアの浸潤を認めたが、そのうちM2優位な症例は半数に過ぎなかった。治療後、全ての症例で広範なマイクログリアの浸潤が確認され、それらの殆どがM2だった。治療後M2の浸潤を認めなかった1例では、NF-kBの発現が低発現で、STAT3の発現は低下し、Proneural な変化を認めた。治療により NF-kBの発現が亢進した4例では、M2マクロファージの浸潤を高度に認め、発現亢進例の生存期間中央値は12.9ヶ月と、それ以外の症例(25.1ヶ月)よりも有意に短かった(P=0.0006)。 この様に、臨床例を検討することで、放射線化学療法によるNK-kBの発現亢進とそれに伴うM2の浸潤が、腫瘍の治療抵抗性に関与していることを明らかにし、RNAseqの結果が支持された。一方、治療によるSTAT3や mesenchymalな変化など、RNAseqでの予測と異なる結果も得られ、今後の研究を進める上で有用な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RNAレベルでの結果に加えて、蛋白レベルでの発現評価を行うことができた。RNAseqではコストの問題や、neo-aduvant治療を行った症例の蓄積が少なかったことから6例の解析にとどまったが、症例数の蓄積もあり、免疫染色で12例の解析を行うことができた。症例数が増えたことで、分子発現の変化と患者予後との間の関連を統計学的に評価することが可能となり、より科学的に分子の発現と治療抵抗性との関連性を評価することが可能となった。 これらの知見は、我々の推測した結果と合致するところもあったが、また相違するところもあった。いずれの結果も今後エピジェネティックな変化を評価する上で、どの分子にフォーカスして検討を行えば良いか、明確な道筋を与えてくれた。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、エピジェネティックな変化を網羅的に評価する目的メチル化アレイを行う。基本的に RNAseqでの RNA発現との関連性を評価できるように、RNAseqを行った症例のうち4例でメチル化アレイを行う.凍結保存組織から、DNAを抽出し、メチル化アレイを施行する。 これまで治療により遺伝子がメチル化を生じるか否か検証した報告は少ない。この研究では遺伝子のメチル化を網羅的に喧騒することで、放射線化学療法が、メチル化をきたすのかをまず検証する。もし、メチル化が認められれば、どういった経路の分子がメチル化を受けやすいのかを確認し、さらにメチル化を受けることによって、その分子の発現がどう変化したのか、治療前後の RNAseqのデータと照らし合わせ検証する。さらに、メチル化を受けた分子の下流の分子の発現がどのように変化しているのかを、RNAseqデータから検証する。 令和4年度の検討で、NF-kB経路が治療抵抗性獲得の際に重要と考えられた。したがって、この経路の分子のメチル化が 治療により新たに獲得されていないかは特に注意して検証する。 解析の一部は令和6年度にも引き続き行う必要があると考えているが、令和6年度は、その結果を元に臨床像との関連性について検証を加えていく。
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