研究課題/領域番号 |
22K09289
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
三浦 真弘 大分大学, 医学部, 講師 (50199957)
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研究分担者 |
山田 茂樹 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (40422969)
間瀬 光人 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (60238920)
内野 哲哉 大分大学, 医学部, 講師 (70423697)
高橋 浩一 国際医療福祉大学, 臨床医学研究センター, 非常勤講師 (90246413)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 走査電子顕微鏡解析 / 脳脊髄液 / ニューロフロイド / 脊髄神経根 / 髄膜-脈管外液性通液路 / 髄液動態 / 髄膜 / ガドリニウム / 髄膜バリア / 硬膜外リンパ系 / グリンファティク システム / 脳血管周囲腔 / 神経関連液性成分 / 脈管外通液路 / 硬膜外リンパ管 |
研究開始時の研究の概要 |
本申請課題は、脳・脊髄硬膜内リンパ管網に誘導される髄液ならびに脳内代謝産物・免疫細胞の(1)髄膜内侵入経路の解明、(2)硬膜線維内における髄膜リンパ管への脈管外通液路の機能的(注入トレーサー動態解析)・構造的特徴の全容解明(未解決の課題)、(3)髄液の脊髄神経根鞘への生理的漏出の本態解明、また、ヒト脳硬膜に潜在する髄膜-脈管外通液路の機能構造的特徴、さらに、サル・ヒト硬膜内リンパ管の形態学的特徴の解明も動物種差特異性に考慮して解析する。尚、得られた結果はマウス所見及び脊髄硬膜外リンパ管吸収路と比較検討することでヒト髄液循環再考の重要情報に反映(病態生理)する。
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研究実績の概要 |
本年度は、(1)カニクイザルを用いたガドリニウム(Gd)髄注実験において髄膜プレリンパチャンネルを介して脳硬膜・脊髄神経根に生理的漏出する脳脊髄液(CSF)トレーサー(Gd+CH40)動態の経時的MRI解析、(2)ヒト健常ボランティアを用いた脊髄神経根域へのCSF生理的漏出に関するMRI水分子探索解析(STIR-3D)、また(3)髄膜・脊髄神経根・脳実質へのGd浸潤動態検索(デジタルマイクロスコープ及び走査型電子顕微鏡:SEM)を研究主体とした。(1)小脳延髄槽から髄注したGd動態のMRI解析では、注入直後、2h、4h、24h後の探索では上位中枢への拡散状況は個体差が大きく、特に脳天蓋部くも膜顆粒が位置する矢状静脈洞下くも膜下腔に注入24hでもGdが到達しない所見が2例認められた。また視神経交叉部より上方へのGd伸展にも個体差が生じたことは髄液吸収主座が脳円蓋部とする通説と異なる重要な所見である。一方、下位脊髄域のGd伸展状況は、注入直後から脊髄くも膜下腔への移動、また上位脊髄神経根への陽性像出現が共通所見として認められた。(3)注入実験後、デジタルマイクロスコープによるCH40動態の直視下検索では、上位・下位中枢領域ともMRI検索結果との整合性が確認された。SEMによるGd注入後の微細構造解析については、摘出組織をNaOH化学消化したのちSEM組織試料を作成し、現在SEM解析中である。(2)健常ボランティア10名のMRI水分子探索についても、髄注Gd動態解析との整合性が認められた。特に、各分節に共通して脊髄神経根域に生理的逸脱するトレーサー陽性像は、MRIでも同様に脊髄神経節を遠位境界とした特徴的形状の浸潤域(teardrop sign)を呈した。そのため、脊髄神経根鞘下に描出されたCSF貯留は、「脊髄くも膜下腔」と等価(広義の「脊髄くも膜下腔」)の貯留槽と解釈している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までコロナ下研究環境において、学外での大型動物実験等の髄液動態MRI解析には大幅な遅れが生じていた。しかし本年度は、3匹のカニクイザルを用いた髄液動態MRI解析が滋賀医科大学動物生命実験センターにおいて研究計画通り実施できたことで、昨年度までの遅れはほぼ挽回できた。 しかし、MRI画像解析を除き、画像解析後に摘出した組織試料の消化法SEM解析を中心とした微細構造解析については、解析部位が多いことも含め、相当の組織処理時間が必要な解析組織試料作成などの理由から、令和5年度実験に用いた3匹全ての組織学的・解剖学的解析はやや遅れが生じている。 一方、研究計画書に記載しなかったが、髄注したGdを摘出した組織試料の凍結組織切片上でGd分布状況が解析できる最新レーザーICP-MSガドリニウム造影剤解析(島津テクノリサーチ)を試みるため、現在解析準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は課題研究最終年となる。CSFの髄膜外排出の第1ルートとなる髄膜内取水口を担う脳髄膜、脊髄膜レベルにおける髄膜プレリンパチャンネルのSEM解析結果を、Gd髄注MRI解析結果との整合性について詳細に検証を行う予定である。また第2ルートとなる髄膜リンパ管、特に硬膜外リンパ管系と髄膜液性通路との機能的連関についても、リンパ管組織化学法において髄膜リンパ管の形態的特徴の解析を含め多角的な検討を行いたい。 動物実験は、滋賀医科大学放射線医学講座の協力の下、カニクイザル1匹の追加実験も予定しているが、もし実施が可能な場合は、髄液吸収路に関する最新トピックスとなっている、脳天蓋部硬膜(SSS)に集積する脳架橋静脈(bridging vein)管壁の特殊通路を介して高位円蓋部で矢状静脈洞周囲に潜在する液性成分が貯留するParasagittal dural space (PSD)および、 arachnoid cuff exit (ACE) points(くも膜袖状出口ポイント)、さらには同構造から髄膜リンパ管や静脈洞に排出される新しい吸収経路、また視神経鞘を介して眼球壁外面に発達する眼球壁外リンパ系へのCSF吸収路についても、本研究の重要な関連研究としてMRI検索も含めて今後特に注意を払う予定である。
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