研究課題/領域番号 |
22K09293
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56010:脳神経外科学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
大谷 直樹 日本大学, 医学部, 准教授 (20573637)
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研究分担者 |
浅野 正岳 日本大学, 歯学部, 教授 (10231896)
櫛引 俊宏 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 医用工学, 准教授 (30403158)
石原 美弥 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 医用工学, 教授 (30505342)
吉野 篤緒 日本大学, 医学部, 教授 (50256848)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 光ゲル化剤 / くも膜形成 / 硬膜形成 / 静脈止血 / 動脈止血 / 脳神経外科手術 / CSF leakage / traumatic brain injury / hemostasis / 脳神経外科 / 髄液漏 / 止血 / basic FGF |
研究開始時の研究の概要 |
脳外科手術において髄液漏の防止、動脈・静脈止血に対する止血、橋静脈の張力増強などを確実に遂行しうる生体材料は皆無である。本研究では、光を数秒照射することでゲル化する光ゲル化剤に、血管新生の促進機能を付加すべく新規開発されたb-FGF徐放化ゲル化剤の脳外科手術への有用性を実証しつつ、更なる有用性の向上を目指して改良を加える。既に生体への親和性と安全性は実証しており、脳外科手術の安全性と併発症の軽減に寄与しうるものであり、治療成績向上と医療経済効果を生む可能性が期待できる。
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研究実績の概要 |
脳神経外科手術では、髄液漏出による併発症は少なからず存在し、通常開頭手術の5-10%と概算されている。さらに動脈止血や静脈止血に難渋する場合もある。こうした状況に適正なくも膜・硬膜閉鎖や安全確実な止血効果が得られるマテリアルの開発が望まれる。これまでも様々な材料による開発が進められてきたが、いずれも表面がwetな状況での組織表面への接着能力が低いため組織修復能力は軽度であった。また、止血剤としての性能も低く血圧に耐えうるだけの機械的強度不足から止血効果も不十分であった。今回我々は、生体適合性に優れたゼラチンと光硬化剤(ルテニウム化合物)を用いて、止血や接着に用いる際は、操作性が高く、微細な間隙に溶液を流し込むことが可能な状態として可視域(455nm)の光を照射することで目的部位において組織と接着するハイドロゲルを形成するゲル化剤を新規に開発した。本光ゲル化剤を用いて、脳神経外科手術におけるくも膜形成、硬膜形成、ならびに静脈止血効果と動脈止血効果をラットを用いた動物モデルを使用して検証した。くも膜損傷・硬膜損傷モデルにおいて直後から光ゲル化剤を用いて損傷部位を被覆したところ、髄液漏出を軽快させることが可能であった。処置2週間後の組織学的精査では、脳表面のくも膜や硬膜における新たな膜形成を生じており、周囲脳への炎症細胞浸潤はみられなかった。また、マクロファージやリンパ球浸潤もないことを免疫組織学的検査から確認されたことから生体組織への親和性が示された。さらに大腿動脈を一過性に遮断して動脈切開部に光ゲル化剤を塗布することで動脈止血効果が確認された。同様に静脈止血も可能であった。いずれも処置1か月後の組織学的評価では、血管内腔も保持されており血栓形成もみられなかった。脳外科手術における組織修復や止血操作において光ゲル化剤は有効なマテリアルになり得るものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本光ゲル化剤を用いて、脳神経外科手術におけるくも膜形成、硬膜形成、ならびに静脈止血効果と動脈止血効果をラットを用いた動物モデルを使用して検証した。くも膜損傷・硬膜損傷モデルにおいて直後から光ゲル化剤を用いて損傷部位を被覆したところ、髄液漏出を軽快させることが可能であった。処置2週間後の組織学的精査では、脳表面のくも膜や硬膜における新たな膜形成を生じており、周囲脳への炎症細胞浸潤はみられなかった。また、マクロファージやリンパ球浸潤もないことを免疫組織学的検査から確認されたことから生体組織への親和性が示された。さらに大腿動脈を一過性に遮断して動脈切開部に光ゲル化剤を塗布することで動脈止血効果が確認された。同様に静脈止血も可能であった。いずれも処置1か月後の組織学的評価では、血管内腔も保持されており血栓形成もみられなかった。すでに当初の研究計画において予定されていた実験、ならびに結果においては収集済みの状況であり、現在、追加実験をすすめている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
動物モデルを用いて組織修復効果や止血効果を確認し、少なくとも経時的な組織学的評価が遂行した。今後はより詳細に、脳表における免疫炎症細胞の遊走状況を調査検討してさらなる検討を重ねる予定である。 また、光ゲル化剤に修復因子や新生血管因子を内包させたゲル化剤を新たに作成中であるため、今後は光ゲル化剤のさまざまな特性を利用した新規ゲル化剤の開発をすすめていく予定である。
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