研究課題/領域番号 |
22K09348
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池田 敏之 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80322759)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 軟骨分化 / サイトカイン / TNFスーパーファミリー |
研究開始時の研究の概要 |
1)ヒト間葉系幹細胞に複数のTNFスーパーファミリーを作用させて軟骨分化モデルを構築、RNA sequenceを含めた網羅的解析を行う。 2)構築した軟骨分化モデルでシグナル伝達分子の活性化・不活化状態がどのようなパターンをとるのか評価する。軟骨分化時に不活化されるシグナル伝達系については阻害化合物が軟骨分化誘導能を持つか検討する。 3) マウス・ラットOAモデルを利用して軟骨再生薬の安全性・有効性の評価を行う。
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研究実績の概要 |
ヒト間葉系幹細胞を用いたin vitro 軟骨分化モデルの構築を行った。4種類のTNFスーパーファミリー分子LTA、TRAIL、VEGI、GITRLについて293細胞にアデノウィルスベクターを導入パッケージング、発現を確認した。LTAについては、パッケージングに時間がかかり現在効果検証中、VEGIについては発現に問題がありベクターの再構築が必要であった。一方GITRLとTRAILについてはヒトMSCに導入した場合、導入後1週間程度の早期からCOL2A1, SOX6, SOX9など軟骨の初期分化マーカーのmRNA誘導と、ALP染色陽性、alcian blue 染色陽性で示される軟骨基質の産生を認め、強い軟骨誘導能を認めた。とくにGITRLについてはパネルRNAを用いたRT-PCRによる解析で軟骨組織・軟骨細胞にかなり特異的に高発現していることが確認され軟骨分化誘導薬の候補として有望ではないかと考えられた。特異的受容体であるGITRの発現も同様に軟骨特異的であったためGITRのアデノウィルス発現系を作成したところGITRもヒト間葉系細胞を軟骨細胞様に分化させることが明らかになった。GITR/GITRLの組み合わせでさらに軟骨分化は促進された。市販の精製済みGITRLを使用して軟骨分化に必要な濃度を検証したところGITRLは従来の生理的な活性濃度よりかなり高濃度の100 ng/mL程度で軟骨分化誘導を促すことが明らかになった。現在リガンド・リセプターにGFPを挟みこんだ形の強制発現系を作成し恒常活性型の軟骨分化誘導因子としてワークするか検証中である。また末梢血由来の単核球分画にNFkBシグナルの転写因子RELAをアデノウィルスで導入すると間葉系幹細胞様の紡錘形細胞に一部分化することが分かったので、この細胞を増殖させたin vitro軟骨分化モデルを現在作成中である
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度のため、まず基本となるin vitro軟骨分化モデルの確立を試み、結果としてTRAIL、GITRLによる軟骨分化モデルの確立に成功した。さらにGITRについては受容体の導入でも同様の効果があること、リセプター・リガンドの同時導入で効果が増強することを新たに見出し、ヒトMSCに加えて細胞ソースとしてより汎用性の高いヒト末梢血由来単核球分画を用いたin vitro軟骨形成モデルの作成にも着手するにいたった。さらにNFkBシグナルの転写因子のひとつであるRELAの強制発現でヒト末梢血由来単核球分画の中に間葉系細胞様の形態に分化する細胞が出現することを見出した。一方LTAとVEGIについてはアデノウィリス発現系の確立に手間取り、十分な検証にいたらなかった。結果として予定していた複数のリガンドの同時導入についても検証することができず、RNAシークエンスを実施するための最適なin vitro軟骨形成モデルの確立までは達成できなかった。以上の通り、予想以上の成果を得られた部分と、予定通り進行しなかった部分が存在し、総合的にはおおむね予定通り順調に進展していると判断するものである。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の成果をもとにTNFスーパーファミリーを用いた in vitro 軟骨分化モデルの最適化を行う。細胞ソースとしてはヒト間葉系幹細胞に加え、ヒト末梢血由来の単核球分画を用いたより画期的な系の確立を目指す。とくにリガンドとリセプターを適切に融合させた組み換え蛋白を用いてより有効な系が構築できないか検証を行う。 確立したin vitro 軟骨形成モデルを用いてRNA-sequence解析により網羅的な発現プロファイルを作成する。得られた発現プロファイルよりパスウェイ解析を行い、誘導・抑制されるリガンド・レセプター、シグナル伝達分子のリストを作成することで軟骨再生薬開発のためのさらなる基礎データとする。 作成したin vitro 軟骨形成モデルにおいて、TNFスーパーファミリーの下流の細胞内シグナル伝達分子の活性化・不活化を、抗リン酸化蛋白抗体を用いたウェスタンブロッティングやELISAで検証し、実際にどの経路が重要か検証する。軟骨分化時に不活化される経路については、阻害化合物が軟骨分化誘導能を持つかもあわせて検証する。 マウス・ラットOAモデルを利用した軟骨再生薬の安全性・有効性評価:ラットの膝関節軟骨欠損モデルおよび、ラット・マウスの内側半月板および前十字靭帯切除による膝OAモデルを作成後、1~2週後に関節内にin vitro での効果が検証されたTNFスーパーファミリー蛋白や前述の融合組み換え蛋白を投与し、一定期間後にサクリファイスして、病理標本用の切片を作成、軟骨損傷・変性・修復の程度を組織学的に検証する。効果不十分な場合はin vitro軟骨形成モデルを応用した細胞治療の効果についても検証を行う。
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