研究課題/領域番号 |
22K09379
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中佐 智幸 広島大学, 病院(医), 講師 (60467769)
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研究分担者 |
石川 正和 香川大学, 医学部, 教授 (60372158)
味八木 茂 広島大学, 病院(医), 講師 (10392490)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 関節軟骨 / 骨棘 / 変形性関節症 / microRNA |
研究開始時の研究の概要 |
変形性関節症(OA)は、広範囲の軟骨欠損等により関節変形と著しい疼痛をきたす。末期になると人工関節置換術しか治療法がなく、低コストで広範囲に関節軟骨を再生できる新たな治療法の開発が望まれている。本研究では、末期OAでみられる骨棘内の軟骨を細切しアテロコラーゲンゲルに包埋して軟骨欠損部に移植し関節軟骨を再生する治療法の確立を目指す。そのために、骨棘軟骨と関節軟骨の差を詳細に解析する。特にmicroRNAに着目し、骨棘軟骨のmicroRNA発現を制御して関節軟骨の形質に転換させる。細切骨棘軟骨とmicroRNAを組み合わせてアテロコラーゲンゲルに包埋し、日本白色家兎の骨軟骨欠損に移植してその治療効果を評価する。
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研究実績の概要 |
変形性関節症(OA)は、広範囲の軟骨欠損等により関節変形と著しい疼痛をきたす。末期になると人工関節置換術しか治療法がなく、低コストで広範囲に関節軟骨を再生できる新たな治療法の開発が望まれている。広範囲関節軟骨欠損には正常軟骨組織を用いた培養軟骨細胞移植術が行われるが、OAでは正常軟骨がほぼ存在しない。本研究では、末期OAでみられる骨棘内の軟骨を細切しアテロコラーゲンゲルに包埋して軟骨欠損部に移植し関節軟骨を再生する治療法の確立を目指すことを目的とする。 まず骨棘軟骨と関節軟骨の差を詳細に解析する。人工膝関節置換術で廃棄される関節軟骨と骨棘を採取・細切し、アテロコラーゲンゲルに包埋する。6週間まで培養し、ゲル内に細胞が遊走してくるかどうか、ゲル内での増殖能、遊走した細胞の特性を組織学的に解析する。また、骨棘軟骨と関節軟骨の遺伝子発現の差に着目し、遺伝子発現を制御することで、骨棘軟骨を関節軟骨と同じくらい軟骨基質を産生させる形質に転換させる。特にmicroRNAの発現パターンに着目し、骨棘軟骨のmicroRNA発現を制御して関節軟骨の形質に転換させる。最終的に、細切骨棘軟骨をアテロコラーゲンゲルに包埋し、日本白色家兎の骨軟骨欠損に移植してその治療効果を評価する。microRNAにより骨棘軟骨を関節軟骨の形質に転換させて日本白色家兎の骨軟骨欠損に移植するモデルも作製する。これらの実験により従来人工関節置換術しか治療法のなかった末期OAでの新たな関節軟骨修復術の有用性を示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工膝関節置換術で廃棄される関節軟骨と骨棘を採取した。それぞれを約1mm3に細切し、アテロコラーゲンゲルに包埋してそれぞれ3、6週間培養する群とそれぞれの軟骨から酵素処理により細胞を単離し、アテロコラーゲンゲルに包埋し、3、6週間培養する群を作製した。切片を作製し、サフラニンO染色とHE染色を行った。ゲル内に遊走している細胞数を計測したところ、細切した軟骨は両群とも3週より6週で有意に増加しており、関節軟骨より骨棘軟骨の方が細胞数は3週、6週ともに有意に多かった。細切した軟骨と単離した軟骨では、細切した軟骨の方が骨棘軟骨・関節軟骨ともに単離した軟骨細胞よりもゲル内に遊走した細胞が多かった。関節軟骨、骨棘軟骨から軟骨細胞を単離し、MTTアッセイにより細胞増殖能を比較したが、明らかな有意差はなかった。また、免疫染色により、遊走している細胞を調べるとchondromodulin陽性であり、osteocalcin陽性細胞がなかったことから、遊走・増殖している細胞は軟骨細胞由来であることが示唆された。6週まで培養しても軟骨組織が骨化することはなかった。細切した軟骨組織は、骨棘軟骨・関節軟骨ともにサフラニンO染色で染まっていた。さらにゲル内のプロテオグリカン量を計測すると骨棘軟骨でも関節軟骨と同程度のプロテオグリカン量をゲル内に有することがわかった。これらの結果から、骨棘軟骨の方が関節軟骨より遊走能が高く、ゲル内で骨棘由来の軟骨細胞であってもプロテオグリカンを産生することがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験で、骨棘軟骨由来の細切軟骨により、ゲル内に軟骨細胞が遊走しプロテオグリカンを産生することがわかった。骨棘軟骨は、広範囲軟骨欠損に対する軟骨移植の有用な細胞源であることがわかったので、より良い修復組織を目指すため、次年度ではまず、骨棘軟骨と関節軟骨の遺伝子発現の差を調べる。軟骨からRNAを抽出し、microRNAを含めたRNAシークエンスを行い網羅的に骨棘軟骨と関節軟骨の遺伝子発現の差を調べる。特徴的な発現パターンを示すものに関して、PCRにより詳細に発現解析を行う。また、骨棘軟骨細胞にmicroRNA mimicあるいはantisenseをtransfectionし、関節軟骨細胞と同じようにプロテオグリカンを産生する細胞になるか検討する。骨棘の由来は、骨膜あるいは滑膜といわれており、skeletal stem cellといわれる幹細胞が含まれる可能性があるため、免疫染色によりこの細胞の有無・分布を確認する。また、骨棘は末期OAでみられるため、老化細胞が多く存在する可能性がある。この細胞についても免疫染色を用いてその発現パターンを解析していく。In vitroの実験が終わったら、日本白色家兎の骨軟骨欠損に対し、細切した骨棘軟骨を包埋したアテロコラーゲンゲルを移植して、細切した関節軟骨を包埋した群と比較し、骨軟骨欠損が骨棘軟骨由来の細切軟骨片により良好に修復されるか調べる。また、現在臨床で行われてる培養軟骨細胞移植と同じように関節軟骨から軟骨細胞を単離し、アテロコラーゲンゲルに包埋したものを骨軟骨欠損に移植したモデルとも比較し、骨棘由来の軟骨を用いた軟骨修復法での同等の治療効果が得られることを示す。
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