研究課題/領域番号 |
22K09419
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分56020:整形外科学関連
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
榎本 光裕 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 非常勤講師 (90451971)
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研究分担者 |
辻 邦和 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特任教授 (20323694)
平井 高志 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (40510350)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 神経障害性疼痛 / 後根神経節 / ニューロン / グリア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の学術的な問いは、「神経損傷後に起こる後根神経節(DRG)での神経細胞死と衛星細胞(サテライトグリア:SGC)の関与が疼痛慢性化に寄与するか」である。損傷後、経時的な神経細胞死は過去に報告されているもののSGCとの関与について報告はない。グリアはギャップ結合を介して過剰なグルタミン酸を緩衝し、神経活動を調整しているが、慢性疼痛下でSGCでのギャップ結合の役割は不明である。本研究では神経障害性疼痛モデルを用いてin vitroでDRGニューロン・グリア細胞連関でのギャップ結合発現プロファイルを作成し、慢性疼痛下で一次求心性ニューロンに対する新規治療法の基盤となる研究を行う。
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研究実績の概要 |
前年度は、慢性疼痛下ではCGRPを伝達物質とした小型神経細胞の役割が大きく、腰部DRGのなかでL4DRGの関与が高いことがわかった。本研究で使用している神経障害性疼痛(SNI)モデルではL4DRGを治療標的にする必要がある。 今年度は、野生型マウスを使用してSNIモデルを作製し、損傷3週に患側、健側のL4DRGを単離してRNAを抽出した。コネキシンアイソフォームであるGja1, 3, 4, 5, 8, 10, Gjc1, Gjd2のプライマーを設計してreal-time PCRを実施し、発現量を患健差で比較した。その結果、Gja3, 4, 5の発現変化はなく、Gja1、Gja8、Gjd2は健側よりも低下、Gja10、Gjc1の発現が高いことがわかった。 さらに今年度、Sox10-Venusマウスの腰部DRGからVenus陽性細胞のソーティングに成功した。Sox10-Venusマウスの左後肢に神経障害性疼痛モデルを作製し、損傷後3週でL4DRGを単離して患側と健側にわけ、FACS Verse system (BD)を用いてVenus陽性細胞をソーティングした。Venus陽性細胞を回収し、RNAを抽出することができた。コネキシンアイソフォームの中でGjc1のRNA発現は、健側と比較して患側で約4倍発現が高かった。 ギャップ結合を構成するGjc1はCx45ともいわれ、心筋での発現が高い。最近では、脊髄での発現が報告されている(Lozic M et al., Int J Mol Sci. 2021)が、DRGでの役割は不明である。これら研究結果から神経損傷後、DRGのSGCでギャップ結合の発現過剰が契機となり、小型神経細胞死が誘導されている可能性がある。最終年度、コネキシンアイソフォームが慢性疼痛時の新規標的分子であることを明らかにし、ニューロン、グリア細胞連関を報告する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子改変マウスの飼育、繁殖は安定しており、神経障害性疼痛(SNI)モデルも定期的に実施し、対象サンプルを保存している。SNIモデルマウスの腰部DRGでの神経細胞サブタイプの同定に関しては解析を終了している。DRGサテライトグリア(SGC)の細胞ソーティングは、蛍光ラベルされているSox10-Venus マウスを使用してFACS機器の調整によって確立された。さらに個体数を増やすことで必要なソーティング細胞が得られるようになり、十分量のRNA抽出が可能となった。今回、1分子のみの解析になっているが、そのほかコネキシンアイソフォームに関して解析を進め、SNI慢性期におけるSGCでのコネキシン発現プロファイルの作成の完成を目指している。また、FACSが確立されたことで神経細胞に選択的に蛍光分子が発現するThy1-YFPマウスを準備し、神経細胞でのコネキシン発現プロファイルの作成を準備している。in vitroでのコネキシン発現プロファイルの作成に関しては、培養に必要な細胞数をFACSで獲得するのに調整が必要となっている。モデルマウスの個体数を増やす必要があり、最小限のサンプル数で安定した細胞培養が得られるよう検討している。最終年度に向けて実験手順は大部分確立されているが、in vitroに関しては時間を要している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
実験に使用するSox10-Venus マウスの系統維持を動物実験施設で継続的に実施する。さらに神経細胞に選択的に蛍光分子が発現するThy1-YFPマウスを準備している。 現在、神経損傷後3週でのDRGコネキシンアイソフォームの発現をみているが、より慢性期である損傷後6週のサンプルを回収してコネキシン発現プロファイルの作成を行う。さらに損傷1週後のデータを追加することで神経損傷から慢性期に移行していく過程での発現パターンが明らかになる。発現パターンの解析を進め、標的分子が決定したらウェスタンブロット法を用いてタンパク発現の解析を実施する。組織学的に腰部DRGでのコネキシン発現の局在を明らかにする。最終年度であるためコネキシンを標的にしたSGCの発現制御に取り組んでいく。慢性疼痛時に発現が増強あるいは低下するコネキシンアイソフォームを標的に核酸医薬であるヘテロ核酸を作製して治療効果を検証する。 前年度までの成果については積極的に学会発表を行い、最終年度の成果を併せて学術論文として発表する。
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